11:からあげ

 二〇〇七年四月二六日 木曜日

 七本槍市 七本槍南商店街 楽器店兼リハーサルスタジオEDITIONエディション


 すごい。

 正直ついて行くのがやっとだ。けれど、確かに自分の技術が上がっているという実感。

 谷崎諒たにざきりょうのドラム、そして水沢貴之みずさわたかゆきのベースというリズム隊の上でギターを弾くということは、こういうことなのだと思い知らされる。けれど勘違いしてはいけない。これは諒さんと貴さんのドラムとベース、このグルーヴがあればこその実感だ。本当に巧い人と一緒にやると、自分まで巧くなったような感覚に陥る。錯覚ではないし、実感を伴ってしまうことがまた性質が悪い。本当に巧い人は、レベルの低い人にレベルを合わせることができるし、ある程度のレベルの人間ならば、そのレベルに近付けるように、レベルを引上げることもできる。これがプロの力だ。以前諒さんとは一度だけライブをしたことがあったけれど、その時に学んだことだった。それにベースまでがプロになると、本当に自分の力が引き上げられる。やっとの思いでついて行けてはいるけれど、それは二人がわたしたちにレベルを合わせてくれているからだ。これが自分の純粋な実力だと勘違いしてはいけない。

「おぉ、たかだか二週間弱ですごい上達振りじゃないですか」

 まず一曲合わせてみて、貴さんがそう言ってくれた。莉徒りずにはとにかく最初はペンタトニックという音階構成で速く弾けるように練習をした方が良いと言われたので、一人で部屋にいる時はできるだけその練習をしていた。どうやら少しその成果が出たようだったけれど、まだまだだ。

「基礎の反復練習させたら夕衣ゆいの右に出る者はいないわね、きっと……」

「そんなことないよ」

 でも基礎練習は大切だ。わたしはギターを始めたばかりの頃は、ギター教室に通っていた。そのおかげでコードの押さえ方やギターを弾くフォームなどは正しく身についているし、運指も無理がないように運ぶことができる。そこで習った基礎練習は、ある程度上達してくると面白みのない、本当につまらない練習だけれど、そのつまらない練習こそが自分の土台を固めるものだとわたしは常々実感してきた。そういった基礎を大切にしない人たちに限って……いや、これ以上は言うまい。

 きつい言い方になってしまうけれど、基礎をばかにしたり、少しかじって上手くできないからつまらないと感じてしまう人は早々に楽器を辞めた方が良い。基礎をないがしろにする人は、何をやってもままならない、と当時先生が言っていた。それは音楽に限らず、スポーツや格闘技、絵を描くことなど、全てに共通することだ。

「いや大したもんだわ」

「抱きしめたくなっちゃうだろ?」

 貴さんがとんでもないことを言う。涼子さんの旦那さんではなかったら本気で警戒しても良いくらいの言葉だけれど、一応これは貴さんの親愛の証だということで割り切っておく。いつものこと言えばいつものことだから。

「涼子さんに言いつけて良いなら存分にどうぞ」

 じろり、と横目で貴さんを睨みつけながらわたしの代わりに莉徒が言う。

「ゆ、夕衣すまん、いかに夕衣が可愛くても涼子りょうこさんの魅力には……」

「わかってますから!」

 貴さんが宇宙で一番愛している女性が涼子さんだということは周知の事実だ。恐らく、何があろうとも絶対に誘惑に負けることのない人なのだろう。そういう点では女性にとっては理想の男性像なのかもしれない。

「えぇ、でも若ぇのもいいじゃねぇかよー」

 あくまでも他人事なのだろう。諒さんがとぼけた声で言った。

「涼子さんにちくるね」

 にっこりと貴さんが返したけれど、目が笑ってない。こわい。

「涼子ちゃんがダメだなんて一言も言ってねぇ!」

 ひぃ、とでも言いたそうな目で諒さん首を振る。さしもの諒さんも涼子さんには頭が上がらないのだろう。

「大体アナタ、夕香ゆうかさんという超絶美人がいながら……」

 莉徒がギターのチューニングをしながら言う。あ、わたしも調整しよう。

「夕香さんをダメ出しするような発言は一言もしてませんが」

「えぇ、若ぇのもいいじゃねぇかよーって言いましたぁ」

 A弦のチューニングを終えて、D弦のチューニングをしながら莉徒は言う。チューニングをしながらなので、なんだかぞんざいな感じがする。

「つまり、お前にとって、夕香さんは若くない、と」

 貴さんはクローマチックチューナーのスイッチを入れて、音が出ないようにしてからスラッピングのフレーズを弾き始める。うわぁ、本当に巧いなこの人。-P.S.Y-サイでは殆ど楽曲にスラッピングベースは入れていないけれど、The Guardians's Blueガーディアンズブルー時代のコンサートでは貴さんだけのソロを披露するコーナーがあったりして、その頃から貴さんのスラッピングには定評があったらしい。それを今、生で見られるなんてとんでもなく幸運なことだ。

