第16話 ワインみたく熟成させろ
「ほどちゃん、あいつ今しゃべった?」
なんかすげーだみ声で田舎っぽい口ぶりだけれど、しゃべったよな?
ダンガール弁か?
「はい。ゴブリンは話します」
「え? そうなの? こいつら話してるところ見たことないけど」
配下のゴブリンいっつもゲキャゲキャしかいってないような?
「はい。話します。ゴブリンは低次元言語を生まれた時から使用可能であり、配下のゴブリンは使用しています」
確かに、たまにゲキャゲキャ言いながら意思疎通しているけれど。
「ええ…。 俺にはあいつらが話している言葉が理解できないんだけれど。 たまたま俺が聞こえていないってだけ?」
そんなことある?
「不明です。ゴブリン種同士なら意思疎通ができます。推測するに、マスターの場合上位種の場合のみ聞こえる可能性があります」
「まじかよ」
こいつら喚いてたようだけど話してたのか。いや確かに何となく言ってることはわかってたけど、言葉を話してたというレベルではないような。
まぁけど、こっちの言うことは聞こえているわけなんだから、俺もゴブリン語を話しているのか。 聞こえないだけで。
「まぁ…。いっか。」
別にゴブリン語聞いたところでだし…。 いやけど、俺こんな風に話しているけど、ゴブリン達にはすげーいなかっぺ大将みたいな話し方してたらいやだな。
うちの兄貴、偉そうにしてっけど口ぶり田舎でくそだっせぇよなとか言われてたら…。
やめよう。これ以上はやめよう。
その後しばらく敵ゴブたちについていくと、彼らの拠点にたどり着いた。
森の中の開けた場所に、巨大な岩を何個も雑に配置したような空間であり、その隙間の中にある空間を寝床にしているようだった。
そこに入りきらないゴブ達は周囲にある木の根の間を掘って作った穴倉に住んでいるようだった。
これは俺らとおんなじスタイルだな。
こうみるとこの森、奥のほうへ行くほど木が大きくなっていき、間隔も広くなっているような気がする。まだちょっとだからわからんが。
「ここのゴブリン達、意外と人数多いな、400人はいるんじゃないか?」
そして子供が多い。4分の1は子供に見える…。いやあれがすぐに普通のゴブリンになるのか。俺や配下ゴブ達もそうだったしな。
「そう考えると、子供多すぎじゃない?」
日本社会との対局にありそうなやつらだ。政治家がうらやむだろう。死亡率もとんでもないが。
「ゴブリンは《繁殖》スキルを所持しているため、一週間に一回は産みます」
「いや生みすぎだろ。もっとおなかの中でワインみたく熟成させろよ。そしてキルレシオを改善しろ」
どおりでめっちゃ死んでるわけだ。そんだけの頻度で生まれていたら、むしろ高頻度で死んでいかないと集団として持たないんじゃないか?
「それにしても、服装や食事も俺らよりはちょっと文明的というか…」
やつら腰に毛皮をまいて、パンツみたくしてやがる。かたや俺らは全身に毛皮を巻くスタイル。
どちらがイモっぽいかなんて一目瞭然だ…。いやどっこいどっこいか?
というか今思ったら、毛皮きれるんならでかい穴でもあけて上から被せるように着るポンチョスタイルにでもすりゃよかったんじゃないか? 横を毛皮で作った紐で閉じればいいし。
これならハミチン時代も終焉を迎える。野生を隠す時代が来るのだ。
よし、帰ったらそうしよう。ゴブリンに文明度で負けるなんてありえない。あり得ないのだ。
食事のほうも、先ほどのダンガールボアの毛皮を広場で剥ぐくらいはしてるらしいな。肉を焼いてはいないが、めちゃくちゃ切れ味悪そうな石器で少しずつ切ってはいる。んでそれを大人から順に与えたりしていた。
血抜きはしていないからか手足が血まみれだが。
ある程度見終えると変えることにした。
「よし、ひとまず帰るか」
どうするにせよ。とりあえずもう一段階は進化しないとしんどそうだ。あの中では、あのゴブリンチーフよりも俺は強いと確信してるが、さすがにその後の400人との戦闘があった場合は魔素が足らなさそうだ。
スキル昇格により最大魔素が減っている今の状態では、途中でスキルの使い過ぎでばてるのが目に見えている。
そう配下ゴブリンたちに言うと、ゴブリンたちはまた驚いたような表情をして、そして不満そうな顔をした。
「ん? どうしたおまえら」
「ゲキャキャ? ゲキャゲキャ?」
あ、今何となく言葉がわかったな。確かに話してるわこいつら。
ゲキャゲキャだけどわかる。
「敵ゴブ達のところにいかないのかって? いかないよ。今はちょっときつそうだしな。 帰ってまた狩りだ。 ほら帰るぞ」
そういうと、不承不承といった感じで俺についてきた。
むぅ。 ちょっと何が不満なのかわからんな。
ほどちゃんにちょっと聞いてみるか。
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