第19話 てめぇ、どこ中だよ!
「ゲキャキャ、ゲキャ」
「ゲキャ、グキャ」
「グキャキャ」
敵ゴブの丸岩の寝床にたどり着くと、熱烈な歓迎を受けた。俺らの周りを半円状に敵ゴブ達が囲んだのだ。
そして、こちらに向けて威嚇するように手を振り回したり、こん棒を地面にたたきつけたりしている。
…ねぇ、その威嚇の表現どこのヤンキー漫画? 言葉わからないけど、ひょっとして今『てめぇ、どこ中だよ!』って聞いてる? ダンガール北東中学ですが何か?
というか、ゴブリン少ないなぁ。前回400人くらいはいたはずだが、今回見渡しても300人もいない感じだ。気のせいか?
それにワーグもゴブリンチーフも見えない。ウォーリアは何人かいるようだけど、それでも前回偵察に来たほどの人数じゃないな。
これは今狩り行っちゃっててお留守? ひょっとしてだが、ゴブリン達は『現在主人は留守にしていますのでまた今度にしてください、コノヤロウ』って感じなこと言っているのかな?
えー…。 意気揚々としてきたのに相手いないんかい。 なんかてこ外されたなぁ。
ここで帰るか? いやそれはない。そんなことしたら配下ゴブリン達もう一回ボコらんといかんし、例え後にここのトップ倒したとしても一度逃げたやつにはこいつらも従わないだろう。
これ、相手もこっちも収集つかない感じか?
うーむ。押しとおるか? どうせ俺の家になるのだし。そう、ここは俺のものなのだ。
こんな思考になると、気がかりが出てきた。俺これ、思考がゴブリンに偏りかけてないか?
ゴブリンでいるとゴブリンになってしまう? いや、そんなこと、ないよな? 《狂乱》成長してないよな。
そんなことを悩んでいると、俺の前にギキャギキャ喚ているゴブリンが出てきて、殴りかかってきた。
俺はそれを避けてから殴りかえす。とはいえ少しやさしめだ。ゴブリンはその手加減による攻撃でちょっと吹っ飛ぶだけだった。
こいつらはあとで俺の配下になる予定だし、いきなり殺す気は起きなかった。
だが、その手加減による攻撃を相手は甘えと見たのか、今まで威嚇するようだった相手が若干の嘲笑交じりになっていた。そんぐらいの力ならどうとでもなるといわんばかりに。
笑いの中から、ゴブリンたちの間を開けるとそこからゴブリンウォーリアが肩で風を切りながら出てきた。
そして手に持っていたこん棒を振って威圧してくる。
周囲のゴブリンは戦う場を開けるかのように広がった。
そしておれが構えると、武器も持っていない俺を侮るかのように大振りでこん棒を繰り出してきた。
こん棒が縦に振られる。風の音が響くが、動じずに体をずらして回避。
ゴブリンウォーリアは避けられたことに驚いた顔を見せる。そして大振りゆえに下がったその顔に今度は全力での正拳突きをする。
ゴブリンウォーリアの鼻ががつぶれていき、そして体がふわりと浮いた後に後ろに回転しながら吹っ飛んでいった。
後ろにいたゴブリン達を巻き込みながら地について、そして起き上がらない。
先ほどまで笑っていたゴブリン達は、みな沈黙していた。
うーむ。ゴブリン相手に全力でこの威力かぁ。顔面粉砕することを意識したのだが、無理だったな。
足元を見ると、少し滑った跡があった。
ゴブリンメイジになったこと体格が少し大きくなり体重が増えたとはいえまだまだ軽いから、威力がこぶしに伝わりきれない。 《頑強》スキルによる重心移動にも限界があるっぽいな。
そんなことを考えていると、静かだった周囲よりはちょっと遠いところで、どこかざわざわする気配がした。
「帰ってきたか」
今回の標的であるゴブリンチーフワーグライダーとその手下が帰ってきたようだ。
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