「そら私のが若いし!」

「それもそうか……」

 どこかで聞いたことがあるフレーズだけれど、思い出せない。Red Hotレッドホット Chili Peppersチリペッパーズだったかな。会話の内容はひどいものだけれど、そんな軽口を叩きながらでも流してスラップするなんて本当に楽器が体の一部になっている人なんだ。

「つまり夕香より莉徒がいい、と」

「変態ロリコン親父め!」

 最後のE弦のチューニングを終えると、諒さんに視線を向けて莉徒は叫んだ。

「自分で言っちゃったよ」

 わたしが思ったことを諒さんが代弁してくれた。わたしと莉徒は今年十九歳になるけれど、例えばそう、紺のジャンパースカートに白のワイシャツでそれも丸襟で、さらに白いハイソックスと、白いスニーカーで鞄を持って街を歩いたとしたら、まだ中学生でも通用しそうなほどの童顔だ。本当は大人っぽく見られたいとは思っているのだけれど、メイクをしても子供が背伸びをして、母のメイク道具を使ってみました、みたいな顔になってしまうので、どうにも締まらない。きちんと上手な人にしてもらえれば、ちゃんと大人っぽくはなるのかもしれないけれど、高校はお化粧は禁止だったし、全然練習なんてしてなかった。それに基礎が童顔だから、やっぱり変な顔になる。ちなみに英介にはあまり化粧栄えのしない顔、と言われている。要するに地味顔なのだ、わたしは。

「し、失言よ!」

「でも否めない……。莉徒的に諒さんはOKなの?」

 莉徒は密かに夕香さんを女の目標として定めている感じがあるから、やっぱり選ぶ男性も諒さんのような人が良いのかな。

「そら夕香さんがいなくて、さらに諒さんがフリーだったらね」

「ま、まじか!」

 ドラムセットから腰を上げて諒さんは言う。持っていたドラムスティックを取り落としていた。

「絶っ対!別れないくせに!」

 そこは結局貴さんと同じなのだ。諒さんも夕香さんを宇宙で一番愛しているので、絶対にぐらつかない。二人がわたしたちを可愛がってくれているのは本当だけれど、それは別に恋愛感情でもなんでもない。

「お前だってそんな気ねぇだろ」

「まぁねん。流石に十七歳年上の男に手ぇ出すほど飢えてないわ」

 わたしは三六歳でも正直貴さんだったら良いな、と思ってしまう。けれど、言うと絶対付け上がるし、あくまでも英介と涼子さんがもしもこの世に存在していなかったら、の話なので絶対に言わない。

「年の話すんなよぉ」

「でも二人とも若く見えるんだからいいじゃん」

 涼子さんや夕香さん、史織しおりさんほどではないにしても、この二人も若く見える。人に見られるお仕事をしているとやっぱり外見も若いまま保てるのかな。

「見栄えの問題じゃねぇって。なぁ」

「中はもうかなりガタきてっからなぁ。徹夜とかすると一週間体調おかしいもんなぁ……」

 生活は不規則そうだし、外食も多いだろうから、食生活もきちんとしていないのだろう。ロックミュージシャンが自殺やドラッグ以外の理由で早死にしてしまうことが多いのはそんな不摂生が祟ってしまうからなのかもしれない。

「長生きしてくださいね……」

「お気遣いかんしゃだねぇ」


 休憩時間になってブースの外に出ると、丁度美朝みあさちゃんも出てくるところだった。今日は涼子さんにキーボードのレッスンを受けているところだ。でも使っている機材はシンセサイザーなので、シンセサイザーのレッスンなのかしら。

「あ、夕衣ちゃん、莉徒」

 にっこりとこちらに笑顔を向けてくれる。やっぱり美朝ちゃんって可愛いなぁ。

「よーっす、美朝。どぉ?」

「難しいけど、楽しいね」

 Vサインをこちらに向けて更に言う。楽器が楽しいと思えるのはとても良いことだし、上達も早い。その楽器が好きだとか、その楽器が楽しいだとか、そう思えなければ楽器はやるべきではないとわたしは思っている。だけれどもうその辺は殆ど運だ。わたしはギターという楽器を始めて手にしたときに、楽しいと思えたし、好きになれた。その気持ちは今も薄れていない。もしもそれがベースだったりドラムだったりしたら、そうは思えなかったかもしれない。そもそもそれを言い出してしまったら、実はわたしには水泳の才能がめちゃめちゃあって、金メダルも狙えるほどの潜在能力を秘めているかもしれないけれど、それに全く気付かず、ギターを楽しく弾けて良かった、などと思っているだけの人間かもしれないという、無限の可能性の話になってしまうのだけれど。

「美朝ちゃんはとっても筋がいいわ」

 美朝ちゃんの後から涼子さんが姿を現した。とても嬉しそうな顔をしている。きっと教え甲斐があるのだろうし、涼子さんも楽しみながら教えることができているのだろう。

「こんにちは、涼子さん」

「こんにちは」

 わたしに続いて莉徒も涼子さんに挨拶をして、美朝ちゃんに続けた。

「良かったじゃん、美朝。涼子さんのお墨付きなんてさ」

「うん」

 涼子さんの教え方がどうなのかまでは判らないけれど、きっと涼子さんのことだから、良いところを褒めて伸ばして行くような教え方をしているような気がする。わたしがそうだった訳ではないけれど、褒められて調子に乗らないような性格の人は、しっかりと褒めてあげた方が良いと思うし。わたしはどこかで有頂天になってしまったりもしやすいので、常に自分を戒めるようにしている。でなければ修練を怠ってしまうから。

「こっちも筋は良かったぜ」

「貴」

 今度はわたしたちの後ろから、貴さんと諒さんが出てきた。

「莉徒が巧いのは知ってたけど、夕衣にLAメタルやらせてあれほどとはなぁ。基礎がしっかりしてるとやっぱ全然違うわ」

「あ、ありがとうございます」

 そう、こんな風に言われてしまうとつい舞い上がってしまう。いけないいけない。貴さんの言葉は、わたしが一生懸命練習してきたから言ってくれた言葉だ。この言葉を鵜呑みにして調子に乗ってしまってはいけない。この先もいつも通り練習を重ねて、また褒めてもらえるようにがんばらないと。

「莉徒、夕衣ちゃん、巧くなったら一緒に演奏してね」

「もっちろん!」

 二人揃ってびし、と美朝ちゃんにサムズアップ。

「あとはドラムとベースかぁ」

「はっちゃんはいつでも声かけて、って言ってたよ」

 高校時代にも莉徒の思い付きで発足したIshtarイシュターのベースを担当してくれたはっちゃんこと宮野木二十谺みやのぎはつかちゃんは、メインでシャガロックというスリーピースバンドをやっている。ライブペースはそれほど頻繁ではないので、他のバンドも手伝える、とこの間言っていた。

「借り物なのがむかつくのよ。掛け持ってないのがいい」

 わたしたちの近い間柄の仲だけでだけれど、はっちゃんのベースやはっちゃんが所属しているバンド、シャガロックの評価は結構高い。あくまでもこの辺界隈だけでの話だけれど、宮野木二十谺といえば、シャガロックのベーシストというイメージは確かに定着している。

「あんた自分がまず掛け持ちしてるくせに……」

 莉徒もまたKool Lipsクールリップスのギターボーカルという看板を背負っている。わたしは基本的には一人で弾き語りをすることが多いし、Ishtarで活動していた期間は半年ほどだったので、髪奈かみな夕衣には特別なイメージはないだろうな。

「そらそうなんだけどさぁ。あいつ巧いから、巧いベース引っ張ってきただけでしょ、みたいに思われんのが腹立つ」

「考えすぎじゃない?」

 Ishtarの時はそんなことは考えていなかったはずだ。

「何かこうさ、ちょっと昔のジャイアンツみたいじゃん」

「お金で優秀な選手引っ張ってくるだけ、みたいな?」

 莉徒の言葉に涼子さんがそう返した。莉徒は時々話の引き合いに野球を出すことがあるけれど、わたしはスポーツのことはさっぱり判らない。涼子さんは野球の話も判る人なのか……。

「ですです。でも結局二十谺以上のベース見つけようとなると、中々いないし、いたとしても続くか判んないからねぇ。結局奴に頼らざるを得なくなるのよ」

 巧い巧いとは思っていたけれど、莉徒にそこまで思わせていたなんて流石としか言いようがない。

「いいじゃない。別に嫌ってる訳じゃないんでしょ?」

「勿論ですよ!嫌うどころかオレの女にしたいくらい好きだけど、なんていうのか、こう、パートは違えど、ヤツとは敵対して切磋琢磨!みたいな感じもあるんですよ」

 何でもかんでも一緒に、という訳ではない気持ちは少し判る。わたしが英介とバンドを組んだことがないのは、どこかでそういう気持ちを持っているからだ。

「貴とハンスみてぇだな」

「ハンスってゴセッタのギターの人?」

 ゴセッタとは最近名前を聞くようになったガレージロック系のロックバンドで、正式名称をGold Sex Helicopterゴールドセックスヘリコプターという。ガレージロック独特の激しい曲から昔ながらのオールドロックまでこなすストレートなロックバンドで、確か英介もよく聴いている。-P.S.Y-と同じ、GRAMに所属するバンドで、自由にやりたいことをやっているバンドだと、バンド者には注目もされている。ギタリストの人はハンスといっても本名は右塚大介みぎづかだいすけといって、ハンスというのはバンドネームなだけで生粋の日本人だ。貴さんとは大分年も離れていたような気がするけれど、それを言ったらわたしたちの方がもっと年は離れているのでなんら不自然なことはない。

