第3話

400円台で安定していたかとおもわれた1年後、再びQ銀行に悪材料が持ち上がった。バブル崩壊後に多くの不動産会社が物件の高値掴みで痛手をこうむっていたが銀行の追い貸しでかろうじて息をつないできた。しかし今回のコロナ不況に加えて地方の人口減は多くの不動産会社に決定打を与えた。再びQ銀行にとっても多くの不良債権の嵐がやってきた。

翔太はひと時の400円台の安心感もありQ銀50000株を買い足して平均取得額が300円になってしまった。翔太は2年前に母親の死去でQ銀行株を50000株と現金2000万を相続して30歳の若さでFIREを気取っていたが想定外の試練に立たされてしまった。

株価は300円を割ると更に売りが積みあがってきた。今回の売りは前回と違いスケールの違いを感じさせた。知事は再び中田に電話をした。[なんとかならないでしょうか。]中田は[今度の売りは外人投資家が大量にしかけています。手が届かないですね、山中さん、最早、後のことを考えた方がいいかもしれないですね]中田の少し突き放した返事で電話は切れてしまった。中田は電話を切った後、すぐに自社の利益を考えた。一時買ってしまったQ銀行株を速く売りにださなければと。

3日後、翔太の株は250円で売れた。500万円くらい損をしたがひと安心をした。株価は多少の上下を繰り返しながらも徐々に下げていった。数日後、再び100円の壁に到達してしまった。最早、上場廃止が見え隠れする位置にきてしまった。それから瞬く間に100円を割り、売り一色の様相を呈してきた。10日後Q銀株は整理ポストに入り上場廃止が決定した。



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