第23話 ムードメーカー

 それから戦場に出た俺たちジェフリー小隊も、もはや守りを固めるのではなく、積極的に前に出て攻勢を強めていた。

 多少のリスクは承知しょうちの上で少しばらけた陣形を採用し、少しでも多くのブリキ野郎をスクラップに変える。そう、事前に話し合っていた。

 そして、再び日替わりでセシィとウォルターに俺がレンタルされるようになった。今日はウォルターと組んでの狩りの日だ。

 ちなみに、ブリキ野郎は今でも全てがグラディエイタースタイルだ。これはおそらく、このスタイルが一番攻防のバランスがよく、汎用性はんようせいに優れているためだろうと言われている。

 俺がブリキ野郎の攻撃をさばいていると、静かにウォルターの機体が後ろに回り込み、大上段からの振り下ろしでそいつを一撃のもとにスクラップに変える。

「よっしゃあ! 次行くぞ、次!」

 テンション高く、獲物を求めてはやるウォルター。俺はそれに少しストップをかける。

「ウォルター。やる気がみなぎっているのはいいことだがな。ちょっと落ち着いてくれ。その位置からだと、次の相手はお前から突っ込むことになる。サポートしにくくなるので、少し待ってくれ」

 ウォルターもその位置取りの悪さに気づいたようで、素直すなおに認める。

「悪ぃ。悪ぃ。ちょっとあせりすぎだな。俺」

 そうやって二人で次々とブリキ野郎の残骸を積み上げていく。

 ちなみに、対レーザー用の煙幕がたかれている状態では、当然ながら視界も悪くなる。しかし、多脚戦車の正面モニターに表示されている映像は人工知能によって画像処理されているものであるため、俺たちはかなり鮮明せんめいに周囲の状況が確認できる。

 そうやってしばらく全力で戦い続けた俺たちは、少し間が開いたタイミングで雑談をかわす。

「なあ、ジェフ。これって、考えようによってはチャンスだよな?」

「ん? どういう意味だ?」

 俺がモニター越しに少し首をかしげると、ウォルターはその意味を語ってくれた。

「だってよ。ブリキ野郎が相手でも、撃破ボーナスは減額されずに支給されるだろう? つまり、まだ弱いブリキ野郎を今のうちにこれでもかってぐらい狩りまくれば、大金持ちは無理でも、俺たち、小金持ちにはなれるぜ?」

 そう言って、いつぞやのようにいい笑顔で親指を立てる。俺はそれにフッと軽い笑みを返し、謝意しゃいを伝える。

「お前のそのどこまでも前向きな明るさには、俺たちはいつも助けられているんだぞ?」

「なんだなんだ? 突然めたって、なにもでてこないぞ?」

 そう言って、俺たちは微笑ほほえみあった。

 俺たちは無駄むだぐちをここで切り上げ、さらなるボーナスを求めて次なる獲物を探し求める。

 そうだ。俺たちの戦いは、少なくとも無意味ではない。ならばあの司令官閣下の言う通り、もうひとりと行こうじゃないか。

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