「そ。仲は良いけど、あんまり一緒にやったことないんだ。昔何度かヘルプで入っただけ」

「なんで?」

「今お前が言った通りさ。一緒にやんのもすげぇ楽しいんだけど、ヤツとは別々のことをやって刺激し合った方がお互いの成長になんじゃないか、ってな」

「なるほど」

 わたしと莉徒とは違うスタンスだ。わたしの場合、誰かと一緒に音楽をやるのが楽しい、と思い出させてくれたのが莉徒だった。英介とは確かに何か一緒にやってみたいけれど、わたしの彼氏だし、カップルが一緒にバンドをやりたいだけ、なんていう我儘に友達を付き合わせる訳にも行かない。そういったしがらみなども色々とあってなかなか行動に移せない。

「好きの度合いとかってレベルでもないしな」

「というと?」

「莉徒が二十谺に思ってることと、夕衣に思ってることが、おれで言えば、ハンスに思ってることと、諒に思ってることと同じってこと。同じ好きでもいろんなベクトルがあっていいと思うしさ」

「なるほど」

 バンド者には様々なパートがいるように、友達にも様々なタイプがいる。そういうことだ。一々そんなことにやきもちを焼く必要はないけれど、隣の芝生なのかもしれないけれど、それでも莉徒にそこまで思われているはっちゃんは少し羨ましい。

「色んな立場があって、色んな空気感があって、それはそれぞれ大切にしなきゃいけないことよね」

「そうですね」

 涼子さんの言う通りだ。莉徒は出会った頃からそういった空気感は大切にしているような気がする。わたしがあまり人と狎れ合わないようにしていた時も、土足で踏み込むような真似はしなかった。転入初日に、クラスメートに囲まれてしまったわたしを、助けるように連れ出してくれたり、美朝ちゃんに慣れない転校生を気遣うように、というような助言をしたのは全部莉徒だ。

「まぁあとは二十谺の場合はアレだな、ちゃんと音楽が好きそう」

「そう!それよ!だから結局頼らざるを得なくなるの」

「え?」

 それは皆同じなのではないだろうか。そもそも音楽が好きでなければ楽器を手に取ろうなどとも思わないはずだ。

「や、ちがくて。多分あんたもそうだと思うけどさ、アンタこの先もずぅっと音楽やってくでしょ?」

「え、うん」

 まだ莉徒の言わんとしていることが判らない。なんだか貴さんや諒さんは判っているみたいだけれど。

「ま、あんたはそうよね」

「何?」

 わたしは莉徒ですら言われなくても判りきっているような当たり前の結論にひとまずは頷く。

「じゃあさ、例えば英里えりすー。英里とかすーって、ずーっとやってくと思う?」

「え、やるでしょ?」

 Ishtarはやらなくなってしまったけれど、Ishtarをやる前は確かすーちゃんと同じバンドに所属していたはずだし、すーちゃんはもう確か新しいバンドに加入しているはずだ。

「や、直近の話じゃなくて」

「私はさ、結婚しても、子供が生まれても、絶対音楽続けてる、って自分で思うのね」

「あー、そういうことか」

 やっと莉徒の言葉の意味を理解できてわたしは手を打った。

「確かに英里ちゃんは結婚とか子供生まれたりとかしたら、音楽まで他が回らなくなってそのうちやめちゃいそうなイメージはあるね」

 もはや今、正に英里ちゃんは音楽活動はしていない。それは音楽はずっと好きだけれど、できないのかもしれないし、こちら側の勝手な想像だから、決めつけではないけれど。

「すーはすーでなんか強迫観念だか使命感みたいにやってる気がしないでもないしさ」

 Ishtarの活動ペースが落ちた頃から、別のバンドも掛け持ちしていたらしいし、今はIshtarはもうない。きっとすーちゃんとバンドを組むことももしかしたらもうないのかもしれない。少し寂しいけれど、バンドとか音楽ってそういう一期一会なところがある。だから人と人との出会いやつながりをないがしろにはしてはいけない。

「まぁ実際にはこれからの英里とかすーがどうなるかは判かんねぇけど、そら責められんわな」

「誰も責めちゃいないけどさ、そんなの人それぞれ、色んな理由があるんだし。たださ、パーマネントにやってくならそういう、年食っても絶対音楽やってる、って判るような人じゃないと、これから先は組めないのかなぁ、って思う」

 あえて悪し様に言ってしまえば、気分次第でやるだとか辞めるだとかを決められては確かに適わない。わたしも理想を言うならばパーマネントなバンドを組みたい。莉徒で言えばKool Lipsがそれに当るのだろうけれど、そういうバンドが一つでなければいけない理由は無いし、莉徒だってKool Lipsだけではなく他のこともやりたいと言っている。だから、そんな莉徒と組むバンドならずっと続けて行けるものをやりたい。

