Break of Memories

F

第1話 彼と彼女の火星での日常

献身せよ。奉仕せよ。友愛せよ。諸君らの存在理由はそれだけである。

地球に住むすべての人々のためにその命を惜しんではならない。

自らの命にのみ執着する者、献身の心を持たぬ者、恐怖に臆して進むことを恐れる者、我欲に固執する者。

これらの心を持つものは……諸君らの存在理由を履行できない不良品である!


これが僕たちの記憶にある最初の言葉だった。



*   *   *


朝起きて、カーテンを開ける瞬間が好きです。

そのカーテンから差し込む光と空を見上げるのはもっと好きです。

でも、今見えている空は地球にいた時と違って作り物の空。

火星の周辺に300個近く作られた四角い箱型の大きな居住型宇宙船、通称フロンティア。

その内部に疑似的に再現された空でしかなかった。

それでも…きれいだと私は思いました。思えるようになっていました。

私の大好きな人との3年間の生活のおかげで。


私は金色の長い髪をほぐしながらベットから起きて窓から差し込む光を全身に浴び、背を伸ばす。


「うぅ~ん……よし」


時刻はちょうど朝の6時すぎ。

体をほぐしていると後ろから声がした。


「おはよう」

「あっ、シュン。おはようございます。今から部屋にいこうと…えっと、背広を着ているってことは仕事ですか?たしか今日は午前10時から仕事だって言っていたような」

「うん。急な呼び出し。まあ仕方ないよ」


そういって彼、私の想い人でもあるシュン・キリサワはやれやれといった感じで微笑んだ。


「そうですか…朝食を一緒にとれないのは残念ですがお仕事ですしね」


15歳の単なる学生の私と違って同い年ながら彼は働いている。詳しいことは教えてくれないけど危険な仕事ではないという。しかし決してまともな仕事ではないと私は思っています。

地球で生体兵器として試験管の中で生まれた私たちにまともな戸籍なんてあるはずもないので表立った仕事には恐らく就けない。それくらいは私でも予想できます。

もっと言えば、今の私たちの生活の後ろ盾になっている人たち……地球から火星まで逃がしてくれた人たちからしても平穏な職に就いてまっとうな生活なんてきっと望まない。


「それじゃあ行ってきま――うぅん!?」


仕事にいこうとする彼の唇にキスをして、私はそのまま強引に舌を絡める。

私はきっと寂しいのだと思う。危なくない仕事だと説明されても…不安はぬぐえなかった。

お互いの唾液が混じったモノが少し口から垂れてくるのを感じ、そして数十秒後。


「……本当は、その…できれば今日も学校に行く前に『したい』のですが…シュンのお仕事もあるということでこれで我慢します…」

「あ、ありがとう…。でもねルリィ…一つ聞きたいことがあるんだけどね?」

「はい、なんでしょうか?」

「……なんで服を脱ぎ始めてるの?」

「…………したくなってくれましたか?正直、抱いてもらえないと少し寂しいです」

「本当に今日は時間がないからダメ!というかまったく我慢出来てないからなそれ!?」


そういうと「行ってきます!」と宣言してシュンは足早に家から出て行ってしまいました。残念…。


「はぁ…私も少しゆっくりしたら学校に行く準備をしましょう」


そう、彼の部屋に行って彼の布団で少しゆっくりしましょう。

彼のぬくもりと匂いを少しでも感じながら。



時は西暦2402年6月3日の火星。

世間は『火星独立運動』とか『地球の支配者層への反抗』とか『火星市民に自由を!』とかで中々に物騒な雰囲気が漂っている昨今ですが、ようやく大好きだった同居人と恋人同士になれた私ことルリィ・リリアントにとっては毎朝の日課になってきている彼との逢瀬の方が大事な関心ごとなのでした。



