第2話
1年前、かねてより噂のあったQ銀行の大口融資先であるAカントリーゴルフクラブ、Kホテル、H不動産がコロナの影響で次々に倒産した。膨大な不良債権化は必至である。当然Q銀行の株価には激震が走った。連日ストップ安の連続で400円台から100円まで売られてしまった。一刻の猶予もなかった。知事室では山中知事が側近や銀行関係者を集めて善後策を練っていたが誰しも良い考えが浮かばなかった。その時副知事が知事に向かって[知事の経済官僚時代のお知り合いに証券関係の方は]と切り出した。知事はある男の顔を思い浮かべた。古い名刺入れをめくり男の名刺を探し出すと早速電話をかけた。[あ 、もしもし山中です。しばらくです。)(はい中田です、ご無沙汰しております。]受話器の向こうで懐かしい押しのある声が帰ってきた。Z証券副社長の中田だった。中田は山中の電話をすぐに察したらしく[大変ですね、なんとかやってみましょう。]とクールに電話をきった。翌朝、9時に電話がなった。早速、中田からだ[売り本尊の仕手は僕の後輩のEだったので話は直ぐにつきました、明日から買いのドテンに入るそうで、またうちの会社も買いを付き合わてもらいます。山中さんも県を挙げてなんらかの方策をうってください]山中知事は細い顎をなで眉間にしわを寄せて何かを納得したように頷いた。山中知事は各市町村長に電話をした。皆、現状を承知しているらしく知事の提案に頷いた(Q銀行の株を何とかして買い支えなければ)各市町村長は特別な予算を組んだ。また知事はQ銀行にも同様な要請を、[とにかく銀行の問題ですから]Q銀行は恐縮する声で何度も頷いた。翌日からQ銀行は大株主会のメンバーが預金者を回って株の購入を勧めて歩いた。多くの預金者が協力をした。翔太の75歳の叔母も老後資金の虎の子500万をさし出した。皆の努力の甲斐もあって株価は徐々に400円台に戻ってきた。
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