おぉっ!そがぁに安いのかぇ、これは買い…なぬ、欠点とな?

聞く限りではじゃ、儂にとってセカンとやらは良いゲームと思われるのぅ。

じゃがの。


「じゃが…お高いんじゃろ?」っと思わずのぅ。


「大丈夫です!

 このゲームは、お手頃価格でのご提供となりますからっ!

 本来は1万8千円のところ、プレイヤー数皆無である150歳台のご高齢価格として、メーカーより半額、さらに、さらにですよっ!テタラ会員割り引き、および、行政補助金を合わせまして8千円、8千円でのご提供となります!


 またっ!月額使用料は只、一切かかりません!

 元々、被験者割り引きされており安価ですが、山本さまのご年齢を鑑み、希有な被験者であるため使用料は不要とのことです。


 また通信料も、ゲーム専用回線を使用されますと、月額固定で千円となりそうです!


 っと言うか…羨ま過ぎるのですがっ!」

店員さんがの、最後にシャウトしてなぁ、主任店員さんに叩かれておったわぇ。


「おおぅ、そ、そうかぇ。

 ならば買おうかのぅ」ったらの、店内に居た客がな。


「爺さん、買うのは良いけどさ、このゲームって欠点あるから」っと、告げてきたのじゃ。


「欠点とな?」

思わず首を傾げると…


「人と一緒に遊ぶには、壊滅的に合わない独り用ゲームってことと、ゲーム内で親しくなったNPCとの決別が避けられないことさ」


はて、どういうことじゃろか?


最初の『人と一緒に遊ぶには合わない』っというのは、なんとなく分かるんじゃがの。


なにせ1秒で1日過ぎる仮想世界じゃて、待ち合わせなんぞできぬであろうてな。


じゃが…『親しいNPCとの決別が避けられない』っとは、どがぁなことなんじゃろかい?


「ふむ、現実との時差にて、複数人と共にプレイするのは厳しいとしてじゃ、NPCとの決別っとは、なんじゃえ?」

理解できんのじゃが?


「このゲームってさ、最大で6時間しかログインできないんだけどさ、その許可も年齢での規制があるんだよ。

 実年齢から5年までがログイン期限なんだ。

 二十歳はたち未満はプレイ許可されてないんだけど、ログインしたら全員が15歳スタートさ。


 俺は21の大学生なんだけど、ログインしたら11年後には強制ログアウトさせられてさ…恋人できてたのに強制別離だったよ…


 爺さんは60年プレイできるけど、期限過ぎたら親しくなったヤツがいてもさ、強制的に別れさせられるかんな」


理屈では、そうなのじゃろうが…

「その点は大丈夫じゃろうの」

「なんでだよ?」

「人との別離や死別なんぞ、飽きるほど経験しておるでな。

 その程度の覚悟など、すでにできておるわぇ」


悲しいことじゃが…これが現実なのじゃよ。


「そ、そうか…

 まぁ爺さんには関係ないか…

 しかしさ、二十歳未満はプレイできないってことで、未成年者からクレームが結構あるんだよなぁ~

 俺も高校の頃にクレームのメールしたからさ」

などと言っておるの。

考えが足りぬ若僧じゃてな。


「それは仕方あるまいの」ったらの、

「なんでさ?」っとの。


「若いころの5年は貴重じゃぞ。

 ましてや、ログイン時の年齢が15歳っと決まっておるのじゃからのぅ、強制的に年齢を引き上げられる場合もあるじゃろうて。


 例えば8才の子供がゲーム内にて5年過ごしたらじゃ、15歳からのログインにて、ログアウトしたら精神年齢が二十歳はたちになっとるわけじゃ。


 あどけない子供がじゃぞ。

 親からしたら、堪ったものではあるまいの」


若僧が少し考えた後で頷く。

そんな若僧へ告げてやることにの。


「お主とてそうじゃ。

 中年や老年を経験してしもうたらの、もはや若い自分には戻れまいて。


 ゆえに実年齢から5年後までとしておるのじゃろうが…儂が思うにな、プレイは実年齢までにしておいた方がよかろうて。


 その年で精神年齢を老けさせとうはなかろ?」


そこまでは考えが至っておらなんだのじゃろうな、顔が引き攣っておるわぇ。

まぁ、今日の話での、多少は懲りるであろうよ。

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