第5話 素養を持つには素養が必要らしいです。

で、どのようにゴブリンキングを目指すか。


プランが必要だ。

現状はまだ情報が足りないから、情報集めをする必要がある。


というかそもそもの問題だ。


「そもそも、人に化けれたとして、人が周囲にいなければ意味がないよな。人の世界で暮らしたいわけだし。」


魔物の生活圏で、人になっても意味ないよな。そちらのほうが異常だし、他の魔物に餌として狙われるだけだろう。


「そういえば、近くの人が住んでいる地域までどれくらいなんだ?」


「最も近い村落まで直線距離で約4500キロメートル。」


ええ、遠・・・ 


徒歩は約時速5キロメートル。 けど、これはアスファルトの道を成人が歩いたらだ。森でゴブリンだとその半分くらいだろうな。 つまり、1800時間。一日8時間歩いたとして、225日。その間、俺は怪我をしてはいけないし食料を採取し続けながら歩き続ける。しかもこれは直線距離だから実際にはその倍はあってもおかしくない。


下手したらすげぇ回り道でその何倍あるケースもあるよなぁ…。


これ人間として暮らすの無理かー?

いやけど一度も試さずに諦めるのはそれはそれでいやだろう。試算はあくまで試算だし。

この問題はあとからでいいだろう。


今考えるべきことは通称経験値、真名ゴブリンから脱却するために強化する方法であり、そのほかに解決するべき問題を検証することだ。


今後の方針としてはまずはチートを試さないと。俺がもらったチートは次元魔法と身体能力強化だったか。


「ほどちゃん、俺の持っているスキルの次元魔法の使い方を教えてくれるか」


「スキル《次元魔法》は所持していません。スキル《次元魔法の素養》を所持しています」


「どういうこと? 《次元魔法の素養》の使い方を教えてくれ。」


「《次元魔法の素養》の行使は、その素養とともに、《基本魔法の素養》、並びに、下級、中級、上級魔法の素養が必要となり、《次元魔法の素養》で習得できる最も簡易なスキル、《次元確認》には、ゴブリン種では不可能な魔素量が必要となります」


「なるほど? とりあえずゴブリンでは使えないことはわかったわ」


まぁ、なんとなく、鑑定の時からそんな気がしてたよ。


だって鑑定の能力が斜め上に行ってたんだもの。他のチートが斜め上に行っていてもかしくない。おかしくはないんだ。


けど、やっぱちょっとショックだわ。収納や転移とか使えたら、マジで便利だったのに。俺のチート人生、始まらなかったのか…。



「じゃあ、《次元魔法の素養》意味ないやん…」


「《次元魔法の素養》は、世界で持っている人数が0.0000001%のものです」


「めっちゃレアじゃん。人間よりレアじゃん。」


「はい」


「けど宝の持ち腐れ」


「はい」


「ほどちゃん。そこは断言しなくていいんだからね」


「事実ですから」


「悲しみ」





まぁいいや。《基本魔法の素養》とかも気になるけれど、それは後にしよう。

それで今度は身体能力強化はどうなんだ? 強すぎて使えないとかないよな。


チートモノでは全体的にちょうどよく調整されるものと、一部が強すぎて体が壊れてしまうものと二つに分かれている。


これはどっちかね。


「身体能力強化はどうなっているんだ?」


「身体能力強化、正確には神級下位スキル《頑強》を所持しています。頑強スキルは強化、回復、吸収などのステータスが3倍になるスキルです。」


「神級下位! けど3倍、3倍かぁ。いや、いいのかどうかわからんな。」


「単独での最大倍率は10倍で、単独倍率順位は22%位、合計倍率順位は0.1%位です」


「え、合計倍率は高いのか?」


「はい。そもそもほかの単独倍率の高順位は単独のだけが高いために、他の組み合わせを考慮しないと使えない性能です。神級下位頑強スキルは神や天使も初期のころに用いることがあり、現実的な使いやすさでいえば上位に入る複合スキルと言えます。」


まじか。あれ、ということは唯一使える枠? いや、ほどちゃんも使えるよ。


「今使える?」


「すでに起動しています」


「あ、そう。常時発動型なのね。」


俺はとりあえず、そこら辺の意思を持ち上げて投げてみた。


ふん!


石がふわっと飛んでぽトンと落ちた。


なんか、あんまし、実感がわかないな…。


小学生が普通に投げるボールが大体時速40から60くらいか?


うーん…。60出てなかったような…。


生まれたばかりだからか?


「あんまし実感がわかないな」


「動体視力も3倍になっているために、感覚で実感が得にくくなっています。また、子供であり生まれたてでもあるために、もともとの身体能力も低く、石を投げるという動作自体が難しいです。動作吸収能力も3倍になっています。」


「なるほど。一人だとわかりにくい系か」


うん。なんか、俺の反応が微妙だったからか、ほどちゃん若干饒舌気味になってる気がする。


「はい」


「うん。スキル《頑強》は使えるね」


「はい」


機嫌、なおったかな?



まぁ、とりあえずチートの確認はこんくらいでいいか。


「ま、とりあえず、ほどちゃんはいい感じだし、スキル《頑強》も便利そうだしで、何とかなりそうだな」


生きてくぐらいは行けそうか? ゴブリンキングはどうかなぁ。




その時、後ろから音がした。


俺と同じように戦場で生まれた子供ゴブリンが、這いつくばりながらこちらに来ていた。




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