31:甦る水彩画

 ……芹沢恵美えみはおそらく、誰の目にも有能な女性として映っていたことだろう。

 藍ヶ崎市では最も有名なリゾート開発運営企業に勤務し、施設やイベントの企画プロデュース業務にたずさわっていた。大柿谷おおがきだにや新委住などの地域を中心として、複合型娯楽施設、高級ホテル、ゴルフ場、スキー場などを忙しく駆け回り、手腕を発揮していたらしい。


 夫の和馬かずまは、いわゆる職場の同僚だ。営業部企画課では、彼もまた仕事を高く評価されている人物で、過去に市外の取引先をいくつも新規開拓した実績の持ち主だった。

 二人が婚姻関係に至った過程は、あまり情熱的なものだったとは言えない。恵美は恋愛よりも仕事に対する野心が強く、和馬は万事に対して冷めているところがあった。

 双方に共通していたのは、いずれも実際的で合理的、または効率的で、現実に即した妥当性が高い物事を好む、という部分だ。


 ゆえに恵美が和馬を配偶者として選んだ主な理由は、彼が「将来のパートナーとして、自分と能力的に釣り合いが取れていそうだから」だったし、和馬が恵美を選んだ理由も然程違わない。

 和馬が相当な美男子であることなどは、恵美にとって付録程度の要素でしかなかった――

 たとえそれによって他の女子社員から、どれだけ嫉妬と羨望の眼差しを向けられたとしても。

 何より恵美にとっての和馬は、職場における同僚で、業務成績で比較される競争相手なのだ。


 また結婚生活全般においても、恵美と和馬の関係性は常にどこか散文的だった。適当な表現かどうかはさておき、ある面ではビジネスライクとさえ言えたかもしれない。



 そうした状況に変化が訪れたのは、息子の颯馬が生まれて以後だ。

 恵美は仕事と子育てに追われ続け、次第にフラストレーションを抱えるようになってしまう。

 夫の和馬は、あまり育児に積極的ではなく、家庭より仕事を優先する姿勢も変わらなかった。


 一方、職場の環境は決して悪くなく、育児休業の取得などにも肯定的だった。

 女性社員にとっては、子供の存在がキャリアの瑕疵にならないような配慮も行き届いており、妊娠や出産にも障害がないはずだった。

 だから恵美も充分な検討の上で、一子をもうけることにしたのだ。


 とはいえ現実にはやはり、家庭を第一に考えるより、他を顧慮こりょしない方が、仕事で実績を積む機会は多くなる。いっそうのハイキャリアを目指す際、単に育休取得の問題に止まらず、子育ては夫婦いずれかにとって、仕事の負担になることを避けるのが難しい。

 少なくとも芹沢夫妻はそうだったし、その後の恵美はままならぬ立場に懊悩おうのうしていく。

 夫の和馬とは、仕事で対等に競っていたはずだが、徐々に水をあけられるようになった。


 ――なぜ子供を持ったからと言って、女の自分が夫に仕事で譲歩や妥協せねばならないのか。


 恵美は、仕事に強い熱意を持つがゆえ、忸怩じくじたる思いをつのらせていく。



 そうする間にも当然、息子の颯馬は年々少しずつ成長していったのだが――

 恵美の人生における関心事は、どうあっても「自己実現」の欲求が中心だった。


 あるいは颯馬が手の掛からない、万事に出来の良い子供だったことも、かえって恵美の興味を薄める効果につながっていたのかもしれない。

 颯馬はたぶん、母親から容易に自分へ向けられない愛情を獲得するため、幼少期から何事にも努力を惜しまない性分を身に付けていた。恵美の関心を引こうと、懸命だったのだろう。