*   *   *


「「「おはようございます!教官殿!教導部隊大尉殿!」」」

「ああ、おはよう」


僕、シュン・キリサワの前には100名近い屈強な男性たちが整列をし、挨拶をしていた。

ここにいる全員が僕の指導を受けている兵士達だった。

僕の仕事…それはこれから起こる…いや、すでに各地で発生しつつある火星の独立をかけた戦争のためにレジスタンスの兵士を育成することだった。

僕は地球で兵士として作られ、多くの訓練を積んだ。

その経験と先天的に強化された肉体の強靭さを見込まれて現在僕とルリィの後ろ盾になっている人たちに頼まれ、こうして教官職をしている。

ちなみにこの場所は表向きは民間企業の保有する敷地内の地下にある倉庫…となっているが実際は武力革命を目指す火星独立派の拠点の一つだ。

こうした拠点が今や火星中に点在しており、地球側の意向を受けた治安部隊の摘発から身を隠していた。


「諸君たちの訓練もそろそろ最終日だ。この訓練終了後、諸君たちは火星の独立を勝ち取るための先槍として活躍してもらうことになる。言い換えれば諸君たちの双肩に火星圏50億人の市民の未来がかかっている。しっかり励め!」

「「「はっ!」」」

「結構。それでは各自、既定の訓練を開始しろ!」


僕のその声を聞いて各自が今日の訓練メニューの消化を始める。


(それにしても最近…というかこのひと月、暇があればルリィにセックスを求められるせいか寝不足で体がだるい…。ただでさえ向いてない仕事が余計つらく感じる)


内心でため息をついているとこの訓練部隊で僕の補佐をしてくれている士官であるアッシュビル中尉が声をかけてきた。


「大尉殿、どうかなさいましたか?疲れているように見えますが」

「少々気だるいだけです。問題はありません」

「そうでしたか。大尉殿はご多忙のご様子ですし少し休まれますか?」


僕は少し悩んだ。これが職務からくる疲れなら素直に気遣いを受け入れたかもしれない。

しかし疲労の大きな原因が「性欲が強い恋人に付き合ってるせいで体がややだるいです」となると…気遣いを受け入れるのにためらいが生じた。

正直いうと昨日も夜8時から5時間ほどみっちりルリィに求められた。

行為が終わってルリィが満足して寝息を立てたのを見計らい、僕は自室に戻って書類仕事をして終わって寝たのが深夜の3時過ぎ。

そこから緊急の連絡がきたのが朝の5時で6時半にはここに来ることになってしまった。2時間睡眠だった。そりゃ疲労感を感じるのも無理はないのだが…。


「いや、大丈夫です」


僕は断ることにした。さすがにこの理由で仕事中に仮眠をとるのはちょっと…という気持ちが勝った。


「そうですか?もしお休みになられるのでしたらすぐにおっしゃってください。休憩室は空いておりますのです」

「ありがとう中尉。基本的に私はAHパイロット候補の訓練につく。他は任せました」

「承知しました。大尉殿」


そういって僕はAHパイロット候補生の指導に集中することにした。

AH…正式名称『Armed Humanoid』

5年前から地球の各国軍で実用化された全高6m前後の新型人型兵器の総称だった。

従来の兵器に比べて汎用性に優れ、巨大で複雑な構造物内でも高機動性を発揮できる兵器として開発された。

地球圏や火星圏で膨大な数が建造されているフロンティアや各所に点在する資源衛星内での戦闘では従来の戦闘機や戦車では不向きということで結構長期にわたって研究が行われていたのがようやく実用段階で入ったのである。

ちなみに地球で兵士をやっているころにAHのテストパイロットとして僕も参加した経験があるのこうして訓練教官の仕事が増えてしまった。


「教官殿、本日はよろしくお願いします」


パイロット候補生の中のまとめ役がAHパイロット用のシミュレータールームに入った僕に挨拶をしてきた。


「ああ、こちらこそよろしく頼む。とはいっても諸君たちはパイロット候補生として優秀だ。もう大半のカリキュラムは消化しているだろう」

「教官殿のご指導のおかげであります」

「素直に喜んでおくよ。ありがとう」


最初は僕を見て「なんだこのガキは?」みたいなある意味当然な対応をしていた者も正直多かった。だが、僕が教官を務めることに懐疑的な人間全員を訓練初日に実力を持って制したのと個々の適性に合ったカリキュラム作りが評価され、今や訓練兵のほぼ全員が素直に信頼をもって接してくれている。

