第12話 合宿配信「クリア耐久編」
夕方6時、フリーゲ夏合宿の配信が始まった。
マリット「みんな~夏の合宿配信始まるよ~!!」
治昭「相変わらずテンション高いね。」
コメント「俺も楽しみにしていた。」
コメント「この時のために仕事頑張った。」
馬理央「それで、今日は何するんですか?」
コメント「相変わらずクールだね。馬理央ちゃん。」
改「(初めてバーチャルキャラを見た時、クールなお姉さんキャラだと思っていたけど。姿を見た時にイメージが崩れたな。)」
とジッと理央を見ていた。
馬理央「何?」
と改を睨みつけた。
カイ「な、何でもないです。」
マリット「さて、さっそくどんなゲームをするかというと・・・・・・「幽霊城」のクリア耐久よ。」
コメント「幽霊城!?」
コメント「あれの耐久配信は大変だぞ。」
カイ「聞いたことありますよ。多くのゲーマーを挫折と絶望に追いやったゲームだと。」
ミャー子「え~あたしホラゲ苦手なんですけど~」
コメント「そういえばそうだった(笑)」
コメント「あのアーカイブ何度も見て可愛すぎて萌え死んだ。」
マリット「これはホラゲーじゃないわ。主人公の見習い騎士の「ライト」がさらわれた姫「キャメロット嬢」を救出するため「幽霊城」に乗り込む話よ。あ、それで思い出した。この旅館・・・・・・出るらしいよ。」
辰浪「は・・・・・・?それ、去年聞いてないぞ!」
マリット「だって去年はRPGをやってそんな話する?」
辰浪「僕、本当にそういう話苦手なんだよ。」
豪樹「へ~いいこと聞いたな~」
と豪樹はニヤニヤしながら辰浪を見ていた。
辰浪「ぐ・・・・・・また豪樹に弱みを握られた・・・・・・」
コメント「先輩の威厳が(笑)」
コメント「豪樹に煽られる。」
豪樹「でもこれ、昔のレトロゲームっスよね。よく手に入りましたよね。」
辰浪「ここの旅館の担当者がレトロゲー大好きな人でな。快く貸してくれたよ。」
コメント「マジで!」
コメント「その旅館行ってみたい。」
マリット「今回は交代制でゲームクリアするまで終わらないわよ。」
治昭「順番はどうするかい?」
マリット「最初は私から挑戦してもいいかしら。」
マリットがコントローラーを握り、ゲームを開始した。騎士ライトを操作してそれぞれのステージを攻略する。ステージは全部で5ステージある。
マリット「最初だし簡単でしょ。」
コメント「それは・・・・・・」
コメント「このゲーム最初から難しいもんな。」
マリットは中盤に現れる赤い悪魔に倒された。
コメント「コイツだよ!」
コメント「あの赤い悪魔が厄介なのよ。」
マリット「何コイツ!ステージ1の敵じゃないでしょ!」
辰浪「この悪魔がゲーマーの心をへし折る原因か。」
マリットはまたしてもこの赤い悪魔にやられゲームオーバーとなった。
マリット「ここから先進めなかった・・・・・・」
マリットは最初からゲームを始めた。
マリット「だったらこのまま逃げるか。」
マリットは赤い悪魔を倒さずに逃げることに、絶対に倒さなくてはならない敵ではないため逃げても影響はないが・・・・・・
マリット「ちょっ!追いかけてくるんですけど。」
コメント「当たり前だろ(笑)」
コメント「初歩的なことで草」
マリットは結局逃げきれず赤い悪魔に倒されてしまった。
マリット「治昭くん。あの赤い悪魔倒せる?」
治昭「まかせて。」
マリットは治昭にコントローラーを渡した。
治昭「実はね、僕このゲームの経験者なんだよね。だからこの赤い悪魔の倒し方は分かるんだ。」
コメント「経験者なの?」
コメント「本当に高校生?」
治昭は華麗に赤い悪魔をかわし、攻撃を当て、赤い悪魔を倒した。
コメント「さすが治昭。」
コメント「でもこのゲーム経験者でも難しいんだよね。」
治昭はステージ1のボス、ゴーレムを倒し突破したもののステージ2の序盤の空中足場にやられてしまった。
治昭「ハハハ・・・・・・ステージ2のこの空中足場がニガテで諦めたんだよね。」
辰浪「じゃあクリアできてないじゃないですか。」
コメント「ステージ2は難しいからな。」
豪樹「よし、次は俺にやらせろ。」
辰浪「お前のガサツさじゃすぐにゲームオーバーになるのは目に見えてるな。」
豪樹「へっ、言っとけ。こんなの楽勝だから。」
このゲームの厄介なところはノーコンテニューでクリアしなければならないところだ。すなわちゲームオーバーで最初からやり直しになるところだ。
豪樹「これ、クソゲーだろ。」
カイ「バカ!すぐにクソゲーって言うな!」
しかし、治昭もミスしていた空中足場で豪樹も全滅してしまった。
