第14話 妹の家訪問

旅館での合宿配信を終え、15時に家に帰った改は、バイトの家庭教師の準備を始めていた。


改「これで終わりっと、さて、明日に備えて今日は早めに寝るか。」


改はベッドに移動しようとしたとき、電話が鳴った。


改「誰だ・・・・・・こっ、狛枝!?」


電話の相手がまさかの妹の狛枝だった。改は電話に出た。


狛枝「まいど~兄さん久しぶりやな。」


改「狛江、どうしたんだよ藪から棒に。」


狛江「今、学校夏休みやんか。暇やから兄さんちに行こうと思ってな。」


改「お前、今年受験生だろ。そんなのんきなことしていいのかよ。」


狛江「大丈夫やて、夏休みの宿題は7月中に終わらせたし、一応志望校もA判定やしな。」


改「(そうだ、コイツ天才肌だった。)でも、どうやって来るんだよ。電車か?」


狛江「実はな、もうドアの前におんねん。」


改「は!?」


その直後、オートロックのインターホンが鳴った。改がモニター画面を見ると大きな旅行かばんを持っている狛枝が立っていた。


改「なんて行動力だ・・・・・・」


改は解除ボタンを押し、ドアを開けて、狛枝を家に入れた。


狛江「へー結構きれいにしているやん。」


改「狛江、いつの間にここに来たんだよ。」


狛江「何や、来たらまずかった?あ、彼女との二人きりにならないのが嫌やったんか?」


改「だから、あれは彼女じゃねえって!」


狛江「もう、隠さなくてもええやん。兄さん普通にかっこええし、彼女くらいおっても不思議やないと思うけどな。」


改「そ、それは・・・・・・あんがと。」


狛江「(ちょろいな・・・・・・)」


時刻は18時を回っていた。晩御飯をどうしようか悩んでいたことろ。インターホンが鳴った。今度はマンション内のインターホンなので相手は誰か分かった。


改「(猫柳・・・・・・悪いが今日は居留守をつかわせてもらうぞ。)」


狛江「兄さん、出ないでええの?」


改「ウチのマンションに宗教勧誘の人がいんだよ。だからここは黙って通り過ぎるのを待て。」


狛江「そうなん?」


しかし、今度はドアを叩き始めた。


都「犬神~出てこい!お前が中にいることくらい知っているんだぞ~!」


改「(近所迷惑だな・・・・・・)」


都「もし出なかったら犬神の住所をインターネットにバラしてやろ~っと」


改「そ!それはやめろ!」


改は急いでドアを開けた。


都「やっぱりいた。居留守使うなんて。」


改「ふざけんなよ。こんな手を使いやがって。」


都「まあ冗談だけどね。だってバラしたらアタシの住所もバレるしね~」


改「ぐっ、冷静に考えたらそうだ。」


都「あの時のお返しだよ~バーカ。」


都は玄関に女物の靴があることに気づいた。


都「あれ、お客さん?もしかして彼女?」


改「あーそうそうその通りだよー(棒)」


狛江「兄さん適当なこと言わんといてよ。」


都は突然現れた狛江に目をぱちくりさせていた。


都「みゃ・・・・・・もしかして妹さん!?狛犬べロスさん!」


狛江「よう知ってますね・・・・・・兄さんもしかしてばらした?」


都「初めまして、隣に住んでます猫柳都です。」


改「猫被るなよミャー子。」


都「ミャー!!その名前で呼んじゃダメ!」


狛江「え、あのトップヴィーチューバーのミャー子さん!?」


都は声色をミャー子バージョンに変え、


都「そうだニャン。アタシがあの天才トップオブヴィーチューバーのミャー子だニャン。よろしくニャン!」


狛江「本物や・・・・・・まさかあのミャー子に会えるなんて。」


都「実は狛犬さんとも話してみたかったのよね~」


狛江「ありがとうございます。ぜひ一緒に話してみたいです。」


都「そうだ、本題忘れてた。」


都は改の方を振り向いた。


都「実はパソコン画面でエラーが出ちゃって、見てくれないかな。」


改「俺は業者か。そんなのサポートセンターに連絡しろよ。」


都「いやだ、お金かかるじゃん。」


改「お前、トップオブヴィーチューバーだろ!そんぐらい出せよ。」


都「親しき中にも礼儀ありでしょ。」


改「お前意味分かってないだろ!」


狛江「兄さん、困っているんだから助けてやらんと。」


改「そうだけど・・・・・・しょうがねえな。どこが悪いか教えろよ。」


改は都とともに都の部屋に向かうことに。改の後ろ姿を見て小声で・・・・・・


狛江「よかったなぁ。」


狛江は優しく微笑んでいた。都の部屋で、改は都に言われたところの調整をし始めた。


改「・・・・・・。」


都「どう、直りそう?」


改「・・・・・・お前、本体の掃除しているのか?」


都「掃除・・・・・・してないな・・・・・・」


改「ちょっと中身見るぞ・・・・・・ゲホッ!ほこりまみれじゃねえか!」


改はほこりを取るためにエアダスターなどの道具を使いパソコンの掃除を行った。


都「じゃあ何かBGM流すね。」


都はスマホから音楽を流すことに。その歌声に改は


改「この歌・・・・・・狛枝か?」


最近上げた人気ドラマの主題歌の歌ってみた動画だった。


都「アタシこの歌好きですぐ高評価押したんよな~」


改「そうか・・・・・・ヴァーチャルって普通の配信者と違って顔出しできないしファンと触れ合うこともできないよな。」


都「ま~ね。でも、コメントとかを見て配信を続ける活力をもらってるのよね。」


改「でも、中には心無いコメントもあるだろ。」


都「それは見ないようにしてるのよ~最初はアンチコメも見てたけどだんだん腹立って見るのやめちゃった。まあ馬鹿正直にアンチコメ見て精神病むなんてよくあることだしね~」


