第3話 ジェフ

 俺の名前はジェフリー・オルグレン。親しいものからはジェフと呼ばれている。多脚戦車乗りの職業軍人だ。

 俺が軍人をやっているのは、別に愛国心のためだとかの高尚こうしょうな理由からではない。単に食い詰めたからだ。

 俺の両親は、俺が二十歳はたちになる前に共に交通事故で亡くなった。

 葬式が終了し、気持ちの整理がつくと、俺は途方に暮れた。

 しばらくの生活費なら、保険金も下りたことだしなんとかなる。しかし、大学はあきらめざるを得ないかと思われた。それでも、これからの長い人生を考えたら、大卒の看板はぜひとも欲しい。なんとかならないかと恩師に相談したところ、軍大学を勧められた。

 無料で学問させてもらえる上に、寮生活で軍服も支給されるため、衣食住も保証される。俺にとっては、まさに渡りに船の大学だった。

 ただ、軍以外に就職しようとすると、違約金を払わなくてはならなくなる。そのため、俺の卒業後の進路は決まってしまう。しかし、両親を亡くした俺にとって、就職活動をしなくていいことは、かえってメリットに思われた。

 そうやって、俺は軍大学をごく普通の成績で卒業し、多脚戦車乗りの道へと進んだ。

 空軍に入れるほどの成績ではなかったし、海軍だと狭い船内でずっと過ごさなくてはならない。かといって、パワードスーツを着込んで歩兵になると、なんだか一番死にやすい気がしてならない。そのため、分厚い装甲で守られている多脚戦車乗りを選んだ。

 そんな臆病おくびょうな理由で進路を決めた俺は、同じような理由でナイトスタイルを選択し、訓練を始めた。

 防御型のナイトスタイルが一番死ににくいだろうという、かなり消極的な理由からだ。しかし、これが大間違いであったことは、すぐに判明する。

 ナイトスタイルはその防御力を生かし、最前線で敵の第一撃を受け止める、最も死にやすいと言われているスタイルだったのだ。

 しかし、そんなにすぐにはスタイル変更の申請を出せないため、俺はしぶしぶと訓練にはげんだ。

 そして、しばらくすると、俺にはこのスタイルがしょうに合っていることに気づく。

 グラディエイタースタイルやデストロイヤースタイルはアタッカーと呼ばれ、敵を撃破するのが主目的だ。

 それに対し、ナイトスタイルは支援型と考えられていて、アタッカーが攻撃しやすいように敵の妨害をすることが主な仕事になる。

 敵を殺すのも敵に殺されるのもまっぴらごめんな俺からすれば、支援だけをしておけば評価されるナイトスタイルは、まさにうってつけだった。

 その結果、俺は周囲の高評価を次第に得ていくようになる。

 他のものは、ナイトスタイルに乗っていても自分が活躍したいという欲求が抑えきれず、どうしても自分で敵を撃破したがる。しかし、俺はそれに全く頓着とんちゃくせず、味方が動きやすいようにとの動きに特化していった。

 そうすると、俺と組むと仕事がしやすいというアタッカー陣の評価へとつながっていき、前線に配置されてしばらくが経過する頃には、小隊長を任されるようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る