相談

「お前,来週の月曜日カバ公園に来いよ」

 相も変わらず,篠原の声は掠れている。カバ公園とは,カバの大きな滑り台が目立つ,少し広めの公園。本名はあるのだが,堅苦しい感じがするので,ここに住む少年少女はこぞって「カバ公園」と呼んだ。

 その後で,篠原の取り巻きに少し小突かれる。

「なんだよ,手押し相撲か?俺は強いぞ」

 また,篠原たちは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「そういえば,俺が通ってた保育園に,不審者から逃げる「防災訓練」というものがあってな」

「もういい,いくよ」

「当時は本物の不審者かと思っていたが,今思うと園長先生がやっていてくれたんだ。演技が下手だったな」

 いくぞ,という割になかなか帰らない。

「それに年長の時に気がついて,違う先生に言ったんだ。

『不審者さんって園長先生なんですか』ってな。そしたら,『違うよ,園長先生は不審者なんかじゃない』って強く言われた。」

 段々と,耳を傾け始める。よく見ると,篠原はもう立ち去っていた。

「聞いたところによると,その園長先生,違う地域に異動することになったらしいんだ。優しい人でな,よくちびっ子に声をかけていた。でもそれが,今のご時世引っかかるんだな。今じゃ,園長先生は不審者だ。」

 少しだけ,取り巻きの1人が笑った。篠原はもう見えなく,取り巻きたちは急いで追いかける。

 あれ,ていうか俺小道の誕生日に一緒にいじめられにいくのかよ。それは嫌だ,という思いで,去年の仲のいいクラスメイトを頼ることにした。


「は?いじめられるかもしれない?」

「源に!」

「それは『しずか』にだろ」

 玲はいち早く俺のジョークに気がつき,的確につっこんでくれる。

「しかも,元々いじめられてたやつの誕生日なんだよ」

 その他にも色々と事情を話すと,ノリと気前のいい玲は対策なら任せろよ,と身を乗り出してくれた。

 ただ,今すぐには流石になあなあになって終わりそうなので,また明日会って話すことにした。

 玲も家路がほぼ同じなので,俺と小道と玲の3人で帰ることになる。小道と玲も,それなりに打ち解けていた。

 小道は手前の曲がり角。俺は道路途中,玲はその先の丁字路でそれぞれ分かれた。

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