 だが皮肉にも、颯馬が素直で優秀であるほど、恵美は自分の仕事へ意識を傾注していく……。


 こうした芹沢親子のすれ違いは、どこまでも解消されないまま、実に一四年余り続いた。

 和馬は尚も家族の問題に無関心で、恵美も相変わらず理想に届かない状況をなげいていた。

 さらにもうこの頃になると、颯馬は親子関係に愛憎入り混じった感情を抱きつつあった。



 かくいう日々を過ごす中で、芹沢夫妻と颯馬はやがて、藍ヶ崎市新委住のマンション「ブルーハイツ新委住」へ転居し、そこでまた空疎な生活を送ることになった。息子の成長に伴い、それまで暮らしていた部屋が手狭となったせいだ。

 尚、市内にはもっと夫妻の収入に見合っていて、高級なマンションもいくつか存在している。

 にもかかわらず、比較的平凡な物件を選択して住んでいたのは、勤務先の事業所が近く、通勤時間や交通費に無駄なコストを消費せずに済む場所だからだった。



 そうして、ある日のこと。

 やがて芹沢家の親子三人を、殊更ことさら心理的に分断させてしまう出来事が生じた。

 端緒となったのは、恵美が久し振りに室内の収納を整理しはじめたことだった。


「ちょっと颯馬、これは何? きっとあなたがここへ入れたものでしょう」


 恵美はリビングで声を張り上げ、一人息子を糾弾した。

 その手には、片面が絵の具で彩色された画用紙を持っている。

 隣室で収納を整理していたところ、奥から出てきたものだった。


「別に必要なものじゃないのよね? ずっと放置されていたんだから。それにしてもいったい、いつから収納にしまい込んでいたのかしら」


「……三年前だよ。小学生の頃、学校で図工の時間に描いた絵なんだ」


 恵美が問いただすと、颯馬はおずおずと答えた。


「その当時、担任の先生から『描き上げることができたら、お家の人に見せてみましょう』って言われて。それでお母さんに渡したんだけど、忙しいからあとでって断られたんだよ。それで、仕方なく――」


「仕方なく、隣の部屋の収納に入れておいたの?」


 あとを引き取り、恵美は苛立いらだちつつも再度たずねる。

 颯馬は物言いたげな表情で、しかし黙って首肯した。

 それを見て、恵美は溜め息をかずにいられない。


 担任教師は良かれと思って指導しているのだろうが、いちいち余計なことを言ってくれるな、と思った。

 恵美は昔から、自分には絵心がない、と考えている。息子の颯馬も、面立ちこそ父親似だが、そうした感性は自分に似ているようで、過去に美術的な適性を感じた試しはない。

 そういう子供が描いた絵について、同様に画才のない大人が何の感想を言えるだろう。

 ただでさえ仕事の合間に子育てせねばならず、些末事さまつじにかかずらうと気疲れするのに……。


 恵美はうんざりして、気怠そうにかぶりを振ってみせた。


「もうどうでもいいから、処分しておきなさい。その、ジャングルかどこかで動物が躍っている絵か何か、よくわからないけれど……」


「ジャングルじゃないよ。この部屋でお父さんとお母さんと、僕が一緒に食事している絵だよ」


「ああ、だからどうでもいいって言っているでしょう。とにかく、要らないなら捨てておいて」


 颯馬は不満そうな調子で、恵美の絵に対する誤解を訂正した。

 しかし直後にあしらわれると、憮然ぶぜんとした様子で絵を受け取る。

 それから母親に背を向け、自分の部屋へ引っ込んでしまった。



 恵美が身の回りの出来事に微妙な違和感を抱きはじめたのは、それ以後のことだ。


 三ヶ月近く過ぎた頃には、子供部屋へ偶然入った際、机の上に画用紙を発見した。

 颯馬に先日、処分するように言い付けたはずの絵だ。表面に絵の具で描かれた事物は、改めて見ても家族の団欒だんらんとは思えないが、間違いない。


 恵美は、再び颯馬に詰め寄り、なぜまだ処分していないのかと問うた。

 それに対する一人息子の返答は、およそ思いも寄らないものだった。


「何度も捨てたよ。でも捨てたり破いたりしても、毎回元通りになって戻ってくるんだ」


 理解を超えた言葉を聞かされ、恵美は一瞬戸惑い、次いで憤慨ふんがいした。

 きっと颯馬は、自分の言い付けをすぐに実行せず、忘れていたか、無視していたに違いない。それを誤魔化ごまかそうとして、わけのわからないことを主張し、母親をあざむこうとしている。

