火の妖精の愛し子と旅人の青年7
「一つ、お願いがあるのですが」
リトが静かに切り出した。
『言ってみろ』
火の妖精が尊大に言う。
グローリアも頷く。
それを見てからリトは言った。
「是非しばらくご一緒させていただけませんか?」
グローリアは火の妖精と顔を見合わせる。
『俺は別に構わんぞ?』
判断はお前に任せる、好きにしていい、と言外に言われる。
グローリアはリトをじっと見る。
今までの言動から悪い人ではなさそうだ。
「ええ、私も構いません」
そう言ってから一つ懸念を思い出す。
「でも、一緒にいると不愉快な思いをするかもしれませんよ?」
リトは言われた意味がわからないと言うようにきょとんとする。
「『金色の虹彩に赤い瞳は災いをもたらすーー』って噂、聞いたことがありません?」
隣ではその言葉を聞いただけで火の妖精が不機嫌に口を曲げている。
リトはますますきょとんとして、
「また、根も葉もない言葉ですね。火の妖精が不機嫌になっても仕方のないことです。いえ、当然ですね」
『ほぅ……よくわかっているな』
「そんなくだらないことを言う人がわかっていないだけですよ」
ばっさり切り捨ててくれるのが何だか嬉しい。
「なので、ご迷惑でなければご一緒させてください」
「気にしないなら構いません」
リトがぱっと笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「えっと、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりとお互いに頭を下げていると火の妖精が口を挟んできた。
『そろそろ名乗ってもいいんじゃないか?』
火の妖精に言われてはっとした。
「そう言えば名乗ってなかったわ。ごめんなさい。私はグローリアって言います」
「グローリアさん。素敵なお名前ですね」
「あ、ありがとうございます」
「それと、敬語なんて使わなくていいですよ」
「えっ、でも……」
「お気になさらず。僕は気にするほどの存在ではないので」
それはまた、
『随分卑下するな』
グローリアが言えなかったことをずばっと火の妖精が言う。
リトは目を
「そんなつもりはないのですが……」
『だがそのような言い方だったぞ。なあ?』
グローリアも頷く。
リトは困ったような表情になった。
自覚はなかったらしい。
『お前は俺が気に入るくらいの腕前だ。自信を持て』
「ありがとうございます。これからも精進致します」
『おぅ。俺が認めたのだから自分を卑下する言葉を使うのは許さん』
リトは柔らかく
「承知しました」
ほっとしたグローリアだったが、「あ、でも敬語はやめてくださいね。さんづけも」と念を押され、渋々と了承させられた。
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