教官が自分に向いているとはあまり思わないが仕事ぶりを素直に認められて信頼関係を築けるのは素晴らしいと僕は思う。


「しかし大尉殿。今日はずいぶんとお疲れではないですか?」

「……そ、そうか?」

「はい。何となくですがそのように感じます」


まさか訓練兵にまで疲れているように見えているとは…よっぽどなんだろうか?


「……一応聞くが何をもって私が疲れていると判断したんだ?」

「はい。少々足腰の動きがいつもの教官殿に比べると重いように感じます。特に腰回りに負担がかかっているように見受けられましたのでデスクワークの影響かと思いまして」


ごめんなさい。それデスクワークじゃなくてもっと下世話なことで腰を酷使したんです。本当に気を遣わせてごめんなさい。


「……まあ最近少し腰痛というか腰に負担がかかってる感じは確かにあったな…。しかしよく気が付いたな」

「はい。教官殿が相手の挙動の見極め方を教えてくださったおかげです。不調な人間の挙動の変化にだいぶ気が付くようになりました」


一人が僕の不調部分を指摘するとほかの訓練兵も「私もそう思っていました」といった感じで声を上げはじめた。

本当にみんな優秀で助かるし個人的にもうれしい。

だから足腰がつらい本当の理由に気が付かないでくれよ頼むから。


「教官殿。休憩室で少し休まれてはいかがですか?」

「自分もそれが良いと思います。教官は普段からお忙しいようですし不調な時ぐらい少しお休みになってもいいかと」

「それに教官殿も行ってじゃないっすか!不調な時はまず休め!ってね」


誰かから気遣いの言葉が飛んできたのを皮切りに次々と「休んではどうか?」という声が聞こえてくる。

本当にありがとう。同時に凄くいたたまれないし不調の理由が情けなさ過ぎて死にそうだ。


「そ、そうだな。不調な時は素直に休んだ方がいいな…うん」


気遣ってくれた兵たちに会釈しつつ僕はシミュレーションルームを出て行った。

もう…なんというか…あの空間に居づらい…。


とりあえずすぐにアッシュビル中尉に声をかけて休憩室を使わせてもらうことにした。

中尉は「あなたはまだお若いのに働きすぎなのです。どうか不調の時くらい年上を信じて休んでください」と温かい声をかけてくれた。

涙が出そうだった。いろんな意味で。


休憩室についた僕はすぐに眠りに落ちていった。


*   *   *


懐かしい夢を見た。僕とルリィの昔の話だ。

元々、僕とルリィは15年前に地球のとある研究所で遺伝子操作を受けた試験管ベビーとして作られた。

その研究所は表向きは製薬を研究していたようだが裏では「過酷な宇宙環境にも適応できる強靭な新人類を創造する」という目的で200年以上前から活動している組織だった。

だがある時、ヨーロッパのとある国の要望を受けて蓄積していた遺伝子操作による人種創造技術を用いて強靭な兵士を生み出す仕事も請け負うようになった。

僕たちもその仕事の一環で作られた子供だった。

そこで生み出された子供たちは正義感にあふれ、仲間意識が強く、自分の属する集団や国家への忠誠心が極限まで高まるように先天的・後天的問わず様々な調整が加えられていた。

僕も例に漏れずそういう調整を受けた。だが、どんな『製品』にも不良品やバグは付き物らしい。

不思議と僕は「国家や組織への無条件の忠誠」という気持ちを抱けなかった。

むしろ誰かに命令されることに徐々に嫌気が差し、いつの間にか自分の考えで人生を生きてみたいと思うようになっていた。

「地球や人類の未来のための作られた栄えある人類が君たちなのだ!」と養成所でよく聞かされたが誰だかわからない人の未来のために死んで来いと言われて僕はそれを受け入れられなかった。