 恵美は、息子の言葉をそう受け取り、厳しくしかった。その上で、言われたらすぐ、嘘をいたり、はぐらそうとしたりせずに捨ててしまいなさい、と今一度命令したのだった。


 颯馬は不平そうな顔で、何事か言いたげな素振りをのぞかせた。

 しかし結局、そのまま口をつぐんで、画用紙を大人しく受け取る。


 ……そうして突然、意表をく行動に出た。

 画用紙の端を両手でつかむと、それを四つに引き裂いてしまったのだ。

 呆気あっけに取られる恵美の前で、颯馬はそれを粗雑にごみ箱へ捨てた。


「……これでいいんでしょう、お母さん?」


 それだけ言い残して、この日もリビングを出ていってしまった。

 自分の部屋に入る際、やや乱暴にドアを閉める音が周囲の空気を震わせた。

 恵美は、息子の背中に声を掛けることもせず、見送るだけしかできなかった。



 ……それから、さらに半月ほど過ぎた頃。

 恵美は、酷く不可思議な現象と遭遇する。


 またしても颯馬の部屋へ踏み入る機会があり、やはり机の上に画用紙を発見したのだ。

 恵美は蒼褪あおざめ、狼狽ろうばいした。ほぼ何もかもが、先日目の当たりにしたのと同じ光景だった。

 画用紙の表面には絵の具で、颯馬が「家族の団欒」だと言っていた絵が描かれている……

 あのとき、たしかに四つに引き裂かれ、ごみ箱へ捨てられたのと同じものに見えた。


 それがなぜか、


 明らかにおかしい。不可解だし、常識的にあり得ない出来事だ。

 だが恵美は、短絡的にそれを超常現象のたぐいとは思わなかった。


 冷静になると、以前に息子が破いた絵は「実物に似せて作られた模造品だったのではないか」と思われた。恵美から処分を指示された本物の絵は、別に保管しておいたのかもしれない。

 どうしてそのような詭計きけいはかったのか、動機はまるで想像も付かないが――

 少なくとも空想的な理由より、恵美にとっては納得感のある背景だった。



 颯馬が中学校から帰宅すると、この日も恵美は水彩画に関して詰問した。

 すでに処分したはずの絵が今も子供部屋にあるのは、どういうことなのか、と。

 それに対する息子の返答は、感情の機微が聞き取れない声音でされた。


「このあいだも言ったでしょう。捨てたり破いたりしても、元通りになって戻ってくるって」


 このとき恵美は、密かに背筋に怖気が走るのを感じた。

 颯馬の言葉は常識外れで、到底信じがたく、自分をだますための虚言としか思えない。

 一方で心の片隅には、ほんのかすかに「事実かもしれない」と迷う気持ちがあった。


 しかし恵美は結局、常識の信奉者であることから逃れられなかった。

 だから颯馬には、そう何度も嘘をくものじゃありません、と訓戒した。

 それから水彩画は、再び本人の手で破らせ、ごみ箱へ捨てさせた。

 今回はそれに加えて、子供部屋全体を、机の抽斗ひきだしも、書棚の裏も、収納の奥も、ベッドの下も……

 とにかく隅々までしっかりあらため、どこにも水彩画を模造なり複製なりした品が存在していないことを確認した。


 ただし恵美はこれ以降、決して安易に颯馬の部屋に立ち入ろうとしなかった。

 あれほど強く息子に命じ、目の前で水彩画を廃棄させたのに、妙に嫌な予感がしたからだ。

 自分が颯馬の部屋を覗き見ると、ひょっとしてまた同じような光景と出くわすのではないか。

 破り捨てたはずの水彩画が、机の上に復元されて置かれているのではないか? 


