さてのぅ、お暇するかぇ…いや、さなえさん?それは、どうかと?

「まぁ、なんにせよじゃ。

 見知らぬ爺である儂にアドバイスしてくれ、有り難いことじゃてな。


 じゃが、儂のような年寄となるとじゃ、お主のような若人わこうどとは目的が違うでな」


そう告げるとの、若僧が不思議そうにのぅ。


「違うって、なにがだよ?

 ゲームで遊ぶのには、違いないだろ?」っと、不思議そうにの。


「違うの」

「?」

「この歳になると体がの、思うように動かんのじゃ。

 目や耳も衰えておるでの、仮想世界で擬似的な健康とはいえ、健常者として動ける…


 これは、儂ら老人にとっては、あこがれじゃてな」

そう告げてやるが…理解できんようじゃったわい。


まぁ、それも仕方あるまいてのぅ。

若い者に年寄の気持ちは理解できまいて。


逆に理解できたら、それはそれで、どうかとの。


「そ、そうなんだ…さすがに俺には理解できねぇや」

顔が引き攣っておるが、まぁ、そうじゃろな。


その後はゲーム機とゲームソフトを購入じゃ。

装着式とやらのゲーム機のセットアップとじゃ、ゲームソフトのインストールを店で済ませるぞぃ。


諸々の手続きはの、さなえさんが代行してくれたわい。

まぁ、そのような雑事を老人の代わりに行うためにの、老人1人に1アンドロイドが支給されておるのじゃよ。


老人介護施設へ入居している者の特権だったのじゃがな、昨今では一般家庭へもAIアンドロイドが普及しとるようじゃがの。


さて、セットアップおよびソフトのインストールが終わったゲーム機を装着してもろぅてからの、店を辞すことにな。


「色々と、ありがとうのぅ。

 お主もアドバイスしてくれてありがとう」


儂が告げるとの、店員さんたちはニコヤカにな。

「いえいえ、トンでもない。

 こちらこそ、お買い上げありがとうございました」っと、主任店員さんが。


「いえ、お買い上げいただきありがとうございます!

 けど…格安でのご購入…羨ましいっす!」

うん、気持ちは分からんでもないが…主任店員さんに叩かれておるの。


若僧の方はの、照れくさそうに、そっぽを向いてのぅ。

「いや…あんまりアドバイスになってなかったようで、ごめん。

 まぁ、可能性は低いけどさ、ゲーム内で会ったら一緒に遊ぼうぜ」っとの。


まぁ…出会うことはあるまいのぅ。


説明されたセカン…いや、リトルエデンなのじゃがな、そうとう頭がおかしいっといえる規模でのぅ…


なにせ宇宙…銀河を1つほど、仮想世界へ創り出しておるそうな。

なにが言いたいかというとじゃな、生物が住める惑星が複数存在するということじゃて。


つまりのぅ、ログイン先がじゃ、どの惑星になるか分からんっということじゃて。


1つの惑星内でもじゃ、ログインした場所によっては出会えんであろうな。

で、あるのにじゃ、別惑星へログインした者と出会うことはできまいて。


ましてや1秒につき1日が過ぎる仮想世界なのじゃぞ、同じ場所へログインしてもじゃ、出会うことが叶うとはのぅ…


「そうじゃな、出会えたらの」

そう告げてからの、テタラを後にのぅ。


のぅ、さなえさんや。

なんで、すでに抱えとるのじゃ。


格好つかんのじゃが?


「ご購入に時間が掛かりましたので、夕食の時間が迫っております。

 マザーからの指示で、即座に移動することになりました」っとの。


まぁ、施設の統括サーバたるマザーの指示なれば、仕方あるまいの。


店内の者達にのぅ、苦笑で見送られながらじゃ、颯爽とテタラからの。


むろん、颯爽と去るのは、言わんでも分かると思うが…さなえさんじゃぞぇ。


儂を抱え、儂の購入したゲームの備品が入った袋を持ってな、颯爽っと素早く歩く姿はシュールじゃ。


うん、道行く人々がの、唖然となって見ておるの。

人気者になった気分じゃてな、照れますのぅ。

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