第22話 総力戦

 とにかくブリキ野郎を倒し続けるしかない。それも可能な限り素早すばやく、大量に。

 そう覚悟を決めた連邦は、総力を振り絞っての大攻勢に出ていた。

 連邦にはもう後がない。この作戦を完遂かんすいできなければ、連邦に明日は来ない。

 そのような認識が参加各国で共有されるようになり、これまではあまり戦争に積極的ではなかった大陸の西側諸国も、本腰を挙げて兵力を供出きょうしゅつし始めた。

 これまでの連邦軍は志願兵だけで構成されていた。しかし、もはやどこにも余裕がなくなった連邦は、予備役の兵士を全て招集し、さらに徴兵ちょうへい制度せいどの整備も始まっている。

 国家総力戦の始まりだ。

 そうやって連邦中からかき集めた兵力をまとめて前線送りにしていて、とにかく物量で押し切る作戦が決行されている。

 長引けば長引くほどブリキ野郎の学習が進み、どんどんと不利になる。

 軍首脳部もそれが分かっているからこそ、短期決戦をもくろんでのなりふり構わぬ全力攻撃だ。

 まあ、それに合わせてローテーションによる休暇もぐっと減らされたが、それもいたしかたないだろう。

 もうそんな悠長ゆうちょうなことを言っている場合ではないのは誰の目にも明らかなため、不満をらすものはいなかった。

 その悲壮感ひそうかんさえ漂わせる覚悟の攻勢は、俺たち兵士を奮い立たせた。末端の一兵卒にいたるまで腹をくくって地獄の最前線へと向かう。そして、まるで競い合うようにしてブリキ野郎を狩り続けた。

「くたばれブリキ野郎!」

「スクラップにしてやんよ!」

 そんな勇ましい掛け声が各所で聞かれるようになり、みんな必死になってブリキ野郎の残骸ざんがいの山を築き上げ続けた。

 帝国は連邦を追い詰めすぎた。

 覚悟を決め、本気になった連邦の勢いに帝国は対抗できなくなり、今度は帝国が追い詰められ始めた。

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