「まぁ確かにな」

「でも、結婚とか出産って、女の人は結構正当な理由だと思うけど、違うのかな」

「正当だと思うぜ」

 美朝ちゃんが言って、諒さんが答える。個人的には音楽を辞める理由に正当性も善悪もない、とわたしは思っている。人それぞれの事情や、不都合や、道理があって辞めるのだからそれに是非はない。

「良い悪いじゃないしね」

 涼子さんがそう言ってくれてひとまず安心する。

「や、だから私だって悪いなんて言ってないでしょ」

 莉徒が苦笑して言う。確かに莉徒も言葉をちゃんと選んでいた。

「最悪なのは昔やってたけどもう忘れちゃったよ、アハハハー。とかいうヤツなー」

 けらけらと笑いながら貴さんは言った。わたしたちの周りにもきっといるだろうけれど、それは、やってはみたものの合わなかったり、楽しく感じなかったりするからなのだし、やはり善悪も是非もない。

「あぁいるよなぁー。昔やってたっつってF押さえらんねぇでやめたクチのくだらねぇやつ」

 なるほど。だとすれば少し話は違う。努力をせずに壁にぶつかって折れてしまうようでは、合う合わないの話ではないのかもしれない。確かにギタリストにとって、コードFは最初の壁だ。できないできない、音が鳴らない、と何度も何度もFの汚い音を鳴らしているうちに、自然とできるようになった。それは努力を苦と感じなかったこともあるのだろうし、努力を楽しみに変えて行けたからなのかもしれないし、そこも人それぞれだし、やっぱり運もあるのだ。音楽だけではなく何かを始めるのであれば、少なからず初心者のうちは努力が必要だ。最初の壁を乗り越えられないようならばきっと何をやっても続きはしないのかもしれない。

「そもそも好きじゃないのにカッコツケで手ぇ出すからそうなんのよね」

「確かに」

「きついなぁ」

 でもカッコ良さそうだから、と音楽を始める人は多い。むしろ殆どの人がそうだろう。わたしも早宮響はやみやひびきさんを見て、あんな風になりたい、と強烈に憧れた。そういった、カッコ良さそうだからという理由で音楽を始めた殆どの人の中の殆どの人が挫折する。つまりそれは、確率的に言えばほぼ当たり前の現象だ。だからそこを責めるのは酷だ。わたしたちはたまたま、それでも音楽を奏でることが好きでいられただけだ。音楽に関してはそう言えてしまう部分もある。

 だけれど、わたしは運動が昔からからっきしダメで、スキーやスノーボード、スケートなどにも連れて行ったもらったことがあるけれど、一度として上手にできなかった。

 大きな怪我こそしなかったものの、どれもこれも捻挫や打撲までして、それきり行かなくなってしまった。スキーヤーやスケーター、スノーボーダー(ライダーって言うのかしら)の立場から見てみれば、コードFを押さえられなくてギターを諦めた人と全く同じ。

 好きなことを続けている人間が偉いなんてことはこれっぽっちもない。

「話の論点がずれてるわよ」

「ですね」

 ぴん、と涼子さんが人差し指を立てて言う。取り立てて誰か個人の悪口を言っていた訳ではないけれど、誰にでも当てはまるようなことを喋っていては誰かを傷つけてしまうかもしれない。いつものこととはいえ涼子さんの気遣いは流石だ。

「まぁともかく、組むとしたらやっぱり二十谺しかいないわね」

 ベースがはっちゃんなのだとしたら。

「ドラムは?」

「オレ!」

「却下」

 諒さんの挙手をあっさり、しかも速攻で却下して莉徒はしかめっ面をする。

「え!」

 一瞬誰もが驚いて莉徒を見た。

「や、腕じゃないわよ。諒さんってプロだし社長な訳じゃん。諒さんは諒さんで自分の仕事があって、外せない仕事とかあるじゃない。それで練習できなかったりライブができなかったり、ってストレスになるかもでしょ。それに諒さんは嫌がるかもしんないけど、立場だってホントは凄い上の人だしさ」

「お前って、つくづく的確だなぁ……」

 そもそも莉徒は勉強をしなかっただけで頭は良い。高校三年生の夏までは大学受験も迷っていたし、それまでは遊んでいたけれど、いざ大学受験を決めて、集中して受験勉強をし始めたら、あっという間に成績を上げていってしまった。きっと受験勉強というところでも莉徒の頭脳は働いたのかもしれない。日々の授業や、期間テストなどは莉徒には向かないのだろう。

