森の隠者と火の妖精に呪われた町3
「それで火の妖精、お前たちはどのような罰をこの町に与えたんだ?」
『簡単だよ』
『使える火を小さくした』
『
『あの子は子供たちを助けただけなのに罵られた。だけど怒りもせずにこの町に火を残した。優しい子なんだ』
『だからね、あの子のことを侮辱すれば、どんどん使える火を小さくしたんだ』
人間たちの反応はさまざまだった。
顔を真っ青にしている者たちは恐らくそのことに気づいていなかったのだろう。
その中で子供たちはきょとんとしている。こちらはどういう反応なのだろうか?
一人、先程から火の妖精の愛し子を罵っている男だけは忌々しげに顔をしかめている。
完全に原因と現状を把握した者たちから男は距離を取られ始めた。
男は気づいていない。
自分で自分の首を絞めているのも理解できているかどうか。
憎めば憎むほど、罵れば罵るほど扱える火は小さくなり、それがまた憎しみを
それにしても。
パーシファル・パーンは男を見る。
これだけ悪しざまに火の妖精の愛し子と"火"を罵って、それでも火自体を全て取り上げられなかったのは奇跡に近い。
よほどその火の妖精の愛し子がうまく宥(なだ)めたのだろう。
思わず言葉がこぼれ落ちた。
「火の妖精の愛し子と火そのものを侮辱してこの程度で済んで幸運だな」
その言葉にも男は噛みつく。
「火の妖精の愛し子だと!? あいつは災いをもたらす者だ! 金色の虹彩の赤い瞳がそれを示している!」
「"金色の虹彩に赤い瞳は災いをもたらすーー"だったか?」
そんな伝承がある地域があることは知っている。
それがこの辺りだったのか。
それが、彼女が不当に貶められている理由か。
これは、厄介だな。
長年伝承として伝えられ信じられてきたことはそう簡単には認識を改めさせることはできない。
これの調停には骨が折れるだろう。
火の妖精のほうも愛し子を侮辱されたとあっては引くはずがない。
むしろ、よくこの地域に火の妖精が留まっているものだと思う。
こんなことがなくとも火の妖精がいなくなってもおかしくはない。
……その場合でも、世界がバランスを取るために、サルフェイの森で生じた小さな火の妖精がこの地域に解き放たれるだけだろうが。
よく見れば、火の妖精の大半は小さな姿だ。
既にその兆候は出ているのかもしれない。
「そうだ! あいつがいたから俺の店は火をつけられ、そのうえまともに火も使えなくなった。すべてあいつが悪い」
ざわざわと火の妖精が
『そんなの自業自得だよ!』
『あの子は関係ない!』
『恨みを買ったのは自分の行いのせいでしょ!』
はぁとパーシファル・パーンは溜め息をつく。
正直もう帰りたい。
この男の言い分もそれに同調する一部の町の住人たちも気分が悪い。
言葉が伝わらない者の相手は疲れる。
役目なので投げ出せないのがつらいところだ。
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