22:スーパーマーケット「新藍ストア」

 六月末の金曜日、結菜は夕方に一人でふらりと外出した。

 スーパーマーケット「新藍しんあいストア」で、食料品の類を購入するためだった。

 同店はマンション「ブルーハイツ新委住」から、徒歩五分の距離にある。


 結菜にとって一番のお目当ては、安売りの冷凍食品だった。

 入店するなり、買い物カゴを手に取ると、青果や鮮魚の売り場は素通りする。精肉コーナーと隣接したショーケースへ駆け寄り、陳列されたパッケージを端から物色していった。

 唐揚げ、照り焼きチキン、クリームコロッケ、白身魚のフライ、マカロニグラタン……。

 内容量と値段を確認しつつ、目ぼしいものを次々に確保していく。


 結菜は二日に一度以上、こうした品々に食事を頼っていた。

 ゆえに冷凍庫の中には、充分な冷凍食品の備蓄が欠かせない。さらに常温保存が可能なレトルトやインスタントの食品も揃えれば、隙のない手抜き食生活の布陣が整う。

 年下なのに保護者オカン気質な颯馬は無論、そうした状況に常々頭を抱えているのだが。



 と、即席麺の売り場へ移動し、袋入りラーメンを手に取ったところで。

 結菜は先日、颯馬と自分の部屋で交わした会話をふと思い出した。


 そうだ、調味料を買い足しておかねばならない。

 具体的には、ポン酢とマヨネーズ、あとバター。

 結菜自身は、冷凍餃子ギョーザを食べる際にポン酢を使用するぐらいだが……

 颯馬が彼女の部屋で料理する場合には、しばしば必要な品だろう。



 売り場を移動し、調味料が並ぶ棚から、ポン酢とマヨネーズを買い物カゴへ放り込む。

 これであとはバターだけ――と思って周囲を見回してから、結菜は今更のように気付いた。

 バターは食品の分類上、調味料ではない。正しくは、乳製品なのだ。

 料理で味付けに使うことも多いから、つい一緒くたに考えてしまった。


 あわてて定番商品の棚から離れ、乳製品のコーナーへ向かう。

 バターが置いてある場所は、冷凍食品のショーケースに近く、今来た通路を多少引き返さねばならなかった。


 目指す棚の前まで来ると、店の壁沿いに並ぶ商品を順にあらためる。

 牛乳や乳酸菌飲料、ヨーグルトの横へ視線をすべらせていき――


 ――あった、バターの箱だ。


 結菜は、探していた品を見付けて、パッケージを手に取った。



 ……そのとき、結菜は不意にこちらへ近付く人の気配を感じた。

 隣を横目で見ると、乳製品の商品棚に手を伸ばす女性がいる。


 ぱっと見た雰囲気では、年齢的には結菜と然程さほど違わないように感じられた。

 ただし相手の方が、明らかに数段は美人だ。頭髪は明るい茶色のボブカットで、目鼻が綺麗に整っている。薄手のトップスとフレアスカートのよそおいが華やかで、メイクにも隙はない。


 ――近所のスーパーへ買い物に来る服装にしては、ちょっと気合が入りすぎじゃないかしら? 