豪樹「は?ざけんな!できるかこんなステージ!」
コメント「あーあ、豪樹キレちゃった。」
コメント「こうなるだろうと思った。」
ミャー子「じゃああたしにやらせて~」
ミャー子は豪樹がほっぽり出したコントローラーを取った。しかしマリットと同じ赤い悪魔に倒されゲームオーバーとなった。
ミャー子「ミャ~強いなコイツ。」
カイ「これはコンテニューないときついな。」
馬理央「ねえ、このコメントを見て。」
馬理央が指差したコメントを見ると隠しコマンドのコンテニュー方法が書いてあった。
カイ「えっと、ゲームオーバーの画面の時に十字キーの上、下、右、左の順で押すと途中から始められるって。」
治昭「そうか、それなら行けるかも。」
ステージ1は治昭のチカラで一機も倒されずにクリアした。次は馬理央がプレイすることに。
馬理央「・・・・・・。」
馬理央は淡々と空中足場を飛び越えていった。
辰浪「いや、なんか反応しろよ。」
馬理央「うるさい、今集中してるの。」
辰浪「いや、黙ってたら実況にならないだろ。」
馬理央「そうね、辰浪が代わりに喋っといて。」
辰浪「は!?」
豪樹「今んとこ、なんもしてねえしな。」
辰浪「それをいえばカイもそうだろ。」
辰浪はカイを探したがいつのまにかいなくなっていた。
辰浪「あれ、カイは?」
ミャー子「飲み物取りに行きました。」
一方その頃ジュースを買いに自動販売機にいたカイもとい改は・・・・・・
改「ねむ・・・・・・今、9時かよ。」
改は眠気眼を擦りながら水を取った。しかし、この時「キャ~!!」という叫び声が聞こえた。
改「何だ!事件か?」
改は声のした方向に走っていった。旅館の端にある従業員の宿舎だった。入口にいる仲居さんに声をかけた。
改「あの、ここから叫び声が聞こえたんですけど。」
仲居さん「あら、心配いらないわ。おそらく撫子ね。」
改「撫子さん?」
仲居さん「今、野球中継を見ているのよ。あの子の趣味がスポーツ観戦でね。もうオリンピックの時は毎回絶叫の嵐よ。」
改「そうスか。(宇佐美先輩の言ってた騒がしいってそういうことだったのか・・・・・・)」
改は配信している部屋に戻った。マリットこと真理佳は眠りについていた。現在、辰浪がステージ3の水中ステージをやっていた。
治昭「カイ君お帰り。」
カイ「いま、辰浪さんが挑戦しているのですか?」
辰浪「人喰いザメが厄介なんだよ。」
辰浪は水中にいる人喰いザメから逃げていた。この人喰いザメに食われると一発アウトになる。辰浪はコントローラーをカチャカチャ鳴らしながら水中を進み何とかボスのところまでたどり着いた。
辰浪「よし、あとはこのボスを倒せば終わりだな。」
辰浪はゲームをポーズしてコントローラーをカイに渡した。
辰浪「カイ、このボス倒してみろ。」
カイ「え、まだ操作にも慣れてないのですけど。」
豪樹「負けたら罰ゲームでもやってもらおうか。」
カイ「ふざけんな、圧倒的に俺の方が不利だろ。」
ミャー子「そんなこと言って、本当は負けるのが怖いからでしょ~」
カイ「あのな、俺は豪樹とは違って煽っても何も返ってこないぞ。」
しかし、コントローラーを押す音が強くなっていた。
コメント「あれ、実は煽られてる・・・・・・」
コメント「カイも煽り耐性ゼロか・・・・・・」
しかし、カイは巧みなコントローラーさばきでボスをものの数分で倒した。
辰浪「おい!これじゃあ僕の立ち位置なくなるじゃないか。」
コメント「辰浪サイテーだな。」
コメント「後輩いじめるなよ。」
コメント「素晴らしいかませ犬だ。」
と辰浪の批判コメント(本気ではない)が溢れていた。ステージ4の幽霊城入口は引き続きカイが挑戦することに。
カイ「ぐっ・・・・・・」
カイでも一時間経っても全然クリアできなかった。
カイ「ホントに難しいな・・・・・・さすが難関ゲームと言われるだけあるな。」
馬理央「じゃあ私がやろうか。」
カイ「すいません。お願いします。」
カイはコントローラーを馬理央に渡し、チョコレートで糖分補給をしていた。隣でミャー子こと都がこっくりと眠そうな表情をしていた。
カイ「ミャー子。眠いなら寝ていいぞ。」
ミャー子「ん~じゃおやすみ・・・・・・」
ミャー子は横に倒れカイの膝を枕にして眠り始めた。
カイ「ばっ!(ここで寝るなよ!実写なら間違えなくファンに殺される・・・・・・)」
豪樹「おいミャー子。カイのひざま・・・・・・」
カイ「あ~!!バカ何言って!」
馬理央はカイの声でビクッとなってモンスターに倒された。馬理央は静かにカイを睨みつけた。
カイ「すいません・・・・・・」