「ただ楽しいから組みゃいいってもんでもないしね」

「そうよね」

 それこそ高校生の部活動や、大勢の仲間と組んだり離れたりが当たり前の状況だったらそれも良いのかもしれないけれど、サークルにも属していなければ、大学生のバンドともなると社会人バンドとあまり立場は変わらない。それに当然バンドを組むことにも責任は発生するし、バンドの一員になったからにはやはりそこにはメンバーとしての責任も生じる。状況にも依るけれど、ただ面白そうだからと組むだけで続かないことが目に見えているのならばやらない方が良い。

 Ishtarを組んだ時はただ面白そうだったから組んだ。メンバーも皆が顔見知りで、誰かが誰かと組んだことがあるというメンバーばかりだった。やはりノリで作ったバンドだったからなのか、二月を最後に続かなくなった。明確な理由は判らない。ただ、わたしや莉徒からもIshtarでまた集まろう、という呼びかけもしなかった。まだそれから四ヶ月弱だけれど、この先Ishtarで集まって音楽を奏でることはないだろう。そう思うとやっぱりちょっと寂しい。

「あ、そっか……」

 あ、いけない。美朝ちゃんと組むという話をしているのに、終わってしまうことばかりを考えていた。美朝ちゃんもそれを敏感に感じ取ったのかもしれない。その声は少し沈んでいた。

「美朝のことは別よ」

「え?」

 胸を張って莉徒は言う。こういう時の無意味に自信ありげな莉徒の言動は、何故か救われるような気がする。

「美朝ちゃんの場合はただ楽しいから、っていう訳じゃないってことね、莉徒ちゃん的に」

「勿論ですよ。楽しいのは勿論あるけど、だって美朝の処女喪失はちゃんと」

「は?」

 まともに声をひっくり返して美朝ちゃんが頓狂な声を挙げた。判らないでもないけれど、莉徒の言っていることは判るのですぐに直訳する。

「ライブデビューのことね」

「そうそれ。ライブデビューは私たちがやんなくちゃだめでしょ、親友として!」

 音楽を始めたばかりの人と組んだことはわたしにはない。けれど、美朝ちゃんが莉徒やわたしとバンドを組んでみたいと言ってくれたのはとても嬉しかったし、莉徒の言葉を借りれば、美朝ちゃんが初めてステージに立つのに立ち会えるということだ。これは親心とでも言えば良いのか、どこかむず痒いけれどとても嬉しい。

「え、あ、う、うん」

「何よ煮え切らないわね。よもや七本槍のロリッ子アイドル髪奈夕衣に不満がある訳でもないでしょうに!」

「人のこと言える?」

 何という言い草だ。ちびで童顔はお互い様だ。莉徒の方が格段に可愛いけれど。

「まぁ莉徒と夕衣とアサが揃ったら誰も何も言えんな」

 がっはっは、と漫画みたいに諒さんが笑った。あまり良い気分はしない。あと一年でわたしも二〇歳なのよ。

「や、でもアサはちょっと大人っぽくなったよ」

「あ、確かにそうね」

 貴さんが言って涼子さんが同意した。それはわたしも思っている。着ている洋服やメイクの腕前が上がったせいなのかもしれないけれど、美朝ちゃんはつい数ヶ月前と比べてもぐっと大人っぽくなった。メイク栄えする顔なのかもしれない。とは言ってもわたしや莉徒と比べてだから、やっぱり実年齢よりは若く見えてしまう。メイクもナチュラルメイクだし、元が童顔だから劇的に大人っぽくなった訳でもない。けれどわたしにしてみたらそれはとても羨ましいことだ。

「だってこいつ胸大きくなったのよ!」

「え!十九歳からの?」

 莉徒がびし、と美朝ちゃんの胸を指差した。美朝ちゃんが反射的に胸を隠すような仕草をとったのだけれど、何故か涼子さんまでそれをやっていた。そう、涼子さんはわたしの憧れの女性像なのだけれど、唯一、ただ唯一、涼子さんの胸だけはどうしても憧れを抱けない部位なのだ。何故ならば涼子さんのバストサイズはわたしとあまり変わらない。それでもほんの少しわたしよりも大きいけれど。もしも涼子さんにはっちゃんほどの胸があったならきっと、きっと地上最強という言葉を手に入れられたはずなのに!

