第4話 ゴブリンで結婚はできません


次はどうするかな。

ああ、ナビゲーターというかほどちゃんの性能を確かめないといけない。


俺は川に向けて鑑定をした。


「ゴブメコ川」


ほどちゃんが教えてくれた。


「おお、頭の痛みはないな。いいね、ほどちゃん。もうちょっと詳しく教えて。」


「ゴブメコ川。ラグアリ大陸南西部、ダンガール大森林北東を流れる川」


おー。いや、情報は増えたが理解は何も生まれなかったな。


とりあえずこの川のことはいいや。知ったところで何かあるというわけではない。


「まぁいいか。それで、俺は何だ?」


とりあえず自分を鑑定してみる。


「ゴブリン族の幼児、生まれたて」


は? 俺生まれたてなの? そういえば、小さすぎて見逃すとか言ってたな。あのケンタウロス。


ひょっとして戦場で産んだ? ゴブリンそんなのあり?


ゴキブリが死ぬときに卵を切り離すとかあるけどそんなノリでポンと生んでしまうのだろうか。


しぬー! 子供産まなきゃー! ふん! おぎゃー! ギャグかよ。



しかし、俺の体はだいぶ幼そうでもある。この予想はあってそうだ。

どうするかな。この真名ゴブリン。


「ゴブリンとして生きるのは嫌だな…」


ゴブリンとして生きたいがために転生したわけじゃない。チートでウハウハしたくて転生したんだ。だまされたがあの時の回答は本心だ。


「ゴブリンからの進化条件を提示しますか?」


「え?]


「ゴブリンからの進化条件を提示しますか?」


独り言に反応する。


「ほどちゃん、お願い」


「ゴブリンから条件を満たしながら一定量の経験値を積めば、その種族に進化可能です。近接武器であればゴブリンウォーリアー。遠距離武器であればゴブリンアーチャー。魔法であればゴブリンメイジ。罠であればゴブリントラッパー。などがあります。」


「いやどれもゴブリンじゃねぇか」


「ゴブリン以外に進化先はハイゴブリンがあります。」


「いやそれもゴブリンやん。俺の未来どこまでもゴブリンしか広がってないやん。」


「ハイゴブリンは不動のゴブリンキングの一族として認められた種族であり、別種として扱われます」


「…なるほど?」


違うらしい。シマウマとウマは別種みたいな? いやほぼ一緒だろ。


「ゴブリンキングの一般的な進化条件は、上位ゴブリンの子を100人、配下を1万人持てば可能です。」


「…おう」


「ハイゴブリンへの一般的な種族進化の条件は、ゴブリンキングとなり、その子の100人以上が20レベル以上に達することです。」


「…」


難しすぎないか? いやわからんけど、そもそもゴブリンキングになる時点で100人以上子を産むってのがやばない?


「子供を100人って厳しない?」


「一度発情期まで成長した雄ゴブリンの繁殖数は一人当たりの平均人数は約40人、最大で約7000人です」


フレンチキスみたいな感じでフレンチ交尾してんのかゴブリンは。


まぁ、できない数字というわけじゃなさそうだな。いや何産ませようとしているんだ? 


まぁいざというときは


けど、このままだと一生ゴブリンじゃないか? 一生ゴブリンは嫌だぞ?

それにゴブリンの寿命どれくらいだろう?


「ゴブリンの寿命は?」


「ゴブリンの平均寿命は5歳です。最大41歳です」


5歳って青春と無縁やん。まぁ、ゴブリンにとって青春が多分3歳くらいなんだろうか。


その間に生殖しないといけないのか。そして進化もしないといけない。


「ゴブリンで結婚かよ」


「ゴブリンに結婚という文化はありません」


「あ、はい。」


ないんだってさ。つまり俺はゴブリンでいる限り結婚はできないらしい。マリッジブルーもなし。優しい世界。


しかし、ゴブリンキングかぁ…。


「ゴブリンキングとか面倒くさ、今すぐ死んでリセットとかできない? 人間に生まれなおしたいんだが」


「今死んだ場合、魂の情報はリセットされ、スキルはリセットされ、カルマを元に来世が決定されます。一般的に人間が選定される確率0.00001%です。」


「は? 何%?」


「人間に選定される可能性0.00001%です」


「むりげーじゃねぇか」


消費者庁が怒るぞ。


「神に頼めないのか?」


一応試したけどダメもとで聞いてみる。


「過去に神へ依頼したケースあり、ただし場所が限定されており、また依頼が成功する確率は極めて低いです。」


「低いのかよ…。場所が限定されているっていうのは神殿とかか?」


「はい。神殿、異界へのはざま、パワースポットなどが該当します。最寄りの場所は直線距離3000kmの神殿です。」


東京大阪が400kmくらいじゃなかった? 無理だよね。それ。


「今から進化していけば人間に慣れる可能性はあるのか?」


「ありません。系統が違うために、不可能です。ただし、人間に変化する魔法を使える種族に進化することは可能です」


「なるほどね」


このまま死んだら再び種族ガチャ。そして記憶はなくてスキルもチートもない。けど今なら、人間に変化することぐらいはできる。


…。


正直、ゴブリンは嫌だ。いやだが、いきなり死ぬのはスキルがもったいなさすぎる。


おっけー。わかった。とりあえず、そうとりあえず頑張ってみよう。こんな小さくて経験値として狩られてしまうゴブリンだけど、とりあえずな。


「じゃあ、ひとまずはゴブリンキング目指すか。」

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