カイは壁掛け時計を見た。時刻は12時を周ろうとしていた。
馬理央「次、豪樹くんやってくれない。私、寝るわ。」
豪樹「まかせろ!」
豪樹コントローラーを受け取るとステージ4の後半に挑んでいた。いつの間にか辰浪と治昭も寝落ちしていた。カイも睡魔が襲っていた。
カイ「(やば・・・・・・俺も限界かも。)豪樹、お前は眠くないのか?」
豪樹「は?ここからが本番だろ!ゲーマーは夜が活動時間だからな!」
コメント「さすが深夜実況者。」
コメント「こりゃあ豪樹以外は寝落ちエンドかな。」
カイは机の上にある冷却シートを頭に張り付けた。これで眠気を覚ました。
カイ「お前ひとりじゃ不安だからな。交代する時はいつでも呼べよ。」
豪樹「誰がお前を頼るかよ。まあ、お前がどうしてもって言うならやらせてやってもいいけどな。」
コメント欄も続々寝る人が多くなったころ、ステージ4のボスを迎えた。幽霊城の門番のデュラハンと対決することになった。豪樹はデュラハンの剣捌きをかわし、攻撃を確実に当てていた。
カイ「(やっぱコイツ上手いんだな。)」
しかし、検討むなしくやられてしまった。いつもなら猿のごとくギャアギャア騒ぐのだが。
豪樹「次・・・・・・」
と、デュラハンとの戦いに戻った。そこでカイがあることに気づいた。
カイ「豪樹、攻撃の仕方が分かった。剣を上に構えたら振り下ろす攻撃。剣を横に構えたら突き刺す攻撃をするんだ。」
豪樹「あ?」
カイ「コメント欄にそう書いてあってどういうことかなって思ったら微妙に剣の振り方が違ってそういうことだったのかと思って。」
豪樹は剣の振り方をよーく見ていた。そして、カイの言う通り横に構えたのでジャンプしてよけた。
豪樹「そうか、そういうことか!」
豪樹はその指示に従いつつ攻撃を当て続け、ついにデュラハンを倒すことに成功した。
豪樹「おらっ!やってやったぞ!」
コメント「すごっ!」
コメント「こんな短時間でできるなんて。」
豪樹はコントローラーをカイに渡した。
カイ「俺が?」
豪樹「疲れた。最後の敵は任せる。」
カイ「分かったよ。」
カイはコントローラーを受け取ると最後のステージ幽霊城へと向かった。幽霊城は今まで戦ったボスが出てくるステージだった。最初のステージ1のボス。ゴーレムを倒し、ステージ2のボスの双竜を倒した。そしてステージ3のボスのドラキュラで倒されてしまった。
豪樹「倒されると最初のボスからやり直しになるのか。」
カイ「これは長い戦いになりそうだな。」
それから1時間が経ち、ステージ4のボスのデュラハンを倒し、最後のヴァンパイア魔王との最終決戦となった。ヴァンパイア魔王は今までの敵とは違い、広範囲の光線や炎攻撃を繰り出した。よけるので精一杯なカイはダメージを与えられずに倒されてしまった。
カイ「(やば・・・・・・眠くなってきた。続けてやってきたせいか頭も回ってない。)」
カイは豪樹に後を託そうかと思ったが、コメント欄に「カイ頑張れ~!!」「あともう少し!」と、応援コメントが流れていた。
カイ「(これか、応援の力は。)」
豪樹「おい、眠いようなら代わるぞ。」
カイ「は?そんなわけあるかい。やってやる。」
そして心の中でいつもの決め台詞を呟いた。
カイ「(魔王、さあ始めるか。「Play the GAME・・・・・・」)」
カイはコンテニューをしてヴァンパイア魔王と再戦することに。何度もやられてしまったが繰り返しやっていくうちに行動パターンを理解し少しずつ攻撃を当てられるようになった。
ミャー子「ん・・・・・・」
カイに布団に運ばれ眠っていたミャー子が目を覚ました。そして画面を見るとカイとラスボスが戦っているのが見えた。
カイ「これで、終いだ!!」
カイの最後の攻撃が魔王に当たり、ヴァンパイア魔王を撃退した。
豪樹「しゃあ!」
合計8時間で激ムズゲーム「幽霊城」を攻略することができた。
コメント「クリアおめでとう!」
コメント「こんなに早くクリアできるなんて!」
コメント欄にはたくさんのゴールドチャットが投げられた。
ミャー子「ゴールドチャットがたくさんニャ~ありがとだニャ~!」
カイ・豪樹「ミャー子!?」
ミャー子「というわけで今日の配信はこれで終了ニャ。夕方からまた次の配信あるからまたお楽しみに~それでは解散!」
最後はミャー子が締めて終わった。この動画が夏の合宿配信で一番の再生数になり、カイのゲームの腕前も有名になったのであった。
第12話(完)
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