第75話 連携訓練

 親睦会しんぼくかいを無事に終えた俺たち新生しんせい死神しにがみ殺しの部隊は、そのまま連携訓練へと移った。俺たちの部隊の特徴はサポートなので、そこを重視した訓練を行っている。

 しかし、中隊規模ならともかく大隊規模になった部隊では、俺の直属小隊だけをサポートに回していたのではとても手が足りない。

 そこで、俺の部隊ではあまり小隊の単位にこだわらず、お互いの状況を把握はあくしあって余剰よじょう戦力せんりょく融通ゆうずうしあうようにした。

 ただ、これをするためには、隊員全員にある程度の技量と判断力が必要になる。しかし、その程度のことができないようなものは、そもそも選抜の時点で落としている。

 選び抜かれた精鋭である俺たちであれば、その程度は造作ぞうさもなかった。

 そして訓練には、部隊を二つに分けた模擬戦もぎせんも含まれていた。ブライアンとエルトンの古参こさんチームと、アンソニーとジェシーの新参しんざんチームに分かれての模擬戦もぎせんだ。

 俺は公平を期すために審判役として参加し、どのメンバーがどのタイミングでサポートに回るのが最適なのかを、外部から見て指摘する役をしていた。

 ちなみに余談よだんだが、あの親睦会しんぼくかいの時、ジェシーとアンソニーは会話がはずんだようだ。その席で、ジェシーはアンソニーの真面目まじめぶりに感心したのだとか。

 仕事のできる真面目まじめな男性がタイプと言っていたのは噓ではなかったようで、お互いにちょっといいなと思っているらしい。ただ、ジェシーとアンソニーでは10歳程度の年齢の開きがあるため、アンソニーの方が遠慮えんりょしているようだ。

 そんな事情もあり、まだまだお付き合いを始めるところまではいっていない模様だが、俺の精神的な安定のためにも、二人にはぜひとも関係を深めてほしいところだ。

 閑話かんわ休題きゅうだい

 そんなある日。訓練を終え、愛機を降りたところで俺を呼ぶ声がした。

「ジェフ!」

 そう言って、俺の胸に飛び込んでくるセシィ。

 俺は両腕を広げ、彼女を受け止める。そしてしばらくすると、別の女性の声がした。

「セシィだけずるいです。私にも場所をあけてください」

「ん」

 セシルの声に、そのまま素直に右に少しずれるセシィ。

 その開いた俺の左胸に、今度はセシルがすっぽりと収まる。そんな俺たちの様子を見たウォルターが、苦笑しながら語り掛ける。

「よぉ、色男。そんなところでイチャついていると、おんなりの男連中にそのうち刺されるぞ?」

 確かに、俺はそろそろ男性陣の怨嗟えんさの視線だけで呪い殺されかねないな。

 そんなことも考えたが、幸せそうに俺の胸に顔をうずめている二人を見ていると、まあ、その程度の不利益は甘んじて受けるしかないなとも思う。

 そして、そんな俺の考えは、意外と早く実現することになる。

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