 恵美は、非常識なものを否定しながら、そういった怪奇現象の存在を恐れていた。

 それで故意に目を逸らし続けることで、不可解な事物はやり過ごすことにしたのだ。

 この対応は実のところ、恵美の不安を和らげるにはある程度有効だった。



 とはいえ、仮初めの平穏は長続きしない。

 水彩画を処分した二度目の日から、尚も一ヶ月近く経過した頃のこと。

 恵美は、これまで以上に戦慄すべき出来事と、遭遇を強いられた。


 リビングでローテーブルの上を見ると、そこにあの水彩画が置かれていたのだ。


 もちろん水彩画には、破損した箇所などない。

 下地になっている画用紙は、継ぎ目のない一枚の紙で、修復した跡はおろか、ひとつの折り目すら見当たらない。表面に塗られた絵の具も、そこに描かれた絵も、明らかに過去のままだ。

 見紛みまがうことなく、颯馬が小学生の頃に描いたという水彩画だった。



 恵美は思わず息をみ、得体の知れない恐怖に駆られた。

 水彩画を荒々しく手に取ると、そのまま猛然と八つ裂きにしてしまう。

 息子を呼び付けて、絵を描いた当人に捨てさせる余裕はなかった。


 それから、キッチンでボウルを取り出し、水を溜めてシンクへ置く。

 破いた画用紙をその上で、ひとつずつライターで燃やしていった。

 黒い灰になっていく紙片は、ボウルの水へ沈めて、換気扇を回す。

 しばらく待ってから、ボウルの中身を空け、底に残った燃えかすごと流した。

 最後に排水口の水切りネットを回収し、ビニール袋に詰めて廃棄する。


 片付けを済ませたとき、恵美は緩く肩を上下させ、半ば息を切らしていた。


 ――間違いなくやった。自分の手で、徹底的に処分してやった。


 これで確実なはずだ。どういう手品で何度も同じ絵が元通りになっていたのかは、まるで想像も付かなかったけれども、今回は恵美自身が廃棄したのだ。この場に颯馬は居合わせておらず、処分の際に手出しする余地などなかった。もう絶対に不可解な現象は起こらない。


 恵美は、己の判断を確信していたのだが、それも長くは続かなかった。



 すぐ翌日の深夜。

 就寝前に寝室で、恵美が自分のベッドの上を見ると、そこにあったのだ――

 またしても元通りの状態で、昨日灰にしたばかりだったはずの水彩画が! 


 恵美は背筋に悪寒を覚え、声にならない悲鳴を発した。

 いったん寝室を飛び出し、リビングで収納の抽斗から、カッターを取り出す。

 それを持って引き返すと、水彩画を刃で繰り返し引き裂き、細切れにした。


 と、必死に水彩画を処分しようとしていたところへ、夫の和馬が姿を現わす。

 すでに寝間着に着替えており、就寝前の身支度は済ませているようだった。


「いったいどうしたんだ恵美、こんな夜更けに騒いだりして……」


 和馬は、自分の妻の有様を見て、怪訝けげんそうに眉をひそめた。

 振り返った恵美の手には、いまだ刃をき出しにしたカッターが握られている。長い髪を振り乱して、目を血走らせ、荒い呼気をき続けていた。しかも目の前のベッドの上には、たった今切りきざんだ紙屑が散乱している。客観視すれば、和馬ならずとも異様な印象を抱いただろう、


