第88話 アニシモフ鉱山攻略戦

 チェルヌィフの都市を無事に攻略した俺たちフェルモ連隊は、意気揚々いきようようと前線基地へと帰還した。

 俺たちのこの戦いは、軍上層部も驚くほどの手際てぎわの良さだったようで、そのことを将軍から褒められたフェルモはホクホク顔をしていた。

 ただ、フェルモはその場で次の攻撃目標の指示も受けていたらしい。

 マクシモにこちらの意図いとさとられる前にできるだけ戦果を拡張しておきたいとのことで、次は大陸東部で最大の鉄鉱石の鉱山、アニシモフ鉱山を爆破するのだそうだ。

 アニシモフ鉱山を長期にわたって採掘さいくつ不能ふのうにするため、坑道を破壊する作戦が伝えられた。ただ、地下にある坑道なので、多脚戦車では破壊が難しい。そのため、俺たちの連隊で兵員輸送車を護送し、鉱山まで連れていくことになった。

 その輸送車には、爆弾を実際に設置するための工兵隊が乗っている。また、坑道には採掘用と警備用のロボットがいると思われるため、爆弾設置までそれらを排除するためのパワードスーツ部隊も同時に輸送するのだとか。

 命令を受けた翌日にはすでに、俺たちはアニシモフ鉱山にほど近い最前線へと部隊を展開していた。

 いつもの手順で戦争が始まり、前回同様、近接戦闘開始直前に俺達の前の部隊が左右に分かれ、道をあけてくれる。

「フェルモ連隊突撃開始! 野郎ども! 今日も景気よく行くぞ!」

 フェルモの掛け声とともに俺は前進を始め、連隊の仲間たちがそれに続く。

 前回の焼き増しのように、前列の仲間たちがブリキ野郎をはじき飛ばし、流れ作業で後続が一撃ずつ加えて破壊を繰り返す。

 やがて前線を無事に突破した俺たちはそのまま疾走しっそうを続け、しばらく後にアニシモフ鉱山に到着した。

 さすがに最精鋭部隊だけあって、そのまま流れるような連携れんけいを見せ、素早すばやく鉱山の入り口を封鎖した。むしろ、兵員輸送車の方がややもたつきながら入り口に陣取じんどったぐらいだ。

 そして、最初に護衛のパワードスーツ部隊が突入し、入り口付近の安全を確保する。やや時間を空けて工兵隊も下車し、爆弾の設置を開始した。

 じりじりとしたあせりを感じながらも、俺たちは待機を続けていた。

 頼むから早くしてくれよ。ブリキ野郎が大挙して駆けつけてくると、突破のための助走がつけられなくなる。そうすると、俺たちはめでたく敵中のど真ん中で孤立してしまう。

 そんなことを考えながら待っていると、無事に工兵隊と護衛部隊が入り口から出てきた。

 さらにしばらく待っていると、爆破のカウントダウンが近距離レーザー通信網で始まり、ゼロの掛け声とともに入り口付近が崩落した。

 ある程度内部まで爆破しているため、再び採掘さいくつできるようにするためには、また坑道を掘るところから始めなくてはならないらしい。これでかなりの時間が稼げるだろう。

「よし! 撤退だ!! ブリキ野郎どもが駆けつける前に家に帰るぞ!」

 フェルモのその号令とともに俺たちは撤退てったいを開始し、無事に作戦を完了した。

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