雑談
〔葵〕
特にする仕事もなく,のらりくらりと同僚と雑談していた。
「ねぇねぇ知ってる?」
「そんな,豆柴みたいな」
「この街って色々この街にしか無い都市伝説があるんだよ」声を潜めて呟くように言う。
「まぁその都市限定じゃなきゃただの伝説だからね」
「そこら辺の言葉の綾はいいじゃない。例えば,殺し屋とかね」
思い当たる節がある。が,節があっただけで,実際には引っ掛からなかった。
「へぇ。他には?」「ゾンビ,だとかジャンプして着地すれば地震起こせる人とか」
思わず,吹き出してしまった。
「後半なんてもはやネタじゃん」
「確かにね」同僚も笑っている。
「でも,ゾンビとかもさ,『ゔぁー』とか唸って襲ってくるより,さも人間のような振る舞いをしてる方が怖くない?」
「『私はゾンビです』とか言ってくれたら分かりやすいのにね」
「『アイアムゾンビ』って?」
「でもたしかゾンビって英語でぼんやりした人って意味があったはず」
「物知りだねぇ。私は街がゾンビでひしめき合うことになったら逃げ切る自信がないよ」そこで,先程地震の話をしたのを思い出したのか,同僚は
「アイドントハブアースクエイク」とわざわざ言い直した。
定時になり,残業するほどの仕事もやはりなかったので,家路に着く。先程の同僚と別れ,駅のホームを目指した。
夜の街にはよりどりみどり,色とりどりのネオンがある。その一つに,見たことのある顔を見つけた。
可愛らしく,美しい顔が映っており,こりゃ人気が出るな。と,考えてしまった。名前は斗南 九流と書いてある。確か,蒼威がマネージャーをやっている人だ。
蒼威が,脳裏をよぎった。
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