「うそ!じられないしん!」

「?」

「信じられない!」

 貴さんが何を言ったのか理解できなかったけれど、すぐにそれを莉徒がフォローした。それはいわゆる業界語というものなのだろうか。

「ちょ、ちょっと莉徒……」

 あちこちに視線を振りながらも美朝ちゃんは莉徒を止めようとする。可愛いなぁ。

「一番ガキっぽいのは……」

 貴さんの言葉があまりにも剛速球であまりにもストレートすぎるので悲しくなってくる。

「もう少しオブラートに包んでください……」

「え、そぉか?じゃあ一番可愛らしいのは……」

 くりくり、と視線を巡らす。つ、と涼子さんで止まったけれど、それもそうか。

「夕衣ちゃんでしょ?」

「うん」

 つまり涼子さんは今は度外視、ということだろう。何しろ貴さんが涼子さんラブ過ぎるのは商店街でも有名になっているほどだから。

「貴さんどんだけ夕衣のこと好きなのよ」

 涼子さんの手前、と言うのもあるだろうけれど、莉徒が呆れて言った。

「どんくらい好きか言葉では言い表せないほど好き」

 真顔でこっち向いてそういうこと言わないで……。勿論嬉しいけれど、物凄く恥ずかしい。

「涼子さんの次に、でしょ」

「え、ちがう。四番目くらい」

「よ……」

 あんな口説き文句を言っておきながら四番だとは思いも寄らない。何だろう。わたしには英介もいるし、既婚者の男性にそう言われただけなのに、何だろうこの結構なショック。

「地味にリアルな数字だな……」

「一番は涼子さんでしょー、次に越えられない壁があって、史織さんでしょー、そん次にあ、三番目だ」

 あ、何だろう四番よりも素直に嬉しい。わたし的憧れの女性ランク一位は涼子さんだけれど、二位もたかさんと同じく史織さんだ。その一位、二位に次いでわたしが三位というのは物凄く嬉しい。

「なんであたしが入ってないのかしら?」

「は、夕香大明神!」

 少し前から話し声が聞こえていたのかもしれない。夕香さんが貴さんの背後からのっそりと現れた。あぁそう、スタイル的には夕香さんが一番。背もはっちゃんほどではないけれど高いし、なにしろこの人はスタイルが抜群だ。もしかしたら 地上最強に一番近い位置にいる人なのかもしれない。できればその胸を触ってみたいけれど、まだ今ひとつその勇気がない。

「すまん夕衣、やっぱり夕衣は四番だった……」

「べ、別に何番でも良いですよ……」

 わたしも流石に夕香さんの前に躍り出ようなどとは思わない。

「くだらないことばっかり話してないで練習しなさいよね。もう結構いい時間よ」

「お、そうだ。長く時間取ってるからついたるんじまうな」

 煙草に火をつけようとした諒さんがそれを辞めて言った。

「おっし、んじゃやっか!」

「あいよう」

「美朝ちゃん、がんばってね」

 ブースに入る前に美朝ちゃんに声をかける。美朝ちゃんがこの先もずっと、音楽を、楽器を好きでいられるように。

「うん、ありがと。みなさんもがんばってくださいね!」

 にっこりと極上の笑顔で美朝ちゃんは言った。はぁ、可愛い。わたしにもその技を伝授して欲しい。

「アサは良い子だなぁ……」

 ぼそり、と諒さんが言う。

「夕衣は五番目だわ……」

 続いてぼそり、と貴さんが言った。

「……」

 もう勝手にして。


「はぁー、終わったぁ!」

「あ、そっちも終わり?」

「え!」

 ブースから出てうーんと伸びをしながら言った諒さんのすぐ後ろで声がした。涼子さんの声だ。

「美朝たちまだやってたの!」

「うん、楽しくて……」

 えへへ、と照れ笑いをしながら美朝ちゃんが言う。本当に楽しかったのだろう。判らないけれど、わたしも涼子さんのピアノと自分のギターでスタジオに入ったら、ずーっと飽きずに何かを弾いていそうな気がする。涼子さんの人柄は勿論、教え方も上手そうだし。

「ていうか涼子さんお店……」

「今日は姉がきてるの。だから色々お願いしちゃった」

 涼子さんのお姉さんにお店を任せて美朝ちゃんのレッスンをした、ということか。もしかして双子のお姉さんかな。

「お、晶子しょうこちゃんか。久しぶりだな」

「ドッペル涼子!」

 やっぱりそうだ。双子のお姉さんの晶子さん。わたしたちの仲間内ではまだ誰も見たことがない、まさしく涼子さんのドッペルゲンガーと言われている人だ。確か十三橋市で涼子さんと同じように喫茶店をしていると聞いたけれど、まだ行けていないままだ。

