1 大舟乃愛、聖女に転生する
「おおっ、聖女がお目覚めになったぞ!」
「奇跡だ! やはりこの
「これはオルビオン聖領の歴史上、初めての奇跡!」
(なんでこんなに騒がしいんだろう……)
起き抜けのぼんやりした頭で記憶をたどる。
――金曜日の夜、あたしは会社帰りにいつものハープ教室に寄った。そしてハープ教室の帰り道に――
「いやあああ!!」
乃愛はがばりと起き上がった。周囲に集まっていた人々は驚いて
しかし乃愛はそれどころではない。
大変なことを思い出してしまった。
(あたし、車にはねられた……)
駅前の横断歩道。右折してきた車が塾帰りの子どもにぶつかりそうだと思った瞬間、乃愛は反射的に飛び出していた。子どもを
乃愛を驚きと
(やっぱりあたし、車にはねられて死んだんだ。だから――)
「――ここは天国……?」
「いいえ、聖女様。ここはオルビオン聖領ですよ」
近くにいた少女が、
(聖女様? あたしのこと??)
乃愛をきょろきょろ周りを見るが、半径二メートル以内のエリアには乃愛とその少女とぎっちり
「
ははーっ、と、人々は乃愛に向かって次々とひれ
(お、落ち着けあたし)
乃愛は顔を引きつらせながら考える。
(ここは、異世界ってやつよ。たぶん。あたし、異世界転生したんだわ、きっと)
そう考えると、少し気持ちが楽になる。
(あれ? でも待って? この聖女様とかいう人は、一度死んだみたいよね)
乃愛にとっては転生だが、この聖女様にとっては生き返り、
(再誕した異世界の聖女様か。人生やり直すには、素敵な立ち位置かも)
いきなり
「聖女様、さ、お立ちになれますか?」
手を差し伸べてくれた少女に、乃愛はぎこちなく微笑んだ。
「あ、あのう、聖女様って呼ばれるの、恥ずかしくって……乃愛って呼んでいただければ」
すると、どよめきの声が上がった。
「聖女様が新しいお名前を!」
「
「ノア様!」
(うわあ、すごく喜ばれてる! ていうか、なんで? なんで??)
ノア様、と人々が歓喜に叫ぶ中、白いひらひらのローマ時代のような衣裳を着た
(すごい……あたし、すごくチヤホヤされてる)
現世でこんなにチヤホヤされたことはない。
家では三人
(わーい、異世界最高!)
こうして、
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