第2話 兵器の歴史
五度にわたる魔法革命は、様々な文明の利器を生み出した。その中には、当然兵器も含まれる。
初期には風魔法を応用した銃と大砲が開発され、戦場の
新しい攻撃手段が開発されると、それに対応できる防御手段も進化してゆくのが世の常である。やがて迎撃ミサイルが開発され、それが進化するにつれて長距離の誘導弾はあまり意味をなさなくなっていった。
そうすると、今度はこの世で一番速い光を使うようになった。レーザー兵器の登場である。
レーザー兵器は非常に強力であったため、すぐに対抗手段が開発された。レーザー光を
その結果、皮肉なもので、武器に関してはどんどんと先祖返りしていった。
誘導弾攻撃は、迎撃レーザーの進化によりほぼ100%打ち落とされるようになったため、回避不能な距離で迎撃困難な質量弾を撃ち込むようになったのだ。大砲の時代に逆戻りしたのである。
しかし、その結果として近距離戦闘が増えていった。距離が近すぎて、砲撃には向かないほどの近接戦闘が増えたのだ。
そうすると、今考えてみても
長距離では多脚戦車の側面に配置されたレーザーが飛び交うが、中距離からは煙幕をたいてレーザーを無効化し、物理的な質量弾を打ち合う。そして、さらに距離が詰まると、物理で殴り合う。
使っている乗り物こそ進化しているが、やっていることは、まるっきり中世の時代の戦争である。
そんな泥臭い戦いも、だんだんと経験が蓄積されていくと運用方法が進化していく。その結果、多脚戦車に持たせる武器にバリエーションが増えていき、役割分担するようになる。
現在では、主に三つのスタイルと呼ばれるバリエーションに大別されるようになっている。
剣と盾を装備し、防御に優れているナイトスタイル。
両手にそれぞれ剣を持ち、手数で押す攻撃型のグラディエイタースタイル。
両手持ちの重量武器を装備し、一撃の重さでとどめを刺すデストロイヤースタイル。
これらを組み合わせ、ファンタジー小説のパーティーのような多脚戦車小隊を組むことで、効率的に敵を撃破するようになっていった。
このように、地上戦は泥臭い中世に先祖返りしていたが、空では煙幕がすぐに流されてしまうため、戦闘機の武器はレーザーのままであった。そのため、空での兵器は、また別の進化を
光の速度で飛んでくるレーザーは、見えた時にはもう当たっている。そのため、見てから回避するのは物理的に不可能だ。つまり、ロックオンすなわち撃墜という構図が成立してしまっていた。その結果、戦闘機は最高速度よりも運動性能が重要視されるようになっていった。
いかに敵のロックオンをかいくぐり、敵より先にロックオンするかが重要視された結果だが、運動性能だけが進化し続けたため、ついには中に乗っているパイロットが物理的に耐えられないほどになってしまっていた。そのため、遠隔操縦するようになった。
しかし、原理的に無線通信で操縦を行う必要があるため、敵に通信内容を解析されると乗っ取られてしまう危険性が増していくことになる。
防御手段として暗号化通信の技術も発展していったが、これもやはり、それを破る技術とのいたちごっこになっていた。
やがて、通信内容を
人工知能先進国のゼーレ帝国では、自立型の人工知能を搭載し、スタンドアロンで敵を撃ち落とすタイプの機体が既に完成しているとの
また、迎撃手段の進化は、空と陸の兵器の関係性も変えてしまった。
かつての戦争では、空からの爆撃に対し、地上兵器は無力だった。しかし、地上にズラリと並べた多脚戦車等の迎撃レーザーにより、空からの落下物はほぼ完璧に撃ち落とされてしまうようになってしまった。
ちなみに、現在でも機動力の違いから、一対一なら航空機の方が強い。しかし、多脚戦車を主力とする地上兵器は、比較的コストが安いため数をそろえられる。
多数配備された迎撃装置に対し、航空機の有用性が激減してしまっていた。地上からでもロックオンされてしまえば、そのまま撃墜されてしまうようになったためだ。かといって、はるか上空からの攻撃も、地上に届く前に無力化されてしまう。
しかし、だからといって制空権が無意味になったわけではない。
大空を完全に支配されてしまうと、レーザーの有効射程外の高空を飛ぶ情報収集用の航空機により、こちらの動きが
これらの事情により、大空では戦闘機同士が編隊を組んで激しいドッグファイトを繰り広げ、それと同時進行で、地上では多脚戦車による血しぶき舞う殴り合いが展開されるようになっていった。
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