クリスマスは寒い
空殻
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迫るクリスマスを目前に、付き合っていた彼女と別れた。
別にどちらかに非があったわけではなく、ただお互いが、大学生活を彩る勉学とサークルとバイトにかまけて、無自覚に、恋人の優先順位を下げてしまった結果だった。
だから、彼女には申し訳ないと伝えたし、彼女もまた、別れ話の時に申し訳なさそうにしていた。
人間二人が別々の道を選んで別れていく瞬間として、怒鳴り散らしたり、泣きわめいたりするよりはよほど良かったのだと思う。
大学近くのショッピングモールでは、煌々とクリスマスツリーが輝いていた。店内のBGMも、聞いたことのあるクリスマスソングのメロディーだった。
しかし、自分にはクリスマスはもう関係ない。買い物に来たのは、年末に帰省する際の手土産を探そうと思ったからだった。
両親や祖父母が珍しがりそうな適当な菓子と雑貨を買い、ショッピングモールを出る。
外は、いつの間にか雪が降り始めていた。
ちらちらと、綿のような小粒の雪が落ちてくる。しっとりと濡れたアスファルトに着陸すると、すぐに溶け消える。
自分の故郷が雪国なので、この程度の雪は珍しくもない。
ただ、輝くクリスマスツリーと白い雪の重なった光景が、あまりにもクリスマスらしくて、彼女と別れたことをまた思い出す。女々しい話だ。
故郷よりもずっとマシなはずだが、今年の自分にとって、この町はとても寒い。
早く年末、来い。
クリスマスは寒い 空殻 @eipelppa
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