第8話 悲しい報告
小屋の扉の幅は広くないので、幸い、裸のステファニーがはっきりと見えたのは隊長だけだった。隊長は訝る騎士達を回れ右させ、ステファニーをマントでくるみ、王宮へ運ばせた。
侍女達に身を清められ、医師の診察を受けてもステファニーは目覚めなかった。エドワードはステファニーをすぐに見舞って、目に見える怪我がないことに安堵していたが、念のため人払いをして別室でリチャードとともに医師の話を聞いた。
「王太子殿下、大変言いにくいことですが、エスタス公爵令嬢は純潔を失っております」
「そ、そんな・・・!」
エドワードはすぐに妊娠の可能性を思いついて医師に懇願した。
「薬草茶をすぐに処方して下さい!」
「申し訳ありませんが、教会の意に反することはできかねます」
「どうしてもだめですか?!」
「大変申し訳ありません・・・正規の医師としてはできかねます」
「・・・もうよい。出て行け!」
エドワードは医師の背中を見送って、ソファのクッションを床に投げつけた。
「・・・くそっ!なんてこった!かわいそうなステフィー!リチャード、薬草茶をなんとか入手できないか?」
「入手先の伝手はあるから、今すぐ用意する」
「私達はおそらくすぐに彼女に接触できなくなるだろうから、急ぎで頼む」
「ああ、任せてくれ」
エドワードは半ば放心状態で、部屋を出て行くリチャードを見送った。だが、すぐに気を奮い立たせて国王ウィリアムの私室へ急いだ。
ウィリアムは、既に医師の報告を受けていた。
「エスタス公爵令嬢は、修道院に入ってもらう」
「そんな!エスタス公爵家で保護できないのですか!」
「エスタス公爵が修道院行きを主張している」
「それでは離宮で静養してもらうのでは・・・」
ウィリアムはエドワードの言葉を最後まで聞かずに遮った。
「馬鹿なことを言うな。婚約者でもない女性を王家で保護するわけにいかない」
エドワードは父の言うことは最もだと理性では分かっても、本能では理解したくなく、なんとか別の解決方法がないかと考えて堂々巡りに陥っていった。
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