水の妖精の愛し子の巣立ち6
『どうしたの、シェナ? 元気ないわね』
いつもと様子の違うシェナを心配して水の妖精が顔をのぞき込んでくる。
「……何でもないわ」
シェナは力なく
彼女に言っても仕方ない。
『何でもないという顔じゃないんだけど』
シェナは弱々しく首を振る。
だが水の妖精は食い下がる。
『シェナ、話してみて?』
話しても仕方ない。
「大丈夫だから。気にしないで」
それでも水の妖精は退いてはくれない。
『やっぱり何かあるのね? 話してみて』
真剣な顔でシェナの
これは言わないと絶対に退かないわね。
心の中で溜め息をついてシェナは重い口を開く。
「……母が、町で暮らしてみてはどう? 、って」
『あら、なんだ、そんなことなの。すごく暗い顔をしていたからもっと深刻な何かだと思っていたわ』
あっけらかんと水の妖精が言うのを信じられない気持ちでシェナは聞いていた。
『シェナ?』
どうしたのかと水の妖精が首を傾げる。
「……貴女はそれでいいの?」
シェナに会えなくなってもいいの?
それが嫌だと思っているのはシェナだけなのだろうか?
友人だと思っているのも、シェナ、だけ……?
その可能性を考えただけでショックだった。
『どうしたの、シェナ!?』
水の妖精が慌てている。
「貴女は私が町に移り住んでも、いいの?」
『え、もちろん構わないわよ?』
それがどうかした? と実に無邪気な顔だ。
そうしたらそうそう気軽に会えなくなるのに?
それでもいいというの?
声に出せない。
シェナの顔をのぞきこんでいた水の妖精がふと気づいた顔になった。
『もしかして私に気を遣っているの?』
ふるふると首を振る。
そうじゃない。
そうじゃなくて。
シェナが、寂しいだけだ。
水の妖精に会えなくなるのが寂しい。
水の妖精がどう思っていたとしても……
『町に移り住んだって私たちの関係は変わらないわよ?』
「本、当……?」
『ええ、本当よ』
「で、でも……」
それは友人という関係が変わらないってことよね?
これまでのように毎日は会えないのよね?
聞きたいけど聞くのが怖い。
『それとももっと広い世界を見に行く?』
こてりと首を倒して訊かれたことが理解できなかった。
だって今は町へ移住するかもしれないという話をしていたはずだ。
「ん?」
どういうことだろう?
シェナは思わず首を傾げた。
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