第8話 手を切って

 透析中、左手の指先が恐ろしく痛い。こんなに痛いなら左手を切って。

 我満出来ずに看護師さんに訴えると困惑の表情を浮かべる。

 看護師さんが布団をそっと捲ると、左手首から先がなかった。

 幻肢痛。

 なくなったはずの指先が痛む。

 左手を切ったところで痛いのは変わらなかった。


 

 これをホラーに書こうと思ったのやけど、あまりにもブラックなのでやめた。

 そやけど痛いのはほんま。

 透析を受けている左手をもういやーとブンブンと振り回し暴れたいくらい。

 認知症のお婆さんは針を抜いてしまわはるらしいけど。

 向こうの方のベッドでよく大騒ぎしている。

 4時間、この痛みに耐えられるかと言うと、はなはだ難しい。

 透析技師さんがエコーで血管を診たら、血管の壁に針先が少しでも当たっていると痛むと言う事がわかった。

  それから穿刺をするときはエコーで血管を確認しながらしてくれるようになった。

 以前のような大きな病院ではおそらくスルーされていたやろな。大人数の患者の一人一人の言う事を聞いてられへんって様子だった。

 左手が解決したと思ったら今度は右手が痛い。

 何でやのん。

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