思案

「どうしようか」

 今日は金曜日なので,学校が7時間目まであったのだが,それが本当につまらなく,初めて居眠りをしてしまった。

「まあ,いじめも立派な犯罪だからな」

「いじめは立派じゃないけどな」

「とにかく,まずいじめを一時的に止めても意味がない。」

 玲がもっともなことを言った。

「だから,学校の体制を強化できるように,証拠を突き出して問題化すればいいんだ」

「教育委員会に訴えかける,という訳か。」

 まあ,そうだね,とヘッドバンディングを抑えめにしたように頭を振り,玲が示した。

「ということで,俺のカメラを貸そうか?」

「いや,壊したら悪いしいいよ」

「俺が作ったやつだから。まあまあ高値で」

「高値じゃないか」

「まあ,充電はちょっと特殊だから,使えないと思うけどな」

「なんだよ」

「残念,この作戦は使えないな」

 早くも,行き詰まってしまった。なあなあになりたくないから日を置いたのに,ちゃんとなあなあになってしまった

 少し考えるふりをしていると,あることを思い出し,ブレザーのポケットを探った。案の定,入っている。

「これなんかどうだ?」

 といい,あの「バッテリー」を玲に見せた。

「まさか,そんな好都合な,」

 玲が掌の上で黒い箱を転がす。あれ,これならという声が聞こえ,少し希望が見えた。

「うわ,なんか残念」

 といい,玲が見せたカメラには,明らかに充電中をしますマークが映し出されていた。

「おい,何が残念なんだよ」

「そんなキュウリじゃねえんだから」

「それは韓国語でオイだろ」

「じゃあネヒューか」

「それは甥だろ」

 2人しかいない室内に渇いた笑いが満ちる。今度の月曜日にいじめられるのが嘘みたいだ。

 そんな中,ドアの方で何か景色が変わったと思うと,誰かが遠ざかっていく音がした。

「いやあ,嫌な予感がしますな,碧生先生」

「それをなんとかするのが,お主ら両替商の仕事だろう」

「ささ,こちら山吹色の菓子にございます」

 そういうと,玲はどこからかスイートポテトを出した。

「おお,お主も悪よのう!」

「いえいえ,代官さまほどでは!」

 2人の台詞が面白いわけではなかったが,2人とも全く同じイメージを共有していたことに笑う。

「スイートポテト,もらっていくぞ」

 いや,それは返せよ悪代官と,玲が怒るふりをした。

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