火の妖精の愛し子と旅人の青年5

「そうですね。彼がいてくれるので大丈夫です」


グローリアが頼りにしているとわかり、火の妖精が嬉しそうに微笑わらう。

グローリアは火の妖精に微笑わらいかけてから青年に視線を戻す。


「心配してくださってありがとうございます」

「いえ、よく考えたら、よく知りもしない男が一人では危ないと言ったら余計に警戒しますよね。考えが至りませんでした」

『まあ、普通は確かにそうだな』


グローリアが何か言う前に火の妖精があっさりと言う。


「そうですよね……」

『だが彼女を心配してくれたことは嬉しい』


青年はきょとんとする。

だがゆっくりと言われた言葉の意味を理解したのか、穏やかに微笑んだ。


「光栄です」


グローリアはどうすればいいのかわからない。


『ほら、お前も礼を言っとけ』


火の妖精に促され、グローリアは頭を下げる。


「ありがとう、ございます」

「いいえ。こちらこそ出過ぎた真似をしました」


青年もまた頭を下げる。

二人で頭を下げ合ったままになっていると、火の妖精が笑い出す。


『お前らそのへんにしとけ』


はっとして二人で顔を上げる。

目が合って苦笑い。

本当に今まで会ったことのない人種だ。

どう接していいのかわからない。


困った時はついつい火の妖精を見てしまう。

物心ついた時からずっと一緒にいてくれるので頼ってしまうのだ。

それで周りに奇異な目で見られる羽目になるのだが、グローリアにひどい言葉を投げつけてくる人間よりも、幼い頃から慈しんでくれる火の妖精を慕うのは自然なことだ。

火の妖精はグローリアに笑いかける。


『よかったな』


ぐしゃぐしゃと乱暴に火の妖精がグローリアの頭を撫でる。

グローリアを見る火の妖精の瞳は限りなく優しい。

そんなを見てしまうと文句も言えなくなる。

無言で乱れた髪を手櫛で直した。


グローリアと火の妖精のやり取りを青年はにこにこと微笑わらいながら見ている。

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