第8話 ニール

 俺が今サポートに向かっている仲間は、ニール・トンプソンという。

 十人に一人の才能と言われている魔法が使えるためか、本人は自分のことをエリートだと思っているふしがある。

 勝気かちきな性格で上昇志向が強い。それだけなら長所なのだが、コイツはすぐに突出する癖がある。エリートの自分があまり評価されず、俺が評価されて小隊長になっているのが気に入らないらしい。

 そんな俺との差を見せつけたいと思っているらしく、ナイトスタイルをっているにもかかわらず、とにかく自力で敵を倒そうとする悪癖あくへきがある。

 しかし、どこか憎めない性格をしているニールが本当はいいヤツなのは、仲間ならみんな知っている。その自尊心さえ満たしてやれば、結構面倒見のいい、仲間思いのヤツなのだ。

 そんなニールを援護すべく、俺は相手のすきうかがう。

 突出しすぎているニールは、ナイトスタイルとグラディエイタースタイルの二体を同時に相手取っており、かなり押されている。

 そして、大振りの一撃を加えるためだろう、グラディエイタースタイルが少し下がって間をとったタイミングで、俺はその足元に砲撃を加える。

 多脚戦車には傾斜装甲があるため、このような乱戦状態になると普通は砲撃しない。砲弾が跳弾ちょうだんとなって思わぬ方向にはじかれ、フレンドリーファイアになりかねないからだ。

 俺はその心理の隙をつき、跳弾とならないように足元の地面に向けて砲撃した。

 突如として足元がぜた敵は驚いたようで、一瞬固まる。その隙に俺はまた盾ごと機体を衝突させ、相手にかぶさるようにして機体を預ける。そのまま一連の流れとして砲身を向け、ほぼゼロ距離からの砲撃をお見舞いする。

 こうすれば傾斜装甲は意味をなさないため、跳弾ちょうだんの心配をする必要がない。

 俺は珍しく敵を撃破すると、残っている敵のナイトスタイルに機体を向ける。今度は敵の方が二対一になりそうなためか、少しひるんだ様子だ。

 その隙を見逃すほどニールもお人よしではない。右手に持った剣を鋭く突き入れ、敵を撃破する。

「チィ。また余計なことしやがって。俺一人でも撃破できたんだ。俺の獲物を一体横取りしやがって。帰ったら覚えておけよ」

 ニールから苦情の近距離レーザー通信が入る。俺は肩をすくめながらニールをなだめる。

「ああ。分かっているさ。お前は強い。でも、できるだけ早く敵を削っておきたかったんだよ。今日はこっちの圧力が下がっているが、いつ敵の主力がまたこっちに来るか分かったもんじゃないからな」

 俺がそう言うと、ニールはニッと笑って肯定する。

「ああ。俺は強い。今のうちに俺ができるだけ領土を切り取っておいてやるから、援護しか能のないお前は、おとなしく後ろで防御に徹していろよ?」

 褒めてやるとこいつはますます調子に乗って活躍してくれる。そんなニールがかわいく思えるぐらいだ。

「ああ。期待しているぞ。未来の大隊長様」

 普通のヤツならこう言うとイヤミかと言いそうなものだが、素直すなおなニールは別段気にした様子もない。

「分かってんならいいんだよ!」

 そう言い残し、颯爽さっそうと次の獲物を追い求めだした。

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