第3話

 生物の授業には遅刻した。


 生物の先生は若くてかわいくて、男子からも女子からも人気。


 そんなみんなが楽しみにしている授業を僕を叱ったせいで数分無駄にしてしまった。

 クラスメイトからの非難の視線が突き刺さる。


 そんな針のむしろで自席に戻ると周りの子たちがニヤニヤと笑みを浮かべているのが見えた。

 ちょっとむかついたので視線が一瞬外れた瞬間に彼らの教科書を交換してやった。

 そんなことをしてどんな意味があるかは自分でもわからないが、それもまた人生だと僕は思う。


 人生って便利な言葉だよね。


 そんなこんなで放課後


 世間一般で土日よりも金曜日の夜の方が人気であるように、僕は家にいる時間よりも放課後の方が断然好きであった。


 心なしか無音の歩みも早い気がする。


 いざ鎌倉



 とテンションが上がりきった玄関前に立ち止まっている女子生徒。

 僕を見るや否やほのかに笑みをたたえながらこちらへ小走りで近づいてきた。

 なんかめんどくさそう……


 踵を返し、背後から迫る生徒の集団に潜り込む。



「え!」


 女子生徒の驚く声が聞こえてくる。


 集団に潜り込んだらまた方向を反転して玄関へ向かう。

 女子生徒が生徒一人ひとりの顔を見分していく、僕とも一瞬目が合う。けれど彼女はすぐに視線を外して「あれ~おかしいな~」と言いながら廊下の先へ進んでいく。

 コ〇ンくんかな?


 その後僕は顔をぐにぐにしていつもの顔に戻す。

 これぞ僕の秘技の一つ”顔のパーツを一瞬変える”だ!



 なんかできるようになってたんだよね、これ。

 まあできるようになったからってなんだって話だし、役に立ったのだって今回が初めてじゃない?


 まあ何はともあれ僕はこのようにして念願の放課後を享受するのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る