第71話 対02戦闘訓練

 俺は自分の小隊のメンバーを集め、その場で02ゼロツー正面しょうめんから撃破する作戦について説明を行った。

「すまない。みんなを最も危険な任務にだまって巻き込んでしまって」

 俺がそう謝罪すると、セシィが何を言っているんだという顔で指摘を始める。

「ジェフがご指名で狙われているこの状況だぞ? 逃げる以外に方法がないんならともかくとしてだ」

 そう前置きをしてから、みんなの気持ちを代弁してくれるセシィ。

「簡単に仲間を見捨てて、自分だけが助かろうとするような薄情はくじょうなヤツがここにいるって、本気でそう思っているのなら、なぐるぞ?」

 ウォルターも同意見のようで、ウンウンとうなずいてくれている。

 ただ、セシルはこの作戦に反対だった。できるだけ危険な状況を避けてほしいと、何度も繰り返し懇願こんがんされた。

「お願いです、ジェフ。天使型02と正面しょうめんから戦う等、あなたが死んでしまうリスクが高すぎます。なんとかして戦闘を避ける方向で検討してもらえないでしょうか?」

 しかし、あの02にロックオンされている状態で、俺だけが逃げ切れるとはとても思えない。俺は兵士で、前線からは逃げられないのだから。

「俺を危険から遠ざけたいのであれば、セシルは可能な限り本気で俺をきたえてくれ。きたえてくれたらくれるほど、俺が死ぬ確率が減り続けるんだからな」

 俺のこの説得で、しぶしぶながらセシルが任務を引き受けてくれた。

「……とても納得はできませんが、ジェフの意思が固いことだけは理解しました。私の学習不足をいるばかりなのですが、翻意ほんいさせるための言葉が私には思いつきません。他の方法も思いつきませんので、可能な限りジェフを死なせない準備に協力することにします」

 こうして開始された訓練では、俺の小隊のメンバーに加え、ブライアンにも参加してもらっていた。

 セシルに仮想02の役をしてもらうため、本来のセシルの役割の代役としてブライアンに連携訓練をお願いしたのだ。彼はグラディエイタースタイルの多脚戦車乗りとしてはセシルとセシィに次ぐ実力であるため、適任だったからだ。

 そして決定された陣形では、俺が正面を受け持って防御に徹し、02が剣を持っている右腕側をセシルの担当とした。セシィには02の左腕側を担当してもらい、ウォルターはその背中側でタイミングを計ることになった。

 左右のセシィとセシルには、俺の防御の負担を減らすため、主にけん制の一撃を繰り出してもらい、ウォルターにはすきを見て必殺の一撃を繰り出してもらう。

 ただ、当然ながら、多脚戦車に比べると02の体は随分ずいぶんと小さい。その差を埋めるため、仮想02役のセシルの機体の前後左右に小さめのマークを付け、そこ以外には攻撃しないようにして工夫した。

 また、直接体を動かす02とは違い、セシルの多脚戦車は操縦というワンクッションがどうしても必要になる。そのため、速度的には劣るだろうという予想のもと、セシルには速度を重視した攻撃を繰り返してもらった。

 さらに、多脚戦車のチューンナップも、同時に技術開発部にお願いしていた。少しでも有利な状況になるように、オルランドⅠ型をさらに改造してもらったのだ。

 この改造はできるかぎり反応速度重視で行ってもらい、みんながギリギリ操縦できるレベルにまで改良してもらった。

 ただ、訓練と同時並行で行ってもらう必要があったため、連日ヘトヘトになるまで訓練を行った後に機体の感想を述べ、俺達が泥のように眠っている間に調整してもらっていた。

 連日の徹夜仕事をお願いしている技術開発部のメンバーには申し訳なかったが、02を放置しておくと戦死者が量産されてしまうからと、文句も言わずに作業を続けてくれていた。

 こうして開発されたオルランドⅠ型改を使い、訓練を重ね、機体性能についていけるようになるとさらに改良してもらう。

 そんな毎日を重ねているうちに、あっという間に一週間が過ぎ去り、俺たちはなんとか02に対抗できるであろうと思われる反応速度を習得していた。

 訓練が無事に終了したことを上層部に報告し、俺たちはこのところ連日02が襲来しゅうらいしている地獄の最前線へと向かった。

 さあ、02狩りの時間の始まりだ。

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