第11話 合宿と川遊びとバーベキュー

夏休み、改は家庭教師のバイトで中学3年の御門炎歌に勉強を教えていた。


改「よし、だいぶ基礎問題はできるようになったな。」


炎歌「そうですか、もっと褒めてもいいんですよ。」


と、どや顔で改を見つめた。


改「バカ、どや顔すんな!それでも普通の人より進みが遅いんだからテンポよくいくぞ!」


炎歌「もうちょっと褒めてもいいじゃないですか?」


改「調子乗り出すからダメ。」


炎歌「はっはっはっはっは!その通りですね!」


改「笑い事じゃねえだろ!」


そんないつものコントを終わらせ・・・・・・


炎歌「ところで、犬神さんって部活入っているんですか?」


改「え・・・・・・入っては・・・・・・いないかな。」


炎歌「なんでそんな曖昧な返事するんですか?」


改「そもそも部活入ってたらこういうバイトできないだろ。」


炎歌「そうですね。」


改「それと・・・・・・明日、クラスメイトと旅行行くんだけど土産何がいいか?」


炎歌は驚きの表情を見せていた。


改「なんだよ。」


炎歌「犬神さん、友達いたんですね。」


改「はっ倒すぞオマエ!」


本当はフリーゲ合宿のため、静岡の山奥にある旅館に行くのである。目的はフリーゲのメンバーとの親睦を深めることと5日間のフリーゲのゲーム合宿も兼ねている。そしてこの合宿配信は再生回数が多く話題性もある。次の日、改はキャリーバッグを持って家を出た。そしてお隣の寝坊助を起こしにチャイムを押した。


改「おい寝坊助。早く行くぞ。」


しかし返事がしない・・・・・・そんなことは彼にとっては想定済みである。


改「(しょうがない・・・・・・こういう時は、無視する。)」


改は一人で浜松駅に向かった。浜松駅には先輩の真理佳、義治、2年生の 理央、そして辰浪こと「辰山 並木(たつやま なみき)」が駅で待っていた。


義治「やっぱり犬神くんが早く来たか。10分前行動なんてさすがだね。」


真理佳「他の二人はやっぱり遅刻か・・・・・・」


理央「遅刻なんて配信者なめてるのかしら。いくら人気者でもそこらへんのルールはキッチリしないと。」


真理佳「えらいね~理央ちゃん。よしよし~」


真理佳は理央の頭を撫でた。


理央「子ども扱いしないでもらえます!?」


理央は身長が140㎝ほどで小学生によく間違われるらしい。


並木「お前はチビだからな。」


理央「辰山オマエ!」


理央は並木の体をポカポカと叩いた。もちろんダメージはない。


義治「犬神くん。理央ちゃんと並木くんはこう見えて仲いいから勘違いしないでね。」


改「とてもそうには見えないですけど・・・・・・」


それから5分後に豪が到着した。


並木「遅いぞ猿渡!」


豪「うるせえな。多少の遅刻ぐらいいいだろうが。」


改「猿渡お前ってやつは・・・・・・」


真理佳「さて、あとは猫柳さんだけだけど寝てるのかしらね?」


改「(その通りです・・・・・・)」


と心の中で改は答えた。


乗る電車の時間まであと10分のところでパタパタと速足で都がやってきた。なぜか髪の毛はボサボサで服装も乱れていたが。


都「ハアハア・・・・・・お待たせしました。」


豪「遅えぞ!」


改「お前も人の事言えないぞ。」


真理佳「とにかく、全員そろった。早く乗らないと予約の時間に間に合わないわ。」


切符を買い、全員が電車に乗り込んだ。しばらくして理央の説教が始まったが説教された豪と都はほとんど話を聞いていなかった。


改「ところで今から行く旅館って、どういったところなのですか?」


真理佳「山奥にある歴史ある旅館よ。おまけに干支珠高校といろいろ交友関係があるから配信もオッケーだからいろいろと都合がいいのよ。」


改「配信も大丈夫な宿泊施設なんて聞いたことないですよ・・・・・・」


真理佳「普通は配信なんてしないからね。私たちはあくまで配信者だから面白いものは全部配信するの。」


改「それと俺たちと同い年の若女将がいるってらしいんですけどどんな方ですか?」


真理佳「そうね、一言でいえば・・・・・・騒がしい人?」


改「そ、それはまた癖の強そうな人ですね・・・・・・」


電車に揺られて数時間。目的駅に到着したメンバーは駅で寅威先生と合流し、旅館の送迎バスに乗り込み山の中を数分間進み、目的の旅館にたどり着いた。看板には「櫻井旅館(さくらいりょかん)」と書かれている。

バスを降りたメンバーは旅館の中に入った。玄関では黒髪のロングヘアにコスモスピンクの着物を着た高校生の若女将が迎え入れた。


撫子「ようこそ、干支珠高校の皆様。わたくし、櫻井旅館若女将の「櫻井 撫子(さくらい なでしこ)」と申します。」


改「あ、お出迎えありがとうございます。」


改は思わず敬語で挨拶を返した。


豪と都はあまり話を聞いてなく、電車やバスの中ではずっと眠っていた。


部屋に案内され、男子部屋と女子部屋に分かれた。男子部屋では


改「風景がいいですね。夏なのに涼しい~」


並木「夏にはぴったりの宿っすね。」


義治「そうだね。撫子ちゃんも丁寧な接客だしね。」


改「(宇佐美先輩、騒がしい人って言ってたけどとてもそうとは思えないな。)」


豪は自分で持って来た携帯ゲーム機でゲームをしていた。


豪「くそっ、このモンスターしぶといぞ!」


改「猿渡・・・・・・」


並木「こりゃあしばらく宿に籠ってそうだな・・・・・・」


義治はスマホでメッセージを見た。


義治「川で遊ぶから水着に着替えて裏にある川に集合だって。」


並木「早速川遊びかよ・・・・・・会長陽キャだよな・・・・・・」


改「猿渡、着替えて行くぞ。」


豪「は?なんでそんなところに行かなくちゃなんねえんだ。クーラーの利いた部屋でゲーム三昧だろ。」


改「ダメ人間すぎるだろ・・・・・・」


義治「ちなみに昼は川の近くでバーベキューらしいぞ。」


豪の目の色が変わった。


豪「それ先に言えよ!」


改「はあ・・・・・・」


着替えを済ませ、川に向かった。女性陣は先に到着して入る前の準備体操をしていた。


改「すいません。遅くなりました。」


真理佳「遅いぞ、体操しないと足攣ったりするからね。」


真理佳は紺色のビキニを着ていた。そして隣の都はスクール水着を着ていた。


改「で、猫柳はスク水かよ・・・・・・」


都「いいでしょ!?あたし、スク水好きなんだから!」


豪「お前、変わり者だな。今どきスク水好きなやつなんて・・・・・・」


都「猿渡く~んなにそのひょろひょろな体は?もやしみた~い。」


豪「うるせぇ!お前のそのだらしねえ胸強調すんな!」


都「何見てるのよ変態!」


豪「おめえこそ体の事とやかく言う筋合いはねえ!!」


理央「ホントにギャンギャンやかましいわね。子供のお遊戯会かしら。」


全員が理央の水着を見た。黄緑のワンピースを見て思わず。


並木「お前の方がもっと子供っぽだろ(笑)」


と少しバカにしたように笑いながらそう言った。


理央「辰山、お前は今日ここでつぶす!!」


理央はそういって並木を追いかけまわした。


改「(先輩も同レベルだな・・・・・・)」


準備運動を終わらせ、川に入った。水かさは膝ほどで溺れないように虎好先生が場所を指定したのである。


真理佳「冷た~い」


義治「水が透き通って魚が見えるな。」


一番盛り上がっていたのは3年生の二人だった。


理央「二人とも陽キャですか・・・・・・とてもついていけないです。」


改「辰山先輩、その手に持っているものは?」


並木「これか?水鉄砲だよ。最近のやつはデザインにも凝ってんだよ。」


並木は水鉄砲を理央にかけた。


理央「オマエ、やりやがったな!」


理央がバケツに水を汲んで並木に思い切りぶちまけた。


並木「てめぇ!バケツどこから持って来たんだよ!」


理央「お前こそ何で水鉄砲持ってきてんだ!」


並木「これは旅館の借りものだ。今どきの旅館は水鉄砲もレンタルできんだな。」


改「(それはないだろ・・・・・・)」


川で一人バシャバシャして遊んでいた都は


都「辰山さん、その水鉄砲貸してもらえません?」


並木「いいけど何に使うんだ?」


都「日陰で休んでる陰湿猿にいたずらを・・・・・・」


改「(出たな・・・・・・ゲス猫・・・・・・)」


暑いのが苦手な豪は日陰で横になって休んでいた。


豪「岩の上チベタ~あんな暑いところにいたら溶けちまうぜ。」


なんか吸血鬼みたいなことを言っている豪はコッソリ近づいている都の姿に気付いていない。


都「くらえ!ニャンニャン光線~!」


都の発射した水鉄砲が豪の顔に命中した。


豪「ぶっ!なにするんじゃこのクズ猫!」


都「にゃはは~そんなところで寝そべっている方が悪いニャ~ン」


豪は都を追いかけまわした。しかし、足を滑らせて豪は川に落ちた。


豪「ぶはっ!ちきしょう!猫柳のやつどこ行った?」


改「追いかけまわしたくせに水に落ちるとかダサすぎだろ。」


豪「うるせぇ!その水鉄砲寄越せ!!」


改は豪に水鉄砲を投げ渡した。そして都のいるところまで上がった。


豪「覚悟しろ、猫柳!」


豪はトリガーを引いたが水は出なかった。


豪「なぜ出ない・・・・・・」


改「当たり前だろ。水入れてないんだから。」


豪が改の方向に振り向いたら改の水鉄砲が顔面に直撃した。


都「ナイス!犬神くん。」


豪「お前ら・・・・・・ぶちのめす!!」


豪が都と改を追い回しているうちに川遊びは終わった。


水着の上にシャツを着てこれからバーベキューの支度を始めた。


改「・・・・・・猫柳、その恰好プール掃除しているようにしか見えないぞ。」


都「なによ、見ないでよ変態。」


改「何でだ!」


真理佳「この中で料理できる人!」


手を挙げたのは理央と改だった。


並木・豪「お前料理できるのか!?」


改「いや、一人暮らしだし最低限のことはできるぞ。」


理央「意外な才能ね。」


真理佳「私も料理係やるから巳扇さんたちは食器を準備しておいてください。」


義治「りょ~かい。」


真理佳・理央・改は料理担当。義治・都・並木・豪は食器担当となった。料理班は慣れた手つきで材料を切っていた。


真理佳「こういう料理配信とかもできればいいけどヴァーチャルだとなかなかできないのよね・・・・・・」


改「手元とか移せる配信とかあればいいんですけどね。さすがに厳しいか。」


理央「そういうのが増えればもっと配信の幅が広がりますけどね。手元移したら身バレの危険性もありますし。」


と配信の制限を改めて痛感した料理担当は串に具材を刺しバーベキューの準備ができた。義治がバーベキューグリルの準備を終え、肉を焼き始めた。


義治「はい、この焼き加減なら大丈夫かな?」


義治は全員に肉串を渡した。


豪「うめ~!!」


豪は串にがっついていた。


都「あたし・・・・・・ピーマン苦手なんだけど。」


改「好き嫌いすんなよ・・・・・・」


理央「この焼き加減。さすが巳扇先輩ですね。」


並木「この後焼きそば焼きません?」


真理佳「いいね、私もそれ食べたい!」


フリーゲメンバーはバーベキューを楽しんだ。この後はゲーム実況配信だ。


第11話(完)

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