同じ研究所で育った仲間たちはどうやらそれを誇りとして、地球の平和維持と人類の未来のために殉じて死ぬことを至上の名誉と考えていたようだったが…結局最後まで僕にはピンと来なかった。


そんな時に、ルリィと知り合った。当時はルリィという名前でもなく、番号で呼ばれていた。

要請施設内で優秀な成績を収めていた彼女は後輩の『製品』達の指導役を僕たちの製造者たちから任されていた個体の1人だった。

初めて見た時の彼女は僕たちの製造者たちの思い描く「理想的な製品」という感じだった。

幼いながら美しい容姿を持ち、よく通る綺麗な声で普通に生まれ育った人間がいかに脆く尊いか、なぜ自分たちのような存在が必要か、そして人類の発展と平和のために殉じることがいかに名誉かを後輩たちに説く。

その光景はまるで宗教の聖人か宣教師といった具合だったと思う。

彼女は本当に製造者たちにとって「理想的な製品」だった。だが、製造者たちの思惑通りの忠誠心を持たない「欠陥品」の僕からしたら吐き気がする対象でしかなかった。しかし…何故かたまに後輩たちを見る目がすごく悲しそうに見えた。

僕はそれだけが少しだけ気になっていた。


ある日、いつも通り後輩たちへの教育を済ませた後に人気の少ない場所に隠れるように向かう彼女を見た。

施設内の監視カメラからも死角になる場所だった。

後を追ってみると彼女はそこで持参していた袋の中に胃液を吐いていた。


「具合でも悪いのか?」


そう聞いた瞬間彼女はこちらを振り返り、そして絶望したような顔をしていた。

その時に思った。きっとこれは誰にも見られたくない光景だったのだろうと。

無論、嘔吐をしている姿を他人に見せたい人間なんていないと思う。

問題は彼女が嘔吐している原因。もっと詳しく言えば「嘔吐するほどのストレスの元はなんなのか」という点だ。


「……もしかして、後輩たちに『人類のために命を捨てるのは素晴らしいこと』って教えるのが苦痛で――」

「違います!!違います!!!」


僕の言葉を遮るように彼女は否定した。


「そ、そのようなことは断じてありません!これはただ!大役を任されている緊張によるもので…うっあっ…!」


突然叫んだ彼女は嗚咽を上げそのまま吐きそうな雰囲気だった。


「じゃあ後輩たちに語っていた内容を聞かせてもらってもいいかな?同期の優秀な個体がどのような言葉で僕たちの作られた理由と理念を言語化しているか興味があるんだ」

「い、いえ…その『特記個体』のあなたに教えられるようなことは…な、なにも……」


彼女の声は震えていた。


「へえ、僕のことを知っていたんだ」

「は、はい…私たちと同じ製造ロット内でも特別製造の…『特記個体』の皆様を知らないものは居ないかと…」

「君だって優秀だと聞いているけど…」

「私はあくまで通常製造品の中での話ですので…あなた様のように生まれから人類に貢献できることが約束された存在という訳でもなっ…くっ…」


そこまで言うと彼女は倒れこんでまた吐き始めた。

少し強めの語気で僕は揺さぶってみることにする。


「……話を戻すが、我々の存在理由を語ることがよほどのストレスと見えるね」

「いえ!ち、違っ…!」

「君が後輩たちに我々の理念を説いた後にどこか不服そうな顔をしていたのを以前に僕は見ている。それにこの指摘が的外れならなにもここまでおびえなくてもいいだろう?」


具合の悪そうだった彼女の顔色はさらに悪くなっていた。

そしてとうとう口を開かなくなった。


「どちらにしろこれは報告させてもらう。もしこの疑念が本当なら人格矯正か最悪廃棄処分か…何かしらの処置が下る。問題が無いなら僕の勘違いというだけだ。迷惑をかけた詫びは僕にできる範囲内でなんでもしよう。以上だ」

