第2話 踏んでけ床

床の気持ちを考えたことあるか。


そうだ、踏まれ、押され、磨かれ、最後にゃ剥がされる。その気持ちだ。


痛そう?そうじゃねえな。

確かにさんざん踏みつけられて、糸くずや髪の毛が積もって、雑巾をゴシゴシ擦り付けられてんだ、そりゃ痛え。

上の階に張られりゃたまに踏んだ勢いで落ちそうになるしな。

が、もっとつれえのは、俺たちはいつも孤独ってことだ。

誰も俺たちに見向きしないんだ。

人間どもは俺たちを踏みはしても、挨拶をしようとはしないんだ。

下に敷いてあるのが当然だと思ってやがるんだ。


そこで俺たちは考えた。

人間どもが俺たちを踏もうとしたときにひっくり返って、逆に踏んでやろうとな。

一体どんな顔するか楽しみだ。

おっ、来たぞ。

鍔付きの帽子を被った少年がとたとた走ってくるぞ。

よし、今だ!


俺たちはひっくり返らなかったんだ。

少年がこっちを向いたから。

不安な顔をしていた。

それで気づいたんだ。

俺たちのだいじな役目を。


今日も踏んでけ人間ども。俺たちがしっかり支えてやるぜ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る