 結菜がそうした印象を抱いたのは、決して皮肉でもなければ、美女に対して反発心が芽生えたせいでもない。あくまで率直な感想だった。

 ちなみに今の結菜は適当な普段着の上から、無造作にアウターを羽織っただけの格好だ。


 華やかな服装の美女は、目の前の商品棚からチーズのパッケージを手に取った。

 特殊な包装で、この店で扱っている品の中では、やや値が張るもののはずだった。

 たしか、高級モッツァレラではなかっただろうか。ワインのつまみに合うチーズだ。

 もっとも結菜は同じ商品を、実際に買って食べてみたことなどないが。



 そのまま妙に注意を引かれ、結菜は美女の挙措を目で追ってしまう。

 ついつい呆けていたら、背後から聞き覚えのある声音が聞こえてきた。


「――おや、もしかして天城さんじゃありませんか?」


 名前を呼ばれて、反射的に振り返ってみる。

 そこには、メガネを掛けた長身の男性が立っていた――

 飛上孝晴だ。落ち着いた雰囲気の外出着姿だった。

 買い物カゴをカートに乗せて、後ろから押している。


 飛上は、結菜の顔を見て取ると、にこやかに語り掛けてきた。


「ああ、やっぱりそうだ。奇遇ですね、天城さんもお買い物ですか」


 結菜は思わず「えっ、あ、はい……」と、たどたどしく返事した。

 先日同様、飛上との遭遇は、やけに唐突で驚かされてしまう。


「あの、飛上さんも何かご入り用でここに?」


「ええ、はい。実は今日、恋人が僕の部屋に来ているんです」


 結菜がたずねると、飛上は少しはにかんで言った。


「それで、二人で晩に食べるものを買い出しに……」


 飛上は事情を説明しながら、結菜のすぐかたわらへ視線を向ける。

 釣られてそちらを見れば、あの華やかな美女が佇立ちょりつしていた。

 モッツァレラのパッケージを手に持ったまま、笑顔を浮かべている。

 それでようやく、この美女が飛上の恋人なのだと、結菜は理解した。



「ええと、こちらは同じマンションの一二階に住んでいる天城さんだよ


 飛上は、双方のあいだに立ち、恋人に結菜を紹介する。

 次いで結菜の方に対しても、恋人の名前を伝えてきた。


「それから、この子は以前から私と交際してくれている、佐渡さわたりまどかです」


「初めまして、佐渡まどかです。孝晴さんがお世話になっております」


 飛上の恋人――

 佐渡まどかは、笑みを絶やさず挨拶を寄越よこしてくる。

 いかにも愛想の良い、完璧な外面だ。声音も甘い。


「こちらこそ、初めまして……。日頃同じマンションでお世話になっている、天城結菜です」


 結菜もあわてて会釈し、下手な挨拶を返した。

 その際、所持している買い物カゴを、後ろ手に持ち直し、相手の視界から逃がす。

 冷凍やレトルト、インスタントの食品ばかり買い込んでいるのを、面識を得た相手に見られるのが少し気恥ずかしかったからだ。



 しかし佐渡には、結菜が体裁を取りつくろうのを、あえて気に留める様子はなかった。

 相手の食生活に対する興味はないらしく、あくまで自分に関係した話題を続ける。


「もしかしたら、今後はわたしもお世話になるかもしれませんし、よろしくお願いしますね」


 その言葉にきょかれて、結菜は思わず瞳を二度またたかせた。

 佐渡の意図を把握し損ね、返事に詰まって身を硬くしてしまう。

 そこへ飛上が横から、助けを入れるように付け足した。


「まどかとはそのうち、私の部屋で一緒に暮らせないかと相談しているところなんです。だから仮に実現したら、この子も『ブルーハイツ新委住』の入居者になるので」


「……ああ、そういうことでしたか」


 結菜は得心して、ちいさくうなずいた。


 恋人同士の二人が、飛上の部屋で一緒に生活をはじめる――

 つまり、遠からず同棲しようと考えている、ということだろう。


 考えてみれば、今日は金曜日。

 明日は当然土曜日なので、週休二日制の仕事なら休日だ。

 職業が高校教師の飛上には、おそらく出勤する予定がない。

 そうして今夜は交際相手と過ごす……というか、二人で翌朝を迎えるに違いなかった。