「嫌っ!違っ!待ってくださっ!!待って…待って…」


そういうと彼女はその場に倒れこんで今度こそ動けなくなった。

その顔からは生気が失せ、絶望しきっていた。

僕の推測がどこまで正しいかはわからない。しかし彼女には僕たちの製造者に知られたくない腹積もりがあるのは確かなようだった。

そうでなければこんなにおびえることもないし、そもそも人目から隠れて吐く理由もない。

体調不良なら素直にそういえばいいし彼女は慕われているし評価も高い。

きっとみんな気を使ってしっかり休ませてくれるだろう。

ちょっと試してみてもいいかもしれない。


「……安心しな。吐いてたことは誰にも言ったりしない。自分の信条と違うことを他人に説き続けるのは辛いという気持ちは想像がつくからね」


先ほどまでとは違う可能な限り優しい声で僕は彼女の耳元でささやいた。


「………………ふへぇ?」


凄く変な声が聞こえてきた。

脱力しきった声を出しながら彼女の顔は呆けていた。


「本当だよ。君のことは報告しない。心にもないことを話し続けるのは大変だろうけど…まあ頑張って」


そうして僕はその場から立ち去った。

後ろにはただただ呆然と立ち尽くす彼女が見えたが顔色は先ほどよりずっと良くなったように見えた。


*   *   *


「大尉殿…」

「うっ…ああ…。中尉ですか。どうしました?」


僕の見ていた昔の夢はアッシュビル中尉の声によって終わりを迎えたようだった。


「お休みのところ申し訳ありません。例のAHの先行生産品がもうすぐこの拠点に運び込まれるとのことです。予定通り、大尉殿にテストしてほしいので至急来てほしいと」

「そうですか。わかりました」


どうやら今日の僕の出勤時間が早まった最大の理由が到着したようだった。

火星独立派が独自開発していたAHの先行生産モデルが完成したのでテストをしてほしいというのが僕の後ろ盾の方々からの命令だった。

今回のテストが良好なら火星各地の秘密工場で増産体制に入り、火星での武力革命における主戦力として投入されることになるとのことだった。


「しかし、まさか地球側でも実用化から日が浅い兵器を我々が独自製造できる段階にまで来ているとは思いませんでした」


アッシュビル中尉の疑問はもっともだった。

レジスタンスだの火星独立派だのと字面は一見立派だがあくまで地球側からの一方的な火星統治政策に反発する民間企業や一般市民の集合体でしかなかったこの組織が火星の利権を一挙に握る地球側の国々と事を構えられるだけの規模と組織に拡大したのは相応に理由がある。


「恐らく火星の開拓利権にありつけなかった地球の国家群からの技術支援も多分にあったのでしょう。150年前の火星開拓事業にうまく食い込めたかどうかがそのまま地球国家間のパワーバランスになってる部分もありますしそれが面白くない国も多いでしょうしね」


火星の開拓がはじまったのが150年ほど前の話になる。

上手に利権を作れた国々はこの150年間で火星で採掘される鉱物資源利権や新しく発見された新物質の独占などで利益を上げてきた。

一方、火星や宇宙開拓の時代の到来を予期できず利権を作れなかった国は再開発の伸びしろがもうあまりなかった地球内で細々とした活動に終始せざる負えなかった。

宇宙開発の時代が来たことを150年前の人々は大航海時代の再来と言ったそうだが、上手にその機会をモノにできた国家と乗り遅れた国家で国力に差ができてしまったという歴史まで再現してしまったのは皮肉な話なのだろうか。


「とりあえず例のAHを見に行こうか」

「はい。大尉殿」


そうして僕たちは火星側の開発したAHを見に行くことにした。


時は西暦2402年6月3日の火星。

世間は『火星独立運動』や『地球の支配者層への反抗』や『火星市民に自由を!』とかで中々に物騒な雰囲気が漂っていた。人によってはまだ他人事でしかないであろうその雰囲気を僕は当事者の一人として感じ取っていた。

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