第64話 セシィの戦い
「ハッ……ハハッ。ハハハハハ……」
そのまま床に両肘をつき、がっくりと
「いや……待てよ?」
そしてセシィは、そのままブツブツと独り言を開始した。
「ジェフとセシルは、まだ結婚したわけでも何でもない。だったら……」
なぜだろうか? セシィの目に力強さが戻ることは
俺の頭の中では、今すぐに逃げ出すべきだという警報がやかましく鳴り響き続けている。
「あきらめるのは、まだ早いじゃないか。奪われたのなら、奪い返せばいい。あたいは兵士なんだから、欲しいものは戦って手に入れる。当たり前のことじゃないか」
その目にはもう、迷いも後悔も浮かんでいなかった。そしてそのまま立ち上がると、思わずゾクリとするほどの
こいつ、こんなに色っぽかったか?
俺が余計なことを考えてしまって
「なっ、なっ、なっ」
いったい何をしている? そう言いたいはずなのに、俺の言語野は完全に麻痺してしまったようだ。
そんな動揺しまくっている俺の様子を確認すると、セシィはまるで勝利を確信したかのような表情になり、
「ねぇ、ジェフ。あたいのことが最高にいい女に見えるって話、今でもそう?」
「あ……あ……ああ。もちろんだ」
俺は思わず正直に答えてしまっていた。そうすると、ますます俺に密着しながら、セシィは続きを語る。
「あたい、気づいたんだ。セシルにはできなくて、あたいならできることが、一つだけあるってさ」
そして俺の耳元で、そっと甘く
「あたい、ジェフの赤ちゃんを産めるよ?」
その甘い
俺の子供を産む? つまりは、そういうことを、セシィと……?
俺の脳みそは、もはや
まずい、この状況はまずい。流されたらだめだ。そうだ、セシルのことを考えよう。
俺は慌てて現実逃避を始めた。
セシル、セシル。そういえば、あいつの名前はセシィからもらったんだったな。俺にとって最高にいい女から名前を
そうだ、セシィだ。彼女はここにいる。俺のすぐそばに。しかし、セシィの体って、こんなに柔らかかったのか……。
もはや混乱しきって、何を考えているのか全く分からなくなった頭のままに、思わずセシィを至近距離で見つめてしまった。
目と目が合い、しばらく見つめあう。
「セシィ……」
ずっと思い続けてきた女性の名前を
俺のそんな様子を確認したのだろう。セシィがゆっくりと目を閉じ、顔をさらに近づけてくる。
俺も目を閉じ、顔を近づける。
その時、どこか遠くでドアが開く音がしたような気がした。
そして、いよいよ唇が重ね合わされようとした瞬間、その声はやけにクリアに俺の耳に届いた。
「ジェフ、セシィ。あなたたちは、いったい何をしているのですか?」
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