臆嗟

〔碧〕

 あぁ、気まずい。あゝ、ah。

「嗚呼そうだ。各々のニックネームみたいなんつくろうぜ」

 この場合、作るが良いのか造る、或いは創るなのか。

「ニックネーム?」

 葵が首を傾げそうになる。完全に傾げたわけではないため、「傾げそうになった」と言ったが、実際はもう傾げていたかもしれない。いや、あれは傾げていなかった、かもしれない。

「uhそうだ。もしつくるのが難しかったら渾名でも良いぞ」

 ずっと根暗な雰囲気が出てた蒼威あおいが噴き出す。意外とツボが浅いようだ。

「あだなってあのトルコの右下らへんの?」

「そりゃアダナだな。ってかなんで知ってるんだ?」と聞くが、当の葵は

「碧生、だなだな言ってておもしろーい」とはぐらかした。

 結局、俺は"ミドリ"、長女の青藺は"イグサ"、次男の蒼威は"ブル"、末っ子の葵は"ゼラ"に決まった。

「葵さんはなんでゼラにしたんですか?」

 手を挙げ、熱心な生徒よろしく質問したが,内心予測はついていた。葵の前の姓が「天竺」であることは知ってる。「天竺葵」とは「ゼラニウム」のことだ。そこの頭を取って、“ゼラ”にしたのではないか。しかし、しつこく聞くのも無粋であるから,深追いはしなかった

なんとか、葵が姑息な言葉で誤魔化す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る