 恵美にも当然、自分の姿がどう見えているかは察しが付いていた。


 それゆえ慌てて、夜中に画用紙を切り裂いていた経緯に関し、平静を装いつつ説明した。

 もっとも、どれだけ事実に即して伝えてみたところで、自分の体験が「胡散臭い怪談」にしかならないことは、恵美にも話していてよくわかった。


 ひとしきり妻の話に耳を傾けたあと、和馬は冷ややかな目で彼女を見て、失笑を漏らした。


「なんだくだらない。そんな作り話なんかしていないで、少し静かにしろよ。君だって、明日も仕事で早いんだろう。僕は会議の準備があるんだ、大人しく寝かせてくれ」


 恵美は一瞬、食い下がって続けようとしたが、すぐ無駄な行為だと気付いて止めた。

 これまで颯馬が「何度捨てたり破いたりしても、元通りになって戻ってくる」とタペストリーのことを説明しても、他ならぬ彼女自身が取り合おうとしてこなかった。

 そうして恵美が子供と向き合わずにいたとき、和馬もそれを傍観ぼうかんしているだけだった。


 良くも悪くも、和馬は恵美と価値観が近しい。非現実的な事象を確たる根拠もなく受け入れることは絶対にないだろう。だから合理的な配偶者関係を維持する上で、夫の思考法はおおむね好都合だったものの、怪奇現象に悩まされている場合は頼りになると思えなかった。



 こうした事情が相俟あいまって、恵美の心は日に日に追い詰められていった。

 颯馬が語った通り、「甦る水彩画」は何度捨てても破いても、必ず元通りになって戻ってきたせいだ。その都度できる限りの手段で廃棄を試みたが、いつも翌日になれば大抵、恵美の視界に入る場所にあった。もちろん前日にどれほど切り刻まれていたとしても、完全に元の状態で。


 ときには自分で処分することさえ辛くなり、改めて颯馬に廃棄させた日もあった。

 ところがこの頃になると、以前までのように息子の手で捨てさせてみても、復元した水彩画は子供部屋ではなく、リビングや寝室など、恵美の目に触れる場所で出現するようになっていた。


 かくして、尚も数週間が経過するうち――

 恵美はあるとき、ついに決定的な恐怖に襲われた。


 その日の夜も恵美はまた、寝室でベッドの上に水彩画を発見し、即座に処分を試みた。

 四角い画用紙の上辺を両手で持ち、中央部から左右へ真っ二つに引き裂こうとする。

 すると突然、どこからか不可解な声音が聞こえてきた。


(――ねぇ、見て)


 恵美は、水彩画を破ろうとする手を止め、反射的に周囲を見回した。

 しかし寝室には、自分の他に誰もいない。和馬は今夜仕事が遅くなると言っていたし、颯馬は自室で勉強しているから当たり前だ。

 だがそれなら、今自分に語り掛けてきたのは、誰なのか? 


(ねぇ見て。お願い、もっとよく見て)



 懇願こんがんするような口調だが、冷たく、心に刃を突き立ててくるような声音。

 それが再度、聞こえてきた。……いや、本当に「聞こえてきた」と言えるだろうか。

 そうした訴えが不意に脳裏に浮かび、想念として認識されるに至った気がする。


(ねぇ見て。ねぇ見て。お願い見て。もっとよく見て)


 声音はますます、頭の中で強く響く。


 恵美は、恐れおののき、殊更両手にちからを込めた。

 自分の精神に訴えようとしてくるのは、水彩画の呪力か何かではないか――

 そうした着想が閃き、今回は尚手早く絵を破り捨てねばならない、と感じていた。

 非科学的な事物を否定する理性より、すでに彼女の心を恐慌が支配していた。



 だが急にどういうわけか、手にちからが入らなくなっている。

 画用紙を破こうにも破けず、恵美は愕然とせずにいられなかった。

 自分の手で持った絵を、間近でそのまま眺めることしかできない。

 汚い筆遣いで塗られ、題材の表現にも拙さばかりが目立つ一枚だ。


 それが今なぜか、強烈な存在感を放射しつつ、恵美の意識を圧迫している。


(ねぇ見て。ねぇ見て。お願い。見て見て見て見て見て見て見見見見――……)



 ……この直後、芹沢恵美は目の前が暗闇に包まれ、卒倒した。

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