 佐渡まどかは、わば「同棲の予行練習」を兼ねて、飛上の部屋を訪れているのだろう。


 男女の機微にうとい結菜であるが、さすがにそれぐらいは察しが付く。

 その代わり下世話な想像力を刺激され、急に顔が熱くなってきたが。


「まだまだ二人で暮らすことに関しては計画中なので、本当に実現するかわかりませんけどね」


 結菜の反応に気付いたかどうか定かではないが、佐渡は苦笑交じりに言った。


「ただ今夜はそのための話し合いも兼ねて、孝晴さんのところへお邪魔しているんです。明日はお休みですし、じっくり意見を交換するつもりで」


 おおむね憶測には、誤解がないらしい。佐渡の言葉で、ほぼ裏が取れた格好になった。

 結菜としては最早、なるほどそうですか……と、曖昧あいまいな笑みで応じておくしかない。



 一方で佐渡は、会話を広げようとしてか、邪気のない口調で問い掛けてくる。


「ところで、天城さんも明日はお休みですか?」


「あ、いえ。私は明日も仕事があるので……」


 結菜は答えを返しながら、取り掛かりはじめたばかりの商業原稿について考えていた。

 〆切まで余裕はあるものの、今夜のうちに三ページ目の下描きを済ませておきたい。

 そのためには夕食前に面倒なコマをひとつ、描き上げてしまわねばならないのだった……

 と、改めて思い出し、気忙しさでそわそわしてきた。

 他に売り込み用の漫画も描かねばならないし、今週末もやることが多い。


 佐渡は「そうですか、お忙しいんですね」と、少し気の毒そうに言った。

 そこへ飛上がかたわらから声を掛けてきて、やり取りを切り上げようとする。


「なあまどか、あまり天城さんをお引止めしていては悪いだろう。それにここの売り場で長居し続けていると、他のお客さんにも迷惑だと思うし」


 恋人から指摘されると、佐渡は幾分ばつが悪そうにうなずいた。

 結菜としても自分のことはともかく、このまま乳製品コーナーでたむろし続けているのは、体面が良くない。

 商品棚の前を塞いでしまっているので、無関係な来店客には買い物の邪魔になるだろう。

 佐渡は、やだわたしったら、などと言って、失態を誤魔化ごまかすように笑う。


「それじゃ私たちはこれで失礼します。いずれまた……」


 飛上はそう言って、カートを押しながら乳製品コーナーを離れていく。

 佐渡もこちらへ向かって頭を下げると、交際相手のあとに早足で付いて行った。

 ほどなく二人の姿は、ベーカリーコーナー付近の混雑にまぎれて、見えなくなる。


 それを見届けてから、結菜はちいさく溜め息をき、レジカウンターの方へ歩き出した。




     ○  ○  ○




 七月に入って、週が明けた。


 結菜は相変わらず、うんうんとうなりながら漫画を描き続けている。

「アメジスト」向けの商業原稿は下描きと並行してペン入れを開始し、ポートフォリオ用の作品はキャラ設定画がひと通り用意できるところまで来た。

 作業の合間には無論、今後の活動に備え、オカルト関連の情報取集も続けている。例によってWeb上の動画や記事を探し回る他、都市伝説を収録した書籍にも目を通すようにしていた。


 ……ただいずれにしろ、先週末から自宅にもり続けていたのは、たしかだった。



 結菜の部屋を、世話焼きな隣人が訪ねてきたのは、その日もやはり正午過ぎだ。

 室内へ上がると、いつものようにキッチンに立ち、二人分の昼食を用意しはじめる。

 颯馬は、自宅から下拵したごしらえした食材を持ち込んできた。それを中華鍋で素早くいため、麻婆豆腐マーボーどうふを作ってみせる。立ち昇る香りが、食欲をそそった。


 結菜は作業をいったん中断し、颯馬と差し向かいでテーブルに着席した。

 まだ湯気が立つ豆腐を、レンゲですくって、手元の皿から口の中へと運ぶ。

 味付けもしっかりしていて、申し分なく美味しい。



 食事中には、何気なく世間話がはじまり、このときも飛上のことが話題になった。

 金曜日に「新藍ストア」で出くわし、その際に恋人連れだった状況などを、結菜は取り留めもなく話す。交際相手の佐渡まどかが相当な美人だった点も、付け加えるのを忘れなかった。


