紫家
〔葵〕
私たちは蒼威以外全員連れ子で,全員名前が"あおい"だった。この紫家には、もともと蒼威だけでなく "ハルカ"という姉もいたと聞いたが、蒼威が10歳の時に亡くなったらしい。蒼威の机の上には彼女の写真らしきものがあるが、その中に映る女の子は可愛らしかった。
どこか蒼威っぽさも感じるが、それでいて蒼威とは違かった。姉弟で似ていたのだろう。姉弟仲はさほど悪くなかったそうだ。
そして、私たちの母がおかしくなったのは、最初の夫に浮気され、そのハルカが亡くなってからのようだ。家中の布を切り裂いたり、新しい彼氏を何人も同時に作ったり。癇癪を起こしては私たちに暴力を振るった。
母は今までに4人の夫を持っている。しかし、1人目以外と4人目である私の父以外は全員事故で亡くなっている。
後ろで何かの開錠音が聞こえ、振り返る。蒼威が兄の金庫を開ける。
〔蒼〕
陽花姉さんの最後の夜を思い出していた。
陽花姉さんのいる病室に向かう。壁は無機質に少し黄ばんでおり、LEDライトの鬱になるような白がよりその病院の雰囲気を悪くしていた。嫌な予感がする。
入り口付近に行くと、中から「あんたみたいな役立たず、産まなきゃよかった。」という母親の声が聞こえた。
怒りに視界が崩れ、足下が落ちていく感じがした。中に突撃する気力を失い、眩暈がする。人間において最悪の感情、幻滅が心を満たす。ただその場を離れることしかできなかった。
今夜、母親を殺す。そのためき、長い時間をかけて準備してきた。向かい側のベットから音がし、そちらを見る。葵が寝返りをうつ。
〔葵〕
珍しく兄弟姉妹の4人だけでショッピングモールに来ていた。母は新しい恋人と出かけていて、今は家にいない。あくまで内緒で来ている。
いくつかの店を回り、最後はアイスクリームショップに行くことにした。アイスを買うと、レシートと共に福引券が渡された。3枚で一回、回せるやつだ。
アイスを楽しんでいると、碧生がおおと声をあげた。レシートの合計が777円だったらしい。なかなかいい思い出だ。
最後に貯まった福引券で福引きした。がらがらと回すと、青い玉が出てきた。店員がベルを鳴らし、「2等です!」と興奮した様子で言った。
店員が持ってくる商品を見ると、その商品はギリースーツだった。これはいらないと珍しく青藺も笑った。碧生がそれなら俺が貰うと言う。
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