ゴブリンキング編

第15話 今しゃべった?

「ゴブリン達か?」



距離はまだ遠いが、見たところ100人以上はいそうなゴブリンの集団だ。それに詳しく何かはわからないがゴブリン以外も見える。まだこちらを発見できていないようだ。


そういえば、このダンガール大森林には大量のゴブリンがいるんだったな。むしろ今まで会わないほうがおかしかったか。


「どうするかなぁ」


初接触。考えてはいたが、いざその時が近づくと緊張するな。

皆殺しか、制圧か。 


ゴブリンキングを目指すからには、ある程度の人数を指揮下に入れないといけないから、相手の頭は殺さんといけない。ゴブリンの性格からして、頭が降伏することはしないんじゃないかな?


頭がいなくなった後に相手の配下が俺の配下に加われば制圧だし、加わらなかったら皆殺しになる。

多分加わると思うのだが…。その場にならんとわからん。


ほどちゃんに聞いても、ケースバイケースだそうだ。ゴブリンが強い奴についていくか、その強い奴を倒して自分が強くなることに賭けるかは状況次第。ゴブリンの考えることだから予測もしづらいと。


まぁ、とりあえず様子見かな。生のゴブリンの生き様というか生態も見てみたいし。実際の狩りとか、どこに住んでいるのかとかね。



「よし、とりあえず隠れるか。隠れてひっそりとついていくぞ」


俺は自分の配下のゴブリンに声をかけると、驚いた顔をしながらも後ろについてきた。


なんだ? なんか驚くようなことでもあったか?

初めて見た他のゴブリン達に驚いたのかな? 

というかあいつらのことなんて呼称しよう?


敵ゴブでいいか。


ゴブリンたちの表情に不可解さを感じつつも、俺は敵ゴブ達についていった。



「うわ、ほんとに全員で突撃してる」


しばらく歩くと敵ゴブたちは獲物を見つけたのか、ゲキャゲキャ喚きながら意気揚々と突っ込んでいた。

万歳突撃が好きなのね。


その万歳突撃の一番先頭にいたのは、なんか狼っぽいのに乗っている俺よりも1.5倍くらい巨体を持つゴブリンだ。そこら辺のゴブリンとは食ってるもんが違いそうな雰囲気を持つ。


狼っぽいのははフォレストウルフとは微妙に違うような。

あの狼の毛色は黒だ。それに対してフォレストウルフは緑だ。それに顔も狼よりはこざかしそうな顔をしている。イレギュラー個体かな?


狼っぽいのは風を切りながら勢いよく疾走していて獲物へと走っていき、その上に乗る巨体ゴブリンはこん棒を持って獲物に対して振りぬいていた。ゴブリンたちは置いてかれていたが、その後に続こうとする。


「おー。なんか雰囲気あるなぁ。かっこいいわ」


なんやかんや、何かに乗って攻撃するさまっていうのはかっこいいわ。

おい、ちょっと嫉妬しそうだぞ。別にゴブリンに憧れはしないが。決して憧れはしないが。


「というか、獲物はダンガールスモールボアか。けどちょっと大きいな」


「いいえ。あれはダンガールボアです」


と、ほどちゃんが教えてくれた。


あれがダンガールボアか。 確かにダンガールスモールボアより、1m近く大きいな。あれだけの大きさがあれば、ゴブリン達との最下層決定戦からは一抜けしたのかな?


「お、目が赤くなった。」


ダンガールボアは攻撃されるとスモールと同じく目が赤くなり、蒸気を発してゴブリンめがけて突進しだした。

あの狼ライダーゴブリンはその軌道上からは避けている。そして連れのゴブリンたちが次々と突進によってひかれていく。


「うわ、えぐ…」


横に吹っ飛んで骨折するくらいならまだいい。足で踏みつぶされて胴がつぶれたり、頭が破裂しているゴブリンとかがいた。一回の突進で15人以上は死んでるんじゃないか?


「さすがキルレ30:1。その数値に違わぬ力やな」


そういうと、ほどちゃんが突っ込んだ。


「いいえ。あれはダンガールボアなので、ゴブリンとのキルレシオは40:1です。ただし、今回はチーフゴブリンワーグライダーがいるので、キルレシオよりも低くなる可能性が高いです」


狼ライダーゴブリンはチーフゴブリンワーグライダーっていうらしい。長いね。ワーグライダーでいいや。


ダンガールボアは木にぶつかるまで突進し続けながらゴブリン達をひき殺した。そして木にぶつかって止まったところを再びワーグライダーがこん棒でたたいていく。


ワーグはその時についでと言わんばかりに相手の足にその爪をくらわしていた。あんましそっちのほうはゴブリン達と大して変わらなさそうな威力だが。


「ふーむ。そのワーグライダーとダンガールボアのキルレは?」


「10:1で、ワーグライダーが有利です」


「そんな有利なんだ。あのワーグが強いのか」


「はい。まずダンガールボアの突進は食らいません。ただし爪の攻撃力は低く、攻撃力の大きな牙で攻撃する際に、偶然突進とかみ合った場合はワーグに重傷を負わせる可能性があるために、あまりワーグ単体で狩ることはありません」


不利な相手や面倒な相手に攻撃を控えるくらいには、ワーグに知性があるわけだ。


「現在はゴブリン達と一緒だから狩っていると」


「はい」


「ちなみにチーフゴブリンだけのときのキルレは?」


「キルレートは20:1でダンガールボアが有利です。」


「相変わらずのゴブリンで安心したよ」


あのゴブリン避けなさそうだもんだ。避けなかったらひき殺されてお仕舞いよ。


そうこう言っているうちにゴブリン達はダンガールボアを倒していた。ゴブリンたちは40~50体くらい死んだんじゃないだろうか?


一回の狩りでそんな死んで持つのか? 割に合わないよな。そのための《繁殖》か。


「げぇるぞ!」


「「ギャギャ!」」


ゴブリンたちはチーフゴブリンの合図でダンガールボアを運びながら、もと来た道を帰っていく。



…あれ、今しゃべった?


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