地震

「は?あんた何」

「俺は簡単に言うとおまわりさんだ」

威圧感のある低い声で,「お巡りさん」と言われるのは少しおかしかった。そこまで大事となると少し気がひけるのか,踊り狂っていた時より威勢は削がれていた。

そこで,小道がそのおまわりさんの後ろにいることに気がつく。これはまずいのでは,と思い,動き出そうとするが足に激痛が走る。

「あ,あんた,私にこんなことさせてどうするつもりよ」

篠原が小道を指しながら言った。気がついてしまったようだ。

「いや,私は何も」

「こいつをいじめろ,って言ってたじゃない!」

流石にこの手には慣れてるのか,おまわりさんは小道を庇うように前に出た。それでも,篠原は黙らない。声は掠れているのに,猿のように甲高くてただただうるさかった。

小道がその時,急にジャンプしたように見えたのは,気のせいではないだろう。

なんだ?と思ううちに,地面が揺れ始める。地震だ。

「地震です,地震です,」

と四方八方から機械の音声が鳴った。先程まで眩暈がひどかったこともあり,本当に吐き気がした。

しかし,篠原は親に帰ってこいとでも言われたのか,悔しそうにおまわりさんと小道を見ながら去っていった。


一応の事情聴取が終わり,すでに夕方になった外で,小道と歩いていた。先週は濃すぎるくらいに,詰まっていた。

勇気を出して小道を家路に誘った月曜日,

来週の月曜日に,と脅された火曜日,

玲とともに,演技をすると決めた水曜日,

お巡りさんを怪しい奴呼ばわりした木曜日,

AKSK作戦と演技を実行した金曜日,

そして今週の月曜日。

殴られ蹴られることはやはり怖くはあったが,大切な人を守るためでもあるし,そこは己の意思で解決できた。

しかし,一つだけ不可解な点があった。小道があの時,自分の意思で地震を起こしたように見えたのだ。

もしかしたら,俺の白昼夢みたいに一般とはかけ離れた何かかもしれない。また,勇気を出して聞いてみることにする。

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