第10話 お風呂の準備
浴槽よし! お風呂のお供の黄色いアヒルもよし! 着替えもよし、っと。
最終チェックを終了させた……準備は整っただろう。
後はマリアンヌに声をかけるだけだ。お風呂場から出て俺の部屋にいるマリアンヌに声をかけるため、念のため自分の部屋にノックする。
「マリアンヌー、準備で来たよー」
しーん、と反応が返ってこない。
どうしたんだろうと思い、マリアンヌの許可なく部屋に入ることにした。
ガラ、と開けるとビクッとマリアンヌの身体は揺れた。
「マリアンヌ、どうしたの?」
「み、ミチタカ……わ、私」
マリアンヌは俺に怯えた目を向ける。
……もしかして、何かやらかしたのか? 確認すると、テレビの画面が消えている状況を見て、なんとなく察した。
ゲーム初心者あるあるだな。俺は怒らずに静かに言う。
「わ、私は、その……その、いろんなものがいっぱいで、よくわからなくなって」
「何?」
「わ、私! こ、壊したつもりはありませんの! で、でも……下手に触ってしまって、貴方に怒られるとわかっていましたけど、とにかく自分で対処しようと」
「色々と押したわけだ」
要するに、コントローラーで俺のIDのトップ画面に移行しちゃったわけか。
まだマリアンヌにはそこの説明は省いちゃってたし、仕方ないという奴だ。とりあえずマリアンヌが魔法とか使ってゲームを破壊、って展開にはならなくてよかった。
でも、もしかして以外に小心者なのか? マリアンヌって。
ゲームではあんなに堂々としてたのに……恋する乙女はそれほど慎重な物なのかねぇ、俺には無縁な話だと思うけど。
「……怒っています?」
「コントローラー貸して」
「は、はい」
俺はボタンを押して、ゲーム画面に戻すとそこはセーブ画面になっていた。
ゲームのセーブ画面の所まで来れたんだ、じゃあとりあえずマリアンヌにはわかりやすく説明しておかないとな。
「ごめんね、マリアンヌ。俺ちょっと説明省いてたよ。不安にさせたよね」
「……でしたら、よかったです」
マリアンヌは心からほっとした顔を浮かべた。
……やっぱり知らない男の部屋って言うのもあるし、俺が離れていたのもあって不安だったんだろうな。今信じてるのは、俺じゃなくて女神様の方だろうし。
「とりあえず、マリアンヌ。お風呂入っておいでよ。服とかは母さんのパジャマを置いてあるから、お風呂から上がったらそれに着替えればいいから」
「……わかりましたわ、まあ? 貴方のミスだと私は確信しておりましたけどね!」
マリアンヌは調子が戻って、自信たっぷりに言い放つ。
うん、大丈夫そうだな。
「それじゃ、お風呂は一人で入れる?」
「……それ、は」
「?」
マリアンヌは言いにくそうにしながら、静かに告発した。
「……服の脱ぎ方がわからないのです、いつもメイドたちに着替えさせてもらっていたので」
「……あー、その問題あったね」
そうだった、こういう高飛車そうな公爵令嬢が一人で着替えとかしないタイプの可能性考えてなかったよ俺の馬鹿。
中世イメージの貴族様が自分で服の着替えとかするわけないもんなぁ。
じゃあ、母さんが来るまで待つ? いや、母さんたちに説明するためにはもう少し後の方がいいだろう。愛希をなんとか丸め込めば……あるいは。
「服は俺が脱がすからお風呂入ってくれる?」
「ミチタカの家は、メイドはいませんの?」
「さすがにね、父さんの部下を顎で使える程度だよ。流石に女性の人を呼ぶとしても、この状況は説明しきれないしね」
「……そう、ですか」
「さ、お風呂入ろっか」
俺はとりあえず、今後のことを一気に考えるのはやめ、とにかく今のマリアンヌをお風呂に入らせることに集中するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます