第13話 地縛霊の降霊生配信
ゲームのクリア耐久配信が終わって数時間が経った。改は眠気眼を擦りながら目を覚ました。
改「ふぁ~イデデデ・・・・・・畳の上で寝ちまったか。」
改はむくっと起きた。部屋には隣でガーガーいびきをかいて大の字で寝ていた豪以外誰もいない。
改「みんなどこ行ったんだ?」
改は体を伸ばしながら部屋を出ていくことにした。
改「今、時間は正午か。終わった瞬間寝落ちしたんだな。」
改はスマホで昨日の配信のコメントを見返していた。コメントの多くは、豪樹とカイのゲームセンスについて褒めていた。
改「あのゲーム一日でもクリアできるかどうか分からないくらいのゲームだからな。ここまで評価されるのはありがたいな。」
しかしコメントの下の方を見るとこんなコメントが・・・・・・
コメント「~分のところに霊の声入ってね?」
改「れっ・・・・・・霊!?」
改は配信を見返した。そしてその場面、耳をすませてよく聞くと・・・・・・「ワタシモ・・・・・・ヤリタ・・・・・・」と、か細い女性の声が聞こえた。
改「げっ!本当に霊の声じゃねえか!まさかこの旅館に幽霊がいるってのか。」
?「何言ってんの?」
と背後の声に改は驚いた。
改「ぎゃ~!!お化け!!」
背後にいたのはお化けではなくピンクのTシャツに半パン姿の都だった。
都「失礼ね。誰がオバケよ。」
改「なんだ猫柳か・・・・・・そういえばお前、知ってるか?配信内に聞こえた霊の声が」
都「まあね。」
改「あれ、お前苦手じゃないのか?」
都「ビックリ系が苦手なだけ。それにアタシ・・・・・・霊とか見えやすい人なんだ。」
改「霊感があるのか?」
都「だからこういう類のものはあまり怖くないの。」
改「普通逆じゃね?」
そんな話を偶然通りかかった撫子に、近くに心霊スポットや過去に事故や事件が起こっていないのか聞いてみた。
撫子「そうですね・・・・・・そのような話を聞いたことはないですね。」
改「せめて何か情報があればいいんだけど・・・・・・」
撫子「でしたら私の知り合いに情報通の方がいるんですけど。」
改「情報通?」
撫子「同じ高校の先輩なんですけど新聞部の部長を務めているんです。」
改「じゃあその人に聞いてみましょう。」
撫子はスマホを取り出しとある女性に電話をした。それから一時間後・・・・・・櫻井旅館の入り口にメガネをかけたブレザー姿の女子高生の姿が。
撫子「あ、来ました。」
?「この方が幽霊の声を聞いた方ですか?」
改「あの・・・・・・」
美月「申し遅れました。私は高校3年の「尾上 美月(おのえ みつき)」と申します。」
美月はメガネをくいッとあげた。
改「犬神改です。それで、この旅館に霊がいるってほんとですか?」
美月「ここにはいないですが森の方に一人の女性の変死体が発見されたのです。」
撫子「それ、私もよく覚えています。3年前の話ですよね。」
改は驚いた。ホントに霊の声だったのかと思い身震いした。
美月「その女性は確か高校生だったはず。メガネのかけた文学少女みたいな子でした。」
改「かわいそうに、そんなことがあるなんて。」
改はあたりをキョロキョロしていた。都の姿が見当たらないのだ。
改「あれ、猫柳はどこ行った?」
撫子「そういえば一緒に来ていませんね。」
改「クソっ!どこ行ったんだ。」
改は急いで旅館に戻り都を探し出した。撫子と美月も改の後を追った。1階の自動販売機に都の姿がいた。
改「おい猫柳、どこにいたんだよ。心配したんだぞ。」
しかし都はピクリとも動かなかった。
改「おい、返事くらいしろって!」
都はやっと気づいたのか改の方を振り向いた。しかし、都は首を傾げた。
都?「どちら・・・・・・さまでしょうか?」
改「は?俺だよ、犬神改だよ。まさか記憶喪失にでもなったのか?」
都?「え、この方のお名前はなんていうのですか?」
改「猫柳都だろ。何で自分の名前を忘れたんだよ。」
都?「あ~そうです思い出しました。猫柳さんでしたね。」
改「さっきから何寝ぼけてんだ?口調もおかしいし、自分の名前忘れたりボケ~っとしていたり」
すると都らしからぬ方からとんでもない一言が出てきた。
都?「実は、今この方のお体をお借りしているのです。」
改「は!?何言ってんだお前!」
後を追った撫子と美月も到着した。美月は息を弾ませていた。
美月「ハアハアハア・・・・・・はや・・・・・・すぎ・・・・・・」
撫子「お体をお借りしているって、もしかして除霊術ですか!?」
改「確かに猫柳は霊感が強いって言ってたけどここまでとわな・・・・・・」
美月は息を整え、都に乗り移った霊に話しかけた。
美月「もしかして、あなたが3年前亡くなった「青峰 栞(あおみね しおり)」さんですか?」
栞「よく知ってますね。そうです。私は3年前、崖に落ちて命を落とした青峰栞です。」
撫子「きゃ~!!本物のオバケ~~~!!」
撫子は逃げようとしたが腰が抜けしりもちをついてしまった。
改「じゃあ、なぜ猫柳の体を乗っ取った?」
栞「乗っ取るなんて滅相もない!悪いことには使いません!」
改「じゃあ何が目的だ?」
栞「私、一度でいいので配信をしてみたいのです。」
改「配信?」
栞「このお方、配信者なんですよね。それで体を使って配信をしてみればいいじゃないかとこの体の持ち主さんに言われまして。」
改「アイツ・・・・・・なんでこう、返答が軽いんだ・・・・・・」
こうしてミャー子の体を使って栞の最初で最後の生配信を行うことにした。しかし問題なのは・・・・・・
改「どういう内容で配信をするかだよな・・・・・・」
都「そうだな~ここはタイトル「いつもとちがうミャー子見せちゃいます♡」とかでもどうかな?」
改「ん?今、腑抜けたミャー子の声が・・・・・・」
都「一時的に元に戻ったの。」
改「そんなぬるっとできるもんなのか!?」
都「今回の霊は素直な方だから。一回彷徨ったサラリーマンのおっちゃん取り込んでひどい目に遭ったことがあったけど・・・・・・」
改「何でそんなことしたんだ・・・・・・」
都「テストで分からないところがあって・・・・・・」
改「(ズルしようとしたのか・・・・・・)自業自得だな。」
都「まあ配信準備はアタシに任せて先輩方に入らないようにドアの前で見張っといて。」
改「分かったよ。さすがに憑りついたなんて宇佐美先輩たちには言えねえしな。」
改は部屋を出る前に都にあることを聞いた。
改「なんで青峰さんは配信をしたいって思ったんだ?」
都「それはね、毎年の合宿で干支珠高校の人たちが生配信をしているのを見て興味を持ったらしいの。」
改「そんな理由かよ。もしかして成仏できない理由ってそれか?」
都「たぶんね。」
改は部屋を出て、ドアの前で監視をすることに。するとさっきまでいびきをかいて寝ていた豪がトイレから戻ってきた。
豪「んだよ。お前何でドアの前に突っ立ってんだよ。」
改「今、ここ立ち入り禁止なんで。」
豪「は?何言ってんだてめぇ。ここ男子部屋だぞ。」
改「とりあえず1時間ゲームして潰してくれ。」
豪「何でだよ。俺、部屋でゲームの続きしたいんだけど。」
改はポケットからスマホを取り出して配信を見始めた。そう、今から霊「青峰栞」の配信が始まるのだ。突然のゲリラ配信のため、見に来た人数は約2万人ほどだが(この人数でも多いような・・・・・・)
都(栞)「えっと・・・・・・配信開始ボタンってこれだっけ・・・・・・」
栞は都の記憶を頼りに配信開始ボタンを押した。
都(栞)「は、始まった・・・・・・あ、もう喋っていいのかな・・・・・・」
コメント「いいよ~」
コメント「落ち着け~(笑)」
コメント「ホントに初配信しているみたいでミャー子上手すぎなんだが。」
コメント欄は本当に幽霊が配信しているのを知らないためミャー子の演技力をほめていた。
都(栞)「えっと・・・・・・あの・・・・・・初めまして、化け猫Vetuberのあおにゃんだニャン・・・・・・」
このあいさつ文は都が考えたものだ。猫キャラなので化け猫という設定とのことだ。このあいさつをした直後、栞は恥ずかしさのあまり・・・・・・
都(栞)「やっぱり恥ずかしいこの挨拶!!」
コメント「自分で言って恥ずかしがるのか(笑)」
コメント「これは黒歴史確定。」
コメント「恥ずかしがるあおにゃんかわよ。」
