滅亡することを知った二人
『3年後、人類滅亡の可能性があります』
ぼんやりとそのテレビを見ているのは李仁と湊音。同性婚同士でパートナー協定を結んだ2人だ。
「3年後……人類滅亡。なに、そのよくわかんないSF映画みたいな」
「SM?」
「エスエフ! エスエムじゃないよ、李仁!」
「湊音にそんな趣味あったかなぁって」
「……バーカ、ねぇよ。それよりも滅亡って、死ぬってことだよな?」
「そうよね……死ぬってことね」
李仁はそんなことお構いなしにポテチをバリバリ食べる。
「……呑気でいられるなぁ、それが李仁らしいけどさ」
少しネガティブになる湊音はコップに入っているコーヒーは全て吸い尽くして残りは氷の溶けた水でコーヒーが薄まってあまり美味しくない。
「私、常にこの先長くないって思いながら生きてきたからさ……3年後だろうが1年後、なんなら明日滅亡しても構わない」
と李仁が珍しくそんなことを言うものだから湊音は薄まったコーヒーを気管支に誤って入れてしまいむせる。
ゲホゲホとむせる湊音の背中を李仁は優しく撫でる。
「変なこと言うなよ……」
「本当のことなんだから。それをネガティヴに捉えるのもミナくんらしい」
まだゼーゼー言う湊音。
「こうやってむせてミナくん死ぬこともあるんだからね」
「……縁起でもないこと言うな」
「ありえるわよ、もう40過ぎたし。40過ぎてなくても若い子でも死んじゃうことだってあるわ」
「はぁ、だから死ぬとかなんとか言うなよ!」
湊音は機嫌を悪くし、李仁の手を振り払った。
「……ミナくん。まだ話は続いてるの」
李仁は離れていく湊音の身体を抱き寄せるが拒否されて距離を離された。
「……ずっと明日なんてないと思ってた。家族に勘当されて生きていくアテが身体を売ったり酒を飲んで好きでもない人に媚びって笑顔振り撒いたり人前でアヘアヘ腰を振って踊ってチップもらって好きでもない人に身体触られキスされ強要されて……でもそうしないと生きていけなかった。裏組織のルートから情報仕入れるためにもそう……もう明日死んでも、いやこの瞬間死ぬ、いや殺されるって覚悟の毎日で……地獄だった」
湊音は既に李仁の過去は知っているが改めて李仁の口から聞かされるとかなり重たいものである。
「ミナくん、あなたに出会ってから……あなたのためにこの先長く生きていきたい、って本気で思ったの。過労で倒れた時だって……このまま死にたくない、初めて怖くなったわ」
「……李仁」
湊音は李仁が過労で倒れた時のことを思い出して涙をボロボロ流した。
「だからね、今は私は3年後人類が滅亡するのが……怖い、本当に怖い」
「李仁……大丈夫だよ」
李仁も珍しく涙を流した。
「滅亡するときは一緒にいるから」
「ええ、一緒にいましょう……2人つながって……離れないよう」
「そうじゃなくても一緒にいたいんだろ?」
「……やだぁ、そりゃそうよ。あっ……」
李仁の唇は湊音の唇で塞がれる。
「もう、そうカッコつけて……ベッドのお誘い下手くそ」
李仁は笑うと湊音は顔を真っ赤にした。
「違う、こんなタイミングで誘おうとは思ってなかったけどつい……てか、もう……」
「あらぁ、ミナくんったら……エッチ」
「李仁にキスしたら……」
「それだけでこうなっちゃったの? 変態さん」
「……たわけか。変態に言われたくないわ」
2人はたくさんキスを交わし、ソファーの上でいちゃつきそのまま……。
3年後の人類滅亡のことなんてどこにいったのやら。
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