火の妖精の愛し子と旅人の青年8
三日ほど歩いて次の町に着いた。
道中は思っているよりも楽しかった。
リトは同行者としては最適だった。
一緒にいて楽しいのだ。
何よりグローリアのことを
火の妖精はすっかりリトのことが気に入ったようだった。
ずっと彼の前に姿を現している。
今、時刻は昼を少し過ぎた辺りだ。
「まずは食事にしましょうか?」
「ええ、そうしましょう」
グローリアたちは目についた大衆食堂に入った。
「いらっしゃいませ」
にこやかに言った店員はグローリアを見るとあからさまに顔をしかめた。
グローリアは内心で、ああ、またか、と思うだけだったが、火の妖精とリトはむっとした顔になった。
グローリアはぽんぽんと
「……お食事ですか?」
食堂で、普通その質問はあり得ない。
「ええ」
頷くと店員は顔をしかめた。
「少々お待ちください」
「別のところにしましょう」
「どこも似たようなものよ」
「ですが、」
「一人あの言い伝えを信じている人がいたら、町全体で信じていると思ったほうがいいわ」
それはグローリアの経験則だった。
そこへ店員が戻ってくる。
「窓辺の席へどうぞ」
グローリアは一つ頷くと、窓辺の席に向かった。
不満そうなリトが後をついてくる。
空いている席に着くとエプロンをした男が近づいてきた。
「料理は出してやるが食べ終わったらすぐに出ていってもらいたいね」
吐き捨てるように言われた。
この手の
「それで結構よ」
「日替わり定食でいいか? すぐできる」
リトを見ると無言で頷いたので「いいわ」と返事をすると男は足早に離れていった。
料理が出てくるのを待つ間にリトが怒りを隠そうともせずに言う。
「料理人が火の妖精の愛し子を
リトがこんなに怒るのも珍しい。
と言えるほどは親しくはないが、普段穏やかなリトが怒っている姿を初めて見た。
グローリアの心は不思議と温かくなった。
料理を食べ終えるとさっさと食堂を出て薬草を扱う店に向かった。
幸い、というのもどうかと思うが、薬草を扱う店の店員はグローリアをちらりと見ただけで薬草を適正価格で買い取ってくれた。
無愛想だったが、嫌悪丸出しの表情で見られるよりずっといい。
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