コメントは恥ずかしがる声に称賛の声が上がった。
都(栞)「(あれ、何を喋るんだっけ・・・・・・)」
栞は普段喋らないのでどんな話をしていいのか分からなくなり止まってしまった。
都(栞)「(どうしよう・・・・・・無言になったら放送事故になるんだよね・・・・・・でもどんな話題を出せばいいんだろう。)」
その時、都が栞に脳内でアドバイスをした。
都(栞)「みんな、夏休みどうしてる?」
今が夏休みということで夏休みトークをすることになった。
コメント「宿題まだ手をつけてな~い。」
コメント「部活の夏合宿がマジでキツイ。」
コメント「毎日配信見てま~す。」
都(栞)「私も宿題は最後の1週間にラストスパートをかけてやって結局終わらず先生に怒られてたな。」
コメント「解釈一致(笑)」
コメント「さすがあおにゃん。」
コメント「演技はよくても中身はやっぱりミャー子だ(笑)」
都(栞)「え、私ってそんな感じなの・・・・・・結構適当言ってたんだけど。」
コメント「役に入り込んでるな。」
都(栞)「(この子・・・・・・怠惰な学生生活を送っているのね。)」
その後、配信に慣れ、緊張がほぐれたのか30分予定の雑談配信が1時間を過ぎていた。
都(栞)「さて・・・・・・そろそろ終わりにしたいと思います。今日の配信は一生忘れないわ。みんな・・・・・・ありがとう・・・・・・」
栞は目から涙の雫が一滴落ちた。驚いているとその涙はダムが決壊したように溢れて出た。
都(栞)「(やめたくない・・・・・・もっと続けたいよ・・・・・・もっとみんなとおしゃべりしたい・・・・・・)」
涙の訳は配信を止めると成仏してしまうと思い、やめたくないと体が反応していたのだ。でも、いつまでも都の体を使うわけにもいかず、配信を終了することを決めた。
都(栞)「じゃあね・・・・・・みんな・・・・・・」
栞は配信を切ろうとしたその時、左クリックを押そうとした人差し指が止まった。
栞「(あれ、なんで動かないんだ?)」
すると脳内で都が語り掛けた。
都「あのさ、成仏するなら配信付けたまましない?」
栞「(え、何言ってんの?)」
都「だから、成仏の瞬間を配信で残すんだよ。」
栞「(そんなことして変な配信として残ったらどうするの!?)」
栞も脳内の都に話しかけていたので無音の配信中の画面では配信切り忘れかと心配の声が上がっていた。
都「いいの、これは私のチャンネルだから私の好きにしていいの♡」
栞「(アナタ、頭のねじが2~3個ほど吹っ飛んでいるわね。)」
都「吹っ飛んでないと配信者なんてやってないわよ~」
栞「(それもそうね。でも、あなたのおかげでやりたかった配信もできた。感謝してもしきれないわ。)」
都「そういわれると照れるな~」
栞は深呼吸をした。そしてゆっくりと魂が天に上がっていく。
栞「ありがとう・・・・・・そしてこれからの配信活動、空から応援しているわ。」
こうして栞の魂は天へと召された。そして都の魂は肉体に戻っていった。
都「みんな、無言でごめんね~今はあおにゃんではなくいつものミャー子に戻ったにゃ~。これで今日の配信は終わりだけど今日はまた新鮮で面白かったにゃ~。じゃあお疲れニャ~んこ。」
こうして都は配信を切った。配信を切った後、襖を開けて改を呼びに行った。
改「お疲れ、青峰さんは天に召されたか。」
都「まあね~でも誰もこの部屋に入れないよう監視してくれてありがとう。」
改「猿渡なら撫子さんに頼んでスポーツ観戦の真っ最中だよ。」
都「なら大丈夫ね。でもとても楽しかったし、これからまた降霊術やろうかしら。」
改「またサラリーマンのおっさん見たいに痛い目見ると思うからやめておけ。」
しかし、この最初で最後のあおにゃん配信は瞬く間に再生回数を伸ばし、急上昇ランキングで1位を取ったのであった。そして・・・・・・撫子と豪はサッカーの試合のライブ中継を見ていた。
撫子「行け!ディフェンダー薙ぎ払え!」
豪「そこでシュートしろよヘタクソ!!」
こちらもこちらで楽しんでいた。
第13話(完)
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