「ちょ、あ、わたし、お店行っていいですか」

「え、じゃあ私も行く!」

 さすがにそれは見てみたい。しかも涼子さんと並んでいるところを写真に撮りたい。

「焦らなくても逃げないわよ。今日はみんなの夕食の準備もお願いしてるから」

 え、夕食?苦笑しつつ言った涼子さんを見た瞬間、貴さんが大きな声を挙げた。

「からあげ!」

「あるけど、それはこれからね」

「え、何で」

「私が作らないと文句言うでしょ、貴は」

 さらに苦笑。貴さんの奥さんってきっと大変なんだろうな……。こういうときの貴さんは今までに何度も見ているけれど、本当に稚気の塊だ。

「うん」

「うんて」

 涼子さんに釣られてか莉徒も苦笑する。

「や、お前ね、涼子さんのからあげ食べたことないからそういうこと言えんだよ。言っとくけど宇宙一だからな」

 確かにランチメニューに定食はないし、ほぼ洋食がメインだ。なので、涼子さんのからあげは食べたことがない。

「お前こないだ百木屋でも同じこと言ってたじゃねぇか」

「ちがう、あれは世界一だ」

 宇宙一と世界一にそんなに開きが……。

「百木屋って食べ物あんまおいしくないでしょー」

「何故知ってる、未成年」

 わたしも実は知っている。百木屋はチェーン展開をしている居酒屋だ。高校の卒業式の日、隣町へ行って、生まれて初めて居酒屋でお酒を呑んだ。お酒自体は初めて呑んだ訳ではなかったけれど、居酒屋に行ったのは初めてだった。食べ物はやはり御飯のおかずではなくておつまみだった。わたしとしては目新しいものばかりで面白かったし、おいしいと思ったけれど居酒屋に慣れている、例えば莉徒なんかは安いけど食べ物はおいしくない、と言っていた。

「貴さんたちだって高校出たらもうそういう店行ってたでしょ?」

「あぁ、そらまぁなぁ」

 でも莉徒は卒業してからそういうお店に行き始めた訳ではない。もっと前からそういうお店には出入りしている。この童顔でよくお店の人に何も言われないものだ。

「からあげってさ、基本的には世界一旨い食いもんじゃん?」

「ど、同意を求められても……」

 わたしもからあげは好きだけれど、世界で一番おいしいと思う食べ物、と言われると、それはわたしの中ではからあげではない。

「世界一旨いものを涼子さんが作ったら、そら宇宙で一番にもなるだろ?」

「はいはいご馳走様」

 呆れた顔で莉徒が言う。い、いやきっと貴さんは惚気でそういうことを言っているのではない。

「お前らもう喫茶店で食うの禁止。しょうがねぇから飲み物だけは許してやる」

「はぁ?」

「涼子さんが作ったものは旨いでしょぉが!」

 ばんばん、と近くノテーブルに手を置いて力説する。それは否めないというか、当たり前というか、貴さんとかみふゆちゃんが毎日涼子さんの手料理を食べているんだと思うと心底羨ましい。

「何をそんな当たり前のことを」

「え」

 ぴくり、として動きを止める。

「涼子さんの料理が上手で、何食べてもおいしい、なんて皆知ってますってば」

 だからお店も繁盛しているのだろうし。涼子さんほどの料理の腕前と、涼子さんほどの人柄。この二つがあればお店を上手く回すには充分すぎてお釣りがきそうだ。

「そうそう。私が訊きたいのは、何故からあげが世界一だったり宇宙一だったりするかってこと」

「だっておいしいじゃん」

「や、おいしいけどさ」

 きょとんとした顔で答える貴さんを見てずっこけそうになる。苦笑して莉徒も突っ込むが、要するに大好物というだけの話なのだろう。

「貴さん、カレーとかハンバーグは?」

「カレーが四番目で、ハンバーグが五番目」

 え、からあげ、カレー、ハンバーグといえばお子様大好きランキングの御三家なのではないのか。わたしは一位にナポリタンが入るのでこのランキングには当てはまらないけれど、大体の男の子はこの三品で満足するものだとばかり思っていた。

「え、その間は?」

「同率二位でチキンカツとささみフライ」

「鶏肉好き過ぎだろ……」

 からあげにチキンカツにささみフライ。確かに系統としては統一されすぎているけれど。

「あだ名は鶏肉にしてあげますね」

「や、もうチェキンでいいでしょ」

「ノーサンキューだ」

 胸の前でバッテン印を作って貴さんは言った。鶏肉も嫌だけれどチェキンはもっと嫌だ。

「ていうか、そんな、晩御飯?」

 そうだ。いきなり晩御飯をご馳走になってしまうなんて。そもそも今日はバンド練習があったから、夕飯は外食の予定だったけれど。

「そ。今日はみんな揃うだろうから、と思って。あ、何か都合悪い?」

「い、いえ、そうじゃなくて……」

 そもそも外食の予定だったのだから都合など何も悪いことはなく、むしろ涼子さんの手料理を頂けるともなれば是非とも参加したいけれど、そこまで甘えてしまって良いものか。そもそも涼子さんは飲食店を営んでいるのに、その涼子さんの料理をご馳走になってしまうなんて、喫茶店でタダ食いするようなものではないか。

「じゃあ遠慮はしないこった。うちの常連なら判んだろ?」

「ですね、じゃあお世話になります」

 貴さんの言う通りだけれどそれでも悪いというか、甘えているなぁ、という気持ちが出てしまう。今度何とかして涼子さんにお礼をしよう。

「かしこまりー」

 無邪気な笑顔で涼子さんは頷いた。

 やっぱり素敵な人だなぁ。


 11:からあげ 終り

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