第12話 スクラップ

 主人の会社の上司に、オカンはスクラップ、がらくた呼ばわりされている。

 まあ、その通りなんやけど。でも、おあいにく様、うちの主人は独身の頃に買った、吹きもしないトランペットを後生大事に押し入れにしまっている。 

 

 話は違うけど、うちの透析の病院に土曜日だけ、ハーバード大出の先生がいらっしゃる。

 どうして岸和田の片田舎の小さな病院に勤めているのかわからないが、医院長先生より話が通じるので、もっぱらこの先生に薬を出してもらっている。

 先日も、何か耳がボワンとして聞こえにくかった。医院長先生にその事を言い、「風邪だと思うのでPA出してください」と言うと、「耳は耳医者行かないと治らないよ」と突っぱねて、薬を出してくれなかった。

 手持ちの薬を飲んで耳は良くなった。次の回診のとき、

「耳はどうや?」

「よくなったみたいです」

 と応えると、驚くことに、

「風邪やったのかな」

 と言わはった。

 何ですと。そやから風邪みたいや言いましたやん。何やのん、この先生、好かんわあ。


 しばらくすると、また耳がボワンとなった。

 心配になり、近所の耳鼻科に出かけた。

 いろいろ検査をして、しまいには突発性難聴の左耳の耳鳴りに近い音まで探り当てるという検査までした。

 オカンは右耳の聞こえの悪さは一過性のものと思っていたら、最後に補聴器のような物を右耳に押しつけられ、思わず「やかましい」と看護師さんの手を払いそうになった。どうやら加齢によるものと判断したみたい。

 え~、補聴器はまだいらんよ~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る