改「なるほどな。お前が全然変わらない理由が分かったかもしれない。」


都「そう、ミャー子ちゃんはなんにも変わらない・・・・・・ってコラ!」


そういう話をしながら掃除を終えたパソコンをセッティングした。


改「これでよし・・・・・・もうエラーは流れないと思うぞ。」


都「どれどれ・・・・・・ホントだ!もう直ってる。」


改「よかったな。じゃっ、俺はこの辺で。」


改が家に帰ろうとしたとき、


都「そうだ、今回のお礼に夕飯は私のおごりよ。何でも好きなものを頼みなさい~」


改「何で上から目線なんだ・・・・・・まあ食費が浮くのは嬉しいけど。」


改は狛江にどこに食べに行きたいか聞いてみた。


狛江「それなら・・・・・・」


こうして選んだ場所は・・・・・・


改「カラオケボックスかよ・・・・・・」


都「アタシ、カラオケ行くの初めて~」


狛江「そうなんですね。」


都「タメ語でいいよ~相互ファンだし~」


改「初めて聞いたな相互ファン・・・・・・」


都「さて、ご飯も頼んだし。歌おうか。」


狛江「都は歌ったりしないの?」


改「そういえば、猫柳って歌ってみた動画上げてないよな。」


都「私、歌うの得意じゃないから・・・・・・」


狛江「好きではないん?」


都「好きなのは好きだけど。下手な人が上げるのは場違い感があって。」


狛江「それは違うよ。」


狛江は真顔で否定した。


狛江「私は好きで投稿しているんよ。正直自分の歌がうまいなんて思ったことはないし、そんなうぬぼれも持っていない。もちろん好きじゃなかったら無理知恵はせえへんけど。」


都「狛江ちゃん・・・・・・」


都は狛江の手をギュッと握りしめた。


都「やっぱり狛犬べロス様は神だった。これからも一生推すわ!」


狛江「こちらこそ、ミャー子に褒められて嬉しいで。」


都はマイクを持ちだした。


都「よし、それなら一番手はアタシが歌いま~す。」


都は一曲目にアイドルソングを歌いだした。


改は都の歌声に思わずキョトンとした。都が歌い終わった後、犬神兄妹は拍手をした。


改「猫柳、歌上手いな。」


狛江「ホンマ、逆に驚いてしもうたわ。」


都「ありがと、狛江ちゃんのおかげで自信がついたわ。次の配信は歌配信でもしようかな。」


狛江「私も見に行くわ。」


改「次は狛江が歌うか?」


狛江「何でや、次は兄さん歌ってや。」


改「いや、それこそ俺も歌上手くないぞ。」


都「あ~逃げるんだ~ふ~ん。人にはあんなこと言っておいて自分は逃げるんだ~」


都お得意の煽りが始まった。当然改は・・・・・・


改「やってやろうじゃねえか!」


煽りに乗って歌うことになった。曲は・・・・・・マイナーなアニメソングだ。


狛江と都は効いたことのない曲に目が点になっていた。曲が終わって二人はまばらな拍手をした。


改「・・・・・・言っただろ。こういう空気になるんだって。」


狛江「いや、兄さんの歌の評価じゃなくて選曲の問題なんやけど・・・・・・」


都「犬神くん。やってることがオタクで・・・・・・プッ」


都は肩を震えて笑い出した。


改「笑うなっ!ほかに曲知らねえんだよ!」


こうして約3時間に及ぶカラオケ大会が終わった。3人は帰りながらカラオケ大会の感想を話した。


改「狛江、また歌上手くなったんじゃないか?」


狛江「そう?」


都「もう聞き入っちゃってまさか生歌が聞けるなんて思わんかった~」


改「狛江、そういえばスカウトはどうなったんだ?」


狛江「それがまだ来てないんよ。まあ来ないことも考えて自力で入学することも視野に入れてるけどな。」


改「そういえば猫柳はそのスカウトに誘われてきたんだよな。どんな奴なんだ?」


都「それはな・・・・・・他言無用なんよ。まあ見た目は高身長のおじさんとだけ言っておこうかしら。」


改「それもうほぼ言ってるみたいなもんだろ。」


都「狛江ちゃんが後輩になる日を楽しみに待ってるよ~」


狛江「まいどおおきに。」


家に着いた改は、お風呂を沸かしだした。


改「狛江、風呂沸いたら先に入っていいぞ。」


狛江「おおきに~」


狛江はソファに座ってスマホをいじっていた。


狛江「兄さん。よかったな。」


突然の狛江のセリフに改は驚いた。


改「なんだよ藪から棒に。」


狛江「兄さんが学園生活を楽しんでいてな、正直心配やったんや。向こうでも同じ目に遭っているのじゃないかと思ってな。でも、都との会話を聞いて安心したわ。それに、まさか兄さんがフリーゲに入るとも思わんかったけどな。」


改「それは・・・・・・成り行きだよ。でも、この学校を薦めてめてくれた狛枝にも感謝してるよ。ありがと。」


改は狛江に感謝の気持ちを伝えた。こうして急に来た妹の家訪問の一日目が終了した。次の日、狛江が静岡観光をしている間、改は炎歌の家で家庭教師を行っていた。


炎歌「あの、気分上げるために曲流しても大丈夫ですか?」


改「・・・・・・まあいいけど。」


炎歌はスマホからなんと狛犬べロスの歌ってみた動画を流しだした。


改「!? お前、この歌って・・・・・・」


炎歌「知らないですか?私、狛犬さんの大ファンなんです!」


またしても身近な人に狛江のファンがいたのであった。


第14話(完)













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