「そう言えば僕も昨日、また藍ヶ崎駅前で飛上さんと会ったなあ」


 颯馬は、ひと頻り結菜の話に耳を傾けたあと、思い出したように言った。


「今回も以前と同じ書店で、たまたま買い物の最中に顔を合わせたんだけどね。つくづく生活圏が近くて、行動範囲も共通していますねって、店の中で二人して笑い合ったりしたよ」


 いつの間にか、さらに飛上との親交を深めていたらしい。

 どうやら颯馬と飛上は、わりと互いに気が合うようだった。

 考えてみれば、年齢的な差はあるものの、どちらも知的な文系男子といった雰囲気だ。

 それに颯馬は料理が得意で、飛上は手芸(パッチワークキルト作り)を趣味にしている。

 二人共、いっそ結菜などより、家庭的な部分を持ち合わせているように思う……。



「それから飛上さんとは、結さんのことも話題になったな」


「え、私のことが? いったいなんで?」


 思い掛けない事実を伝えられ、結菜は幾分うろたえた。

 レンゲを動かす手を止め、瞳を二、三度と、またたかせる。


「結さん、たった今『飛上さんと金曜日にスーパーで会った』って言ったじゃないか。そのせいだよ。このマンションで僕と結さんが同じ階の隣室同士なのは、飛上さんも知っているからね」


 颯馬は、人の悪い笑みを浮かべて続けた。


「ところでスーパーの売り場じゃ、飛上さんから次の日の予定をいたそうじゃないか。それで結さん、土曜日にも仕事があるって答えたそうだね?」


「……それはまあ、たしかにそんなやり取りをしたような気もするけど」


「飛上さん、それを聞いてから、結さんがどんな仕事をしているのかが気になっていたらしい。火曜日には、夜にごみ出しするところで出くわしたこともあって、何となく就業時間が不規則な印象を持ったんだろうね。何か変わった仕事をしているのかな、って」


「あ、嘘、ちょっと待って。それで颯くん、なんて答えたの?」


「もちろん『実は結さん、漫画家なんです』って、しっかり教えてあげたよ」


 嫌な予感を覚えて訊くと、颯馬はなぜだか得意気に答える。

 結菜は、思わず目を見開き、わずかに頬が熱くなるのを感じた。

 羞恥心しゅうちしんを刺激され、うっすら額に汗がにじむ。


「ええ、本当に? その、今まさに崖っぷちで、いつ漫画家じゃなくなってもおかしくない状況なんだけど……」


「メチャクチャ感心していたよ飛上さん。その場で結さんの単行本がどれかも教えてあげたら、面白そうだから読んでみますって言って。パッチワークの本と一緒に買っていってくれたよ」


「買わせちゃったの!? 私のホラー漫画!?」


 思わず椅子から腰を浮かせ、結菜はテーブルの側へ身を乗り出してたずねた。

 颯馬は麻婆豆腐をレンゲで掬いつつ、しれっとした顔で「うん」と言って首肯する。

 ますます結菜は身悶みもだえずにいられなかった。


 ――颯くん以外で、こんな身近な知り合いに漫画を読まれることになるなんて……。


 視線を宙に彷徨さまよわせてから、脱力して再度着席する。

 きっと飛上の中では今頃、平日の夜にごみ捨てする怪しい女の正体が、同じマンションの一室で日々怪異や都市伝説を題材にした漫画を描く怪しい女だったと判明して、情報をアップデートしていることだろう。いやそれ以上に仕事で本名ではなく、「暗黒城結子」という若干痛々しいペンネームを使用していると知られたことが厳しい。

 かつて吉瀬桂太に職業が知られた際も居たたまれない心地になったが、今回はいっそう心理的に辛いものがある。


 次に飛上とごみ捨て場やスーパーで遭遇してしまったら、どういう顔をして挨拶すればいいのだろうか……。



「仕事が漫画家なのって、そんなに恥ずかしがるようなことなのかな」


 結菜がうめいていると、颯馬は食事を続けながら言った。


「修得した技術で漫画原稿を制作し、それを出版社に納品することによって対価を得ているだけじゃないか。今の世の中じゃ個人事業主なんて珍しくもないし」


「それで生活に困らないぐらいに売れていれば、私だってもう少し堂々としていられるかもしれないけどね。現実にはアルバイトと掛け持ちしていないと暮らしていけないっていうか、むしろアルバイト代の方が月々の収入は多い上、父親が家賃払っているマンションで生活している身分だからなあ。あまり堂々とプロの漫画描きですと名乗りにくい現状というか……」


「売れていないことに問題があるんだったら、猶更なおさら身近な人にぐらいは買ってもらわなきゃ。やっぱり人前で恥ずかしがっている場合じゃないよ」


 体裁の悪さに関して率直な心情を吐露とろしてみたものの、重ねてたしなめられてしまう。

 結菜は、ああ言えばこう言う……と、颯馬の言葉に内心反発を覚えながら口を尖らせた。

 売れないホラー漫画家の心理は、わりとセンシティヴなのだ。

 つい目の前に座る青年の顔を、恨めしげにのぞき込みたくなる。



 もっとも颯馬は、結菜の視線を平然と受け流して続けた。

 ホラー漫画に関しては、他にも彼なりの見解があるらしい。


「僕はね、結さんが書くような漫画の価値は、必ずしも売上がすべてじゃない、と思う。そりゃ当然出版社は、娯楽系の商業コンテンツである以上、利益を出せなきゃ困るんだろうけどさ」


 颯馬は、ほどなく麻婆豆腐を平らげると、ペットボトルの水をコップへ注ぐ。


「怪異や都市伝説を題材に扱う漫画っていうのは、それ自体もまた往々にして現代民俗学の研究対象になり得る――と、僕は考えているからね。そもそもホラー作品が古典的な民俗学をテーマにしている場合が少なくない、という事情を差し引いたとしても」


「研究対象……私が描いているようなホラー漫画が?」


「そう。怪異や都市伝説なんかは、柳田國男が指摘するところの『心意現象』なんだ。社会の中にくすぶっている問題意識や不安のたぐいを、そういうものは遠回しに表象して生まれてくる。だからそれを材に取って表現された作品には、考察の余地が少なくない」


 鸚鵡おうむ返しの問い掛けに対し、颯馬は深くうなずいて答える。


「例えば江戸時代には、浮世絵の『なまず絵』が流布した。これは当時、鯰が水界の王として終末を告げる……というような都市伝説があって、それを題材に描かれたものだったんだ」


 取り分け鯰絵が大量に出回ったのは、安政二年(一八五五年)の大地震を契機とする。

 元々は鹿島地方の神に関わる怪魚のフォークロアだったのだが、そこへ「鯰が地震を起こす」という民間信仰が結び付いて、民衆絵画に描かれるようになった。

 これは大都市が天災で終焉を迎える、という当時の民衆の不安が創作物に反映された例だ――

 颯馬は、そう主張する。そうして結菜が描くホラー漫画の中などにも、現代を生きる人々の心の有様が映し出されているはずなのだ、と。


 そう言われてみると、たしかに最近関わった事件の背景からも、何らかの社会問題や関係者の心情が感じ取れなくはない。

「鈴風橋のお化け」には、近隣の地域に住む子供の水難事故が関係していたし、水死した少女の嫉妬心が端緒になっていた。また「不思議な空き家」の件では、星澄市で急速に進む再開発事業の闇と、そこに巻き込まれた家族の無念が根底に存在していた……。



「それとね、いつも言っていることだからしつこいようだけれど――」


 颯馬は、コップの水をぐいと半ばまで飲んでから、付け足すように言った。


「僕は、結さんの絵が好きなんだ。だから漫画が売れていないからって、卑下ひげして欲しくない。あんなふうに絵が描けるっていうのは、やっぱり素敵なことだよ」

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