第11話 休暇の風景

 しばらく最前線勤務を続けた俺たちだったが、今日は休息日で、今は朝食の時間だ。

 数だけは多い連邦軍は、人数に余裕がある。そのため、ローテーションで休暇がとれる。きちんと休息をとって英気を養い、人数が少なくりの帝国軍相手に有利な状況を作れという、ここだけは連邦側でよかった思える制度だ。

 ちなみに、連邦に加わった俺の国の軍では、食事は特別な理由がない限り、小隊で固まって取るのが慣例だ。

 こうすることによって連帯感をはぐくみ、本番の戦場で連携をスムーズに取れるようにとの伝統らしい。そのためか、ウチの軍では仲間意識が強く、基本的に仲がいいことが多いのだとか。

 ただ、その分上下の規律が緩い。しかし、俺たちの軍では、軽口を言い合えるぐらいの仲でなければ戦場で背中を預けられるか、という考え方が主流のため、特に問題にはなっていない。せいぜい、よその国出身の司令官が就任した時、頭を抱えるほどの緩さらしい程度だ。

「ジェフー! こっちこっち」

 俺の仲間はどこだろうと、食事のトレーを持ってキョロキョロしていると、セシィが立ち上がって手招てまねきをしているのが見えた。

 俺が席に着き、全員がそろったタイミングで、ニールが今日の予定について意見を述べる。

「お前ら今日もカードか? そろいもそろって、不健康な遊びばかりしているな。たまには、もうちょっと建設的な時間のつぶし方を探したらどうだ?」

 それもそうかと思っていると、セシィが恐ろしい提案を始める。

「それなら、たまには体を動かして休暇を過ごすなんてどうだ? みんなでこれからジムに行って、すっきりと汗を流そうぜ」

 この体力バカは、休日にまで訓練したいらしい。ちょっと信じられない。ウォルターも同意見だったらしく、心底げんなりした様子で否定を始める。

「うげぇ……。毎日、やれ戦争だ、やれ訓練だで体を動かしてんのに、この上さらに休暇までジム通いだなんて、いったい何の罰ゲームだよ……」

 それにセシィ以外が同意し、彼女は少し不貞腐ふてくされだした。そこで俺は、とある折衷せっちゅうあんを提案してみる。

「それなら、今日はみんなで街に繰り出して遊ぶなんてどうだ? たまには、どこかの店でうまいもんでも食ってみるのもいいかもしれないな」

 俺の提案にみんな同意しているようだ。ここで、ウォルターが追加の条件を出してきた。

「いいねぇ。それはもちろん、小隊長のおごりだろう?」

 俺は苦笑しながら同意する。

「仕方ないな。安くてうまい店を紹介してくれたら、おごってやるよ」

 そうすると、セシィが右手を挙げながら会話を引き継ぐ。

「ハイハイ! あたい、最近できたとりの揚げ物がうまい店知ってんだよ。今日はそこでメシに決定な!」

 特に異論もないようなので今日の予定が決定し、集合時間を決めたら、のんびりと雑談と朝食を楽しむ。

 こうしてジェフリー小隊の面々は、仲良くお出かけとなったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る