風の妖精の愛し子とキャラバンの仲間たち6

居心地が悪い。

誰も彼もがジーフがやったと疑っているのだ。

ジーフは人目を避けるために荷車の端に乗り、夜営地ではテントの陰に隠れた。


風の妖精はずっと怒っている。

そのせいでずっと強い風が吹いている。

その風は賊を寄せつけないが、代わりにキャラバンのほうでもいろいろ大変だった。


風でバタバタと布が翻り、テント一つ張るのも一苦労だ。

いつもよりもずっと時間がかかって何とかテントを張り終える。


火も気をつけなければならない。

なかなか火がつかないばかりではない。

火がついてもすぐに吹き消されたり、逆に燃え上がったりする。

油断していると危ない。

いつ火の粉が飛んでもおかしくなかった。

子供たちは火の近くに行くことは禁止された。


夜も一晩中風のうなる音が聞こえ、眠りを妨げられる者が続出した。




そういうことが重なってますます険しい表情でジーフを見てくる者が増えていく。

タニトは胸を張っていろと言ってくれたが、そうなるとますますジーフは隅のほうに隠れるようにしていることが増えた。


悪戯もぴたりとやらなくなった。

それをやはり犯人だからやらなくなったのだ、と言う者もいたが、そうではない。そうではないのだ。




風の妖精が見えなくなったことで、ジーフは風の妖精にも見捨てられたという者まで現れる始末だ。


『そんなはずはないのにね。ジーフは風の妖精おいらたちの愛し子だ。見捨てたり嫌ったりするなんてあり得ない』


馬鹿にした様子で風の妖精が吐き捨てる。


『そもそも何でジーフが風の妖精おいらたちから見捨てられたということになるんだ? キャラバンの荷物がどうなろうと風の妖精おいらたちには関係ない』


風の妖精の愛し子ジーフがいるから風の妖精はキャラバンを守っている。

ただそれだけなのに何を勘違いしているんだか。

風の妖精はただ愛し子ジーフだけが大切なのだ。



*



夜。

子供たちを寝に追いやった後でのこと。


「まったくジーフにも困ったものだ」


一人が言うと、何人かが賛同の声を上げた。


「ジーフは何もしてないだろう」


反論の声を上げたのはタニトだ。

彼以外ジーフを庇う声は上がらない。


「ジーフが荷物を崩したんだぞ? それを謝りもしない」

「お前はそれを見たのか?」

「いや、直接は見てない。だがな、散乱した荷物の前にジーフがいた。それで十分だろうが」

「どこが十分だ。何の証拠にもならないだろうが。だいたいジーフはやってないって言ってるだろう」

「ジーフの言うことなんて信じられるか」

「悪戯ばかりしても、ジーフは嘘をつくような奴じゃない」

「どうだか」

「信じないのか?」

「信じられないのは、ジーフの日頃の行いのせいだろう!」

「お前は何を見ていたんだ? ジーフは人を傷つけるような悪戯は一度だってしたことないぞ?」


勢いよく噛みついてきた男は固まる。

考えたこともなかったようだ。

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