第31話 精鋭

 それからまたしばらくが経過し、俺の機体にパーソナルマークが描かれ、ニールには勲章が授与じゅよされた。

「やっと周囲が俺の真価に気づき始めたな」

 満足げにうなずいているニールを見て、少しは彼にむくいることができたかなと実感できた。

 俺に預けられた中隊も戦場働きをするようになり、その運用方法について考えを巡らせた結果、俺らしくサポートを充実させることにした。

 ブライアンとエルトンには自由に小隊を動かしてもらい、俺の直属小隊が必要に応じてサポートに回ることにしたのだ。ただ、この方針にニールは反対だった。

「なんで俺が雑魚ざこどもの尻拭しりぬぐいをしなければならないんだ?」

 俺は少し考え、ニールにもサポートしてもらえるように誘導した。そうすれば、今は指揮官向きではないと言われている評価もくつがえり、やがて本人の望む通りに出世街道に乗れるだろうと考えたからだ。

「まあ、そう言うな。お前は強いが、みんなはそうじゃないからな。ちょっと想像してみてくれ。仲間がピンチの時にお前が颯爽さっそうと現れ、敵をぎ払う。そうすると、仲間もお前の重要性により気づきやすくなり、その胸の勲章も増えるんじゃないか?」

 しばらくその姿を想像していたのだろう、黙り込んだニールはやがて了承の意思を示した。

「仕方ないな。確かに弱者を救うのもエリートである俺の役目だな」

 俺たちのそんなやり取りを見ていたセシィとウォルターも微笑ほほえんでいて、やる気を出したニールに期待しているようだ。

 そして俺は中隊全体の状況をよりくわしく把握はあくするようになり、場面に応じて援護に出すメンバーを選択するようになった。

 攻撃力が不足していると感じればウォルターを派遣し、攻防両面でバランスの良い応援が必要だと感じればセシィを、防御力に厚みを増したいときは俺が直接向かった。

 ニールは意外なことに、どんな場面でもそつなく援護をこなすオールラウンダーとして活躍してくれた。

 ニール自身は攻撃的な操縦士だが、乗っている機体は防御型のナイトスタイルであるため、かえってバランスがとれて良かったのだろうと考えている。

 必要な時に必要な戦力の増援が得られるようになった二つの小隊の撃破率が激増し、その結果として俺の中隊全体の撃破率も増加していった。

「中隊長のもとに配属されてから、仕事がはかどって助かりますよ」

 エルトンはそう評価してくれていた。ブライアンにも好評なようで、

「この中隊になってから楽にブリキ野郎を狩りまくれて、デート資金が潤沢じゅんたくになったので、また私がモテてしまいますね」

 と、彼らしい評価で喜んでいてくれていた。

 撃破率が上昇するにつれて周囲の評価も上がっていき、やがて俺たちは精鋭部隊として認識されるようになっていく。

 そしてジェフリー中隊は、「死神しにがみ殺しの部隊」と呼ばれるようになった。

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