第8話 輪廻転生の末に

運命の人を求める行為とは、元々一つだった魂が半分に分かれ二つの魂になり、その片割れを求める事だ。


イブはアダムの肋骨から作られている神話に通じている。


前世では、色情魔のような烙印を押され、罪人、魔女として公開処刑された。

彼は私を助けることは出来なかった。

彼はどれくらいの間、その出来事に苛まれていただろう。


現世では私はある種の罪人だった。借金を重ねていた。

自暴自棄状態だった。自分ではどうすることも出来なくなっていた。


現世でふとしたことで出会い、彼は私を助けてくれた。

借金を肩代わりしてくれて結婚までしてくれた。


借金を肩代わりしてもらわなければ私は自殺していたかもしれない。

それほどまでに追い詰められていた。





現世で半分のリンゴがたわわに実る夢を見たことがある。数年前に見た夢だ。


かじると酸っぱい、未成熟のリンゴは半分で完成するしかなかったかのように沢山実っている。全部のリンゴが半分なのである。


それから、花嫁衣裳を来た私に新郎が居ない夢を見た。これも数年前だ。


何故そんな不思議な夢を見たのか合点がいく日がいつも不意にやってくる。


私の魂の半身である運命の彼を前世のもっと前の世で私が殺していた。


彼の出来心を許せず、他の女とまぐわったことにカッとなって彼を殺してしまったのである。


人間の罪は清算・解消しない限り来世に持ち越すようになっている。宇宙の仕組みだ。


処刑されたこと、自分の半身である運命の彼を殺してしまったこと等、前世の記憶はなかった。


ある日、点と点が繋がるかのように前世を思いだしてゆく。


半分のリンゴと新郎がいない花嫁の私の夢は、運命の人を殺しているため運命の人は居ない、私には半身しかないとの夢でのお告げであると気付いた。


彼は現世でもちょくちょく出来心で浮気をした。

前世のことなど覚えていなかった私であったがカッとなって彼を叩いたりした。


私の怒り様は尋常ではなく、そして思い出したのである。

彼を嫉妬の類から前の世で殺してしまったことを。


思い出した夜、私は何度もごめんなさいと言いながら泣きじゃくった。


前世で処刑されたことも、現世の理不尽な霊的攻撃の被害も、運命の半身の相手を殺してしまった私の罪により引き起こされたことを確信した。


彼のことは本当に愛していたのに衝動的な殺意だけで殺してしまったのだ。


彼は前世で自身を殺した私を覚えてはいない。

ただただ前世でも現世でもこよなく私を可愛がっていた。


彼の深い愛は、私の魂が感じる。


彼は有能でありながら殆ど邪気がなく、とても優しい人。

あたたかい波動を持った人。


私があなたを殺したこと知っていたらあなたは私を愛した??


不意に脳裏に浮かぶが私は言葉を咬み殺す。


そして現世で数度の彼の浮気を乗り越え、やっと結婚に至った。

ちなみに彼は結婚してから浮気をしていない。


前世の罪を清算し、私達は最高の幸せを手にした。


彼も私も数度の世で